「信頼が愛に変わる、その時間差」君と歩く世界 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
信頼が愛に変わる、その時間差
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両脚を失い失意の底にあるシャチの調教師ステファニー。
劣悪な環境から息子を救い出し再出発を図ろうとするアリ。
絶望した女が素朴な男と出会い再生していく、そういうステレオタイプな物語を想像して観ると肩透かしと感じるかもしれない。
でも私はその意外な展開が面白かった。
ステファニーは事故以前に恋人と暮らしながらひとりでクラブに出掛けて男をその気にさせて楽しむなど何処か人間関係にドライなところがある。
一方、アリは幼い子どもに麻薬を運ばせるような母親の元に息子を置いておけないと考える良識はあるものの、実際息子にどう接していいのかわからず、乱暴に扱ってしまうこともある。女性関係もその場限りのものばかり。
そういう少々問題を抱えた二人が出会ったのだ。
ステファニーは世話を焼きすぎず、かといって突き放す訳でもなく、“対応可能”な男としてのアリの存在に安らぎを感じ、彼を信頼し、一対一の関係を望み始めるが、彼はまだ彼女の思いについて行くことが出来ない。
二人の信頼から愛情への変化には時間差があるのだ。
この時間差を強調するのが、南仏の眩い光の景色からフランス北部の雪景色への場面転換だったと思う。
前半の主人公がステファニーだとしたら、後半の主人公はアリ。
二人はお互いの存在によって、一歩を踏み出し、強さを獲得していく。
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