小さいおうちのレビュー・感想・評価
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赤い屋根の下の秘めた罪
ようやく観に行けた!
本当は公開始まった頃に観に行こうと思っていたのだが、地元の映画館では上映の予定は無く隣町の映画館まで行かねばならない為、なかなかお金と時間の都合がつかず。都合ついたと思ったら2度に渡る大雪で断念。もうレンタルまで待つかなと思い始めた矢先飛び込んできた、黒木華のベルリン映画祭女優賞受賞のニュース! やはりこれは劇場で観なければ!…という思いが強くなりこの度、お金も時間も都合がつき、天気も良好、ようやく観に行った訳である。
(どうでもいい前置きが長くなってしまったが、ここから感想です)
山田洋次82作目となる監督最新作。
僕は元々山田洋次作品のファンなので、どの作品もいつも満足しているが、ここ最近は「おとうと」「東京家族」とリメイクが続き、勿論良作ではあるが、新鮮味を感じられなかった。
しかし今作は、初とも言える本格的なラブストーリー。これまでも恋愛要素は多々描かれてきたが、清い夫婦愛や男女愛ではなく、ズバリ、不倫。描き方も強調したりせず、細やかな描写で想いを感じさせる抑えた手腕に好感。
過去と現在が交錯し、女中タキが書き綴ったノートから秘密が紐解かれる展開はミステリー的でもあり、過去に「砂の器」などの脚本も手掛けた“ミステリー派”としての腕も奮っている。
「母べえ」のように直接的な描写を避けて戦争を訴え、十八番の家族の物語でもある。
当時を知る人には昭和の雰囲気が蘇り、所々のユーモアの挿入も絶妙。山田洋次近年最良・最上の出来。
新顔から再タッグ、常連が揃ったキャストは充実。
何と言っても、黒木華! その素朴な魅力は、田舎から出てきて奉公先の若奥様に憧れる役柄にぴったり。一歩引いた立場ではあるが、彼女の存在が物語に大きな意味を占めている。
松たか子は滲む美しさと色気、昭和の香り漂う見事な佇まい。現在日本映画屈指の演技派女優。勝手に日本のケイト・ブランシェットと呼ばせて頂きます(笑)
「母べえ」以来となる常連中の常連、倍賞千恵子の好演も忘れ難い。
豪華キャストのアンサンブル、“小さいおうち”のモダンな装飾、久石譲の音楽に酔いしれる。
晩年のタキが書き始めた自叙伝。
本当はこれは告白でもあり、誰かに伝え、赦しを貰いたかったのではないか。
ずっと胸に秘めた秘密。即ち、罪。
幾ら小さくとも、永く秘め続ければ、重く苦しくなる。
そしてその物語は、胸を打つ。
うぅ〜ん…。
(印象では、単純とつけましたが)黒木さんが、ベルリン国際映画祭で、賞を取ったとの事なので、どんな作品なのか、鑑賞しましたが、タキは、結婚していない事になっているのに、御子息がいる(こんな事を感じるのは、私だけかな…)って言うのは、どう考えても納得できないですね。(未婚で子供を出産されたんだなと私なりに解釈しますが、それでも、そこの処を、もう少し映像化して欲しかったです。原作が、そうだからと言ってしまえば、それまでですが…)それと、賞を受賞された、黒木さんには、失礼ですが、私には、エンドロールの中で電柱の広告の所にドイツの文字が、出てきたので、それで出演者の誰でもいいから賞を授与したと、思わざろうをえないぐらいでしたけど…。(演技力で言ったら、松さんの方が全然良かったですけど…)
大きい苦しみ。
ついに、山田洋次も不倫作品を描くようになったのか~?と
変な邪推をしそうになったけど、私的に従来の山田節だった。
直木賞作品である原作も(もちろん読んでないんだけど^^;)、
肝心のところ(手紙の云々)は、読者の想像に任せているらしい。
小さいおうちで起きた小さい事件が、大きい戦争にのみ込まれ、
生き延びた女中が晩年に遺した手記によって紐解かれていく…
回想でタキが東京で女中奉公をする行までは非常に面白い。
時代性もあってか、のんびりほんわかと気持ちが温かくなる。
タキがタイトルの小さいおうち(平井家)に奉公に就き、今まで
味わったことのないような生活と、自身が親身に可愛がられる
という二大幸福を手にしたことで、彼女の人生が変わっていく。
その前年に奉公先の小説家に言われた「気の利く女中になれ」
という言葉を訓示として胸に秘めているタキは、自分を信頼して
仕事を任せてくれる平井家の人々に尽くし続けるのだったが…。
あぁこのまま奥様が不倫などせず、戦争も起こらず、だったなら
タキにはどれだけ幸せな日々が続いただろうか。
そんな風に思ってしまうほど、タキの記憶の中の平井家は楽しい。
その後タキは何を決意して、生涯守り続けたのか。
前述した「肝心なところ」というのは、出征前に板倉に逢おうと
する奥様に対し、タキが手紙を書くことを勧め、それを預かって
タキが渡しに行ったものの、ついに板倉と奥様は逢えなかった…
という話なのだが、実はその原因を作ったのはタキで、手紙を
渡さなかった。というのが事の真相。ではタキは、どうして奥様の
手紙を渡さなかったのか。原作でも映画でも暈されているという、
様々な解釈ができる構成になっているのが今作の面白いところ。
因みに私の解釈は、タキはあくまで女中としての役割に徹した、
ということだろうと思った。愛する奥様の心中を察すれば、最後に
逢わせてやりたい、だけど逢わせるわけにはいかない、なぜなら
平井家の安泰をタキは守らなければならなかったから。不本意な
選択とは、人間としてひとりの女として、愛する人の為にどうする
のが良いか分かっていても、それが許されずできなかったことへの
後悔を遂に償うこともできず、ここまで生き長らえてしまったことに
哀しみを滾らせている晩年のタキの姿だったのだ、と思う。
気の利く行動をとったつもりでも(私もああするしかないと思うけど)
その後の奥様の運命を思うと…自分の行動があれで正しかったか?
と、タキは悔やんでも悔やみきれなかったと思う。
大好きな(敬愛する)奥様の想いも、板倉から頼まれた奥様のことも
結局守ってあげられなかったわけだから。だけど、
その後、探し当てた坊っちゃまの言葉に救われる。全くその通り。
タキがそのことで苦しむことなんて、なかったのだ。
平井家での出来事、実際は夫も子供も気付いていたかもしれない。
(あれだけ大っぴらに行動してればねぇ)
防空壕での姿を聞いた時、息子を疎開させ、夫婦であのおうちに
暮らしていたことが分かって少しホッとした。悲しい結末だけど。
(しかしホント申し訳ないけど、吉岡くんは愛人面じゃないのよねぇ)
黒木華さんとても良かったー!
中島京子原作は既読でした。
イメージしていた通りの映画でそしてタキさんでした。エンディング奥様と一緒に2階窓から外を見下ろすシーンで黒木華さんの清潔な佇まいに新たにこみ上げるものがあります。年老いて死ぬまでタキは小さな秘密を守り通しました。松たかこさんも上品で美しく奥様のイメージにぴったりで妻 母親 奥様 女性の顔を見事に演じています。
昭和を知ってる人には特にオススメの映画です。
もちろん平成生まれの方々にも 笑
それにしても黒木華さんってこれからもいろいろな役を演じて欲しいステキな女優だと思います。黒木さんはまほろ駅前多田便利軒の役から大いに化けましたね。
私の好きなタイプの女優です。
劇場での年配の方々のマナーがもう少しいいと更に良かったですね。
小さな秘密
タキさん(倍賞千恵子さん)が悔恨の涙を落とすしながら数ヵ月後亡くなった。昭和初期、女中として住み込みで働いた平井家で過ごした穏やかで平凡だだが和やかな日々。そのんな赤い屋根のモダンでノスタルジックな“小さいおうち”は、若き日のタキちゃん(黒木華)にとっては、自分の家族そのものであったと想いました。そこで観てしまった恋愛事件。映画はタキさんが亡くなった後の現在から始まり、彼女が書き遺した自叙伝をタキさんの孫健史君(妻夫木聡)が読む小過去と、その自叙伝の時間である大過去を行き来しながら始っているミステリーと聞いていたので事件性があるものだと想ってた確かに事件は事件だがタキちゃんが愛する平井家を守りたかった小さな嘘を秘密で守りたかった物語りの様な気がしました可愛らしいと言う言葉は合わないと想いましたが私はタキちゃんが可愛らしいと感じました貴女の嘘は小さな秘密を守ったと想います♪
パッと見ただけではわからなくて、面白くないけど、後からグイグイくるいい映画です。
原作は読んでいないし、なんとなく面白くなさそうとは思っていたけど、山田監督の映画なのでハズレはないだろうと思い見にいきました。
地元のシネコンで、平日の夕方だったけれど、観客は、私を入れて二人。
公開した初めの週なのに、これは酷い。
正直、かなり不安でした。
本編が始まり、最後まで見たけれども、あまりパッとしない印象で、ある程度予想どおりの展開、何が言いたいのかわからなかったし、セットもチープで、キャストもいまいち、これはハズしたと思いました。
でも、その後レビュー書こうと思っていろいろ考えていたら、急に面白くなってきた。
この映画は、他の登場人物等はあまり関係がなくて、映画全体でタキさんの気持ちを表現しているような気がする。
タキさんは、山形の実家の家計を助けるため、東京に奉公に出てきた。
最初は違うところで、いろいろ苦労したと思うけれど、次にこの小さいおうちにきた。
この小さいおうちは、タキさんにとっては理想の場所だったのだろう。
もしかしたら、子供のおままごとの道具のようなものだったのかもしれない。
この家の人たちはみんな好きだけれども、特に奥さんが大好きで、理想の人。
恋愛感情に近いものを持っていたと思う。
後から登場してくる、旦那さんの会社の板倉さんも好きだけれども、奥さんの方が好き。
その二人の不倫を知った時、タキさんはものすごく複雑な気持ちだったのだろうと思う。
自分の理想の家族が壊れてしまう不安だったり、奥さんや板倉さんに対する複雑な嫉妬的感情、知ってしまったことを旦那さんに黙っている申し訳なさ・・・。
これらの感情が爆発して、最後にああなってしまったのだろうと思った。
結局、それほど大事にしていた小さいおうちを、戦局の悪化で、出ざるをえなくなり、山形の実家に帰ることになる。
その後、小さいおうちは米軍の無差別爆撃で崩壊、消滅。
板倉さんも戦争で招集された後、どうなったかわからなくなる。
こんなことになるのだったら、あんなことをしなければよかった、本当に申し訳なかったという思いを、戦後、誰にも言えず、ずっと抱えて生きてきたのだろうと思った。
この映画は、タキさんを中心とした世界なのだとすると、パッとしない印象も、ある程度予想どおりの展開も、チープなセットも、いまいちなキャストも納得です。
あたりまえだけど、山田監督の演出が素晴らしかったです。
後から思い出すと、グイグイきます。
これは監督からの観客へのちいさなプレゼントかな?
この作品を観た印象を一言で表すならば、1番に浮かぶ言葉それは、「東京家族」の続編。
山田監督の前作は、言わずと知れた小津安二郎監督へのオマージュとして製作された「東京家族」。
あの作品は舞台を現代に移してはいるものの、セリフ等も同じシーンもあり、前半かなりの部分では、小津監督の「東京物語」をそのままリメイクした様な香が漂っていたと思う。
この「小さいおうち」の舞台は、現在であっても、やはり回想シーンで描かれている物語の大部分は戦前が中心となる。
そして「東京物語」がそうであった様に、ある一つの家族の生活風景を描く中で、その時代を精一杯に生きた人々のマインドや、時代の空気を自然に焙り出していく。
そんな手法で物語を描いていく点で、この「小さいおうち」が描いている時代は、戦前なので正に、「東京家族」の前篇と言った感じなのかも知れない。
妻夫木聡演じる甥っ子の健史が、タキの自叙伝の執筆に、色々とチャチャを入れるシーンが多い。
その健史のそのセリフが、戦後教育を受けた現在の日本人の価値観と常識を表し、戦前に実際にその時代を生きて来た人々とのジェネレーションギャップと言うものを、健史の話すあのセリフで表現しようと、山田監督は試みていたのだろうか?
何とも、あの妻夫木のセリフが、いちいち説教臭くて、それまでの回想シーンの柔らかな物語の風情が途端に途切れてしまう事が、度々あってイライラがあり、私には正直邪魔で欲求不満が募りました。
そして、ラストの海岸のシーンも、無い方が良かったと思ったな。年老いた平井恭一が今更母親の過去を知りたくなかったと言うのと同様に、健史とその彼女らは、板倉が実は戦後無事帰還し、あの白い小さなおうちの思い出を作品に残して描いていたと言う処に留めておいても良かったのではあるまいか?
私は、原作未読なのでその辺りが元々どう描かれていたのかは不明です。
それにしても、同じ戦前を生き、姉妹でありながら全く正反対のキャラクターで有った時子と貞子と言う人間の生き方がとても面白いではないか!
平井時子は、一見おっとりのんびりで、世間の常識には決して左右されはしないが、天然ボケキャラの様でいて、その実、戦前の裕福な家庭の貞節な主婦である筈の時子の立場では絶対に、有り得ないような不倫と言う大胆な行動をする。
こう言う理屈抜きの人間の二面性こそ面白い。世間体を第一番に気にしていた、教育ママの貞子が呆気なく、国防婦人の権化の鏡の様に変貌を遂げるのも、可笑しくて、妙に腑に落ちるシーンでもあった。
それにしても、寅さんでは、妹さくらを演じ続けて来た倍賞千恵子も、本当におばあちゃんの役がぴったりのお歳になられて、時の流れの速さを実感させられた。
だが、それにしても倍賞さんは、本当に本物の映画スターですね。幾つになっても華が有り、「すべては君に逢えたから」でもそうだが、彼女がスクリーンに登場すると画面の空気がガラリと変わって、締まる。それでいて前回のパティシィエでもそうだけれど、本当にその演じている人物の人生を生きて来たように感じさせるのだから、映画スターとは本当にどえらい職人ですね!
まるで絵本の世界のように
『小さいおうち』の風景が、まるで絵本の挿し絵の一部のようでした。
ドロドロしてるはずなのに、時子のたまに見せる表情に可愛らしさや笑いを誘う場面もあって、サラッと流されてしまった感じです(^_^;)
反対にタキの苦悩や思いは静かながら重く、自叙伝と称して綴られるストーリーとは対照的でした。
松たか子…すごいなって思っちゃいましたね!
あと、妻夫木聡が…すっごく凡人っぽくて(^_^;)…うけました♪♪
さすが山田監督
素晴らしい
特に黒木華が輝いた作品ですね
事後ストーリーもちゃんと描いてくれてるとこも良かったねです
観終わった時は小さいお家爆破のシーン、なんで花火バレバレなん?と思いましたが、昭和レトロの怪獣特撮物の雰囲気を演出したかったのでしょうね!
すごく上質な緑茶の香りのような作品
やっぱり、うまい、、
そのひとことです。
劇場はほぼ満席で、終わった後も
みなさま 余韻にひたっていらっしゃるようでした。
個人的には 吉岡さんが見たくて行ったのだけれど、
タイトルからは想像できないほど、充実した作品でした。
ただ、ちょっと気になったのは、
旦那様に感情移入してしまうお客さまもいるのでは、、
と、いうことと、やはり大人向けかとは思いました。
こんな日本もあった ということも含めて、
是非、劇場で見るのをおすすめします!!
これぞ邦画だ
前作の「東京家族」を昨年観て、期待値が上がっている中での鑑賞となった。結論から言うと、期待していた以上に良かった♪
久々に、号泣してしまった・・・。
山田洋次監督作品の中でも、相当上位のデキなのではないだろうか。
因に、
山田洋次監督作品は、馬鹿丸出し、寅さんシリーズ(数本)や幸せの黄色いハンカチ、学校等を観てきた程度だが。
誤解を恐れずに書くが。
本作内での、不穏な空気がどことなく漂い始めている世情の昭和部分が、どこかリアルな現在日本とリンクするかのような印象を映画から受けた。(ちょっと考え過ぎかもしれないが。)
その対比があるからこそ、
物語の最後、海辺で晩年の恭一と健史とユキが、話ながら散歩するシーンからは、平和の意味を考えさせられ、他方で、今は、ある意味で幸せな時代だ、と感じるシーンでもあった。波の音も心地良い。
殆どが印象的なシーンや演出なのだが、
晩年のタキが自叙伝を書きながら、泣いているシーンとそのナレーションには、心底心を打たれたし、映画のラストに再度流れるその姿が目に焼き付いて離れない。
また、とあるセリフに心を打たれる。
また、
若き日のタキが平井に奥様の手紙を持ってゆくまでのシーンも素晴らしかったなと。画面が不安気に揺れ、これから起こる事を暗示しているかのようで・・・。
これだけの豪華メンバーで映画が取れるのは、山田洋次監督作品ならではこそだなと。
これぞ邦画だ。
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