小さいおうちのレビュー・感想・評価
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変なストーリーを成立させる山田洋次は恐るべき力技のアンチェインです
戦時中の不倫願望のマダムの話で、漱石の小説を昼メロか韓流に下品に味付けしたようなはしたない映画です。
でも、松たか子と黒木華を使いながら芸術性が有るかのようにペテンにかける山田洋次は凄い、これでも褒めているので。
ハリウッド流に対する宣戦布告
登場人物はごく少数、美術にもコストは掛かっていない……のですが、なんとなんと少数精鋭の俳優たちの上手いこと上手いこと。
これって、ハリウッド流に対する反骨っていうか、「CG使えばなんだって大作にできちゃうぜウヒヒヒ精神」の対極を行く、本物の映画人による、本物のドラマ、本物の演技の力を心地よく堪能できる映画でした。
ハリウッド流では、エンドロールに出てくる映像って、NG集だったりしますよね。
でもこちらは、エンドロールに出てくる映像こそ、珠玉のように大切で、力を入れて撮影した、まさにストーリーの肝となる、しかも未見のシーンばかりなんですよ。
これを見て、私は確信したわけです。
これは山田監督による、ハリウッド流に対する宣戦布告なんだな、とね。
黒木華さんがエンドロールで初めて2階に登った時の、視線の配り方。
もう、それだけでメッセージが観る側に伝わってくるのです。
これぞ映像の力!
ほんとうにていねいな作りの、素晴らしい作品でした。
小さい秘密に隠された女性の本心
東京のある中流階級の女中の目を通して描かれた、太平洋戦争前の市井の生活。穏やかで幸せな時代と回想する大叔母タキに対して、戦後教育そのままに否定する健史とのやり取りが物語を進める。そこで浮かび上がる奉公先の時子夫人と板倉の不倫劇。山田監督らしからぬ題材をどう描写するか興味深く観ることが出来た。
タキと時子の関係は、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」の女性編になるのか、貧しい生まれから都会生活の安らぎに変わり、若く美しい時子に憧憬と好意を強く抱くタキのたった一度の裏切り。映画としては、些細な出来事だが、一生時子に仕えたいと言っていたタキにとっては許しがたい後悔の念に駆られる。その後独身を通して時子への愛を貫いたと視れば、彼女の純真さが想像できる。
ただ、タキと時子と板倉の三角関係は、曖昧なままで説明不足。時子の幸せを常に願うタキが板倉に対してどう思っていたのかの描写が抜け落ちている。そのためラストの板倉の絵、息子恭一の登場という映画的なクライマックスが最良の効果を生んでいない。
演技面では、主演の松たか子と黒木華が素晴らしい。女盛りの欲望に抗えない時子の感情の行方を丁寧に演じる松たか子に、女中の仕事に献身的に尽くす一途さを体現する黒木華の演技力。このふたりの評価で、この映画の良さの殆どを占める。残念なのは、板倉にキャスティングされた吉岡秀隆の俳優の色が全く合っていないことだ。徴兵検査で丙種合格の後ろめたさを彼なりに演じているものの、松たか子との不貞の相手の危うさのイメージは持ち合わせていない。健史役の妻夫木聡は、「永遠のゼロ」の三浦春馬と同じくステレオタイプの好青年の特徴のない人物像で何の個性も感じられない。脚本の問題だが、教科書通りの歴史観を述べるだけでは教養がない。実際に経験した人間の証言に対しての想像力が欠落した青年で片付けられる。その他男優にも特筆すべき演技がなく、女優優位の作品である。
戦前の幸せな時代を生きた一人の女性の生涯を描く作品の意図は、賠償千恵子が晩年のタキを演じたことで理解できる。戦争がなければタキの一生も全く違うものになっていただろうということに、山田監督の創作意欲が刺激されたのだと想像する。
松たか子と黒木華の演技力が光る!
月並みな言葉ですが
負ではない遺産。
はっきりはわからないくらいの心の動きに感動
【昭和初期を舞台にした気品溢れる作品。】
原作に忠実に再現してほしかったなーと思います。 あのストーリーだと...
昭和初期あたりの暗さと明るさと
いつの間にか戦争になっていた。
バートンさんの絵本『ちいさなおうち』のように、周りの環境に翻弄された一家の物語。ーとはいえ、バートンさんの絵本があまりにも唐突に出てくるので面食らうがー
タキが引き裂いた恋。
もし戦争がなかったら?もっと他の展開もあり得たかもしれない。
自立しているようで、夫に縋らなければ生きていけなかった時子。
箱庭のような家の中で展開する物語。シルバニアファミリー・リカちゃんハウス等の中で繰り出されるおままごとみたいな話。
やり直しの利かぬ行為。時子への想い。板倉への想い。平井家への想い。自分にとっての大切な居場所への想い。
戦後の我々からすると納得できないが、実際は小市民の感覚ってあんな感じなんだろう。対岸の火事、戦争回避できるだろうと思っていたら、いつのまにか悲惨な状況になっていた。
その対比が面白い。
今の日本と似ている気がする。経済発展だけ願っていればいいのか?
役者の力がすごく見せてくれる。
黒木さんがベルリンで賞をお取りになったけど、
松さん、吉岡さんもすごい。あんな声していらしたっけ?二人とも、いつもの声よりトーンが高いような気がする。言葉の言い回し、抑揚が違う。役柄に合わせて、声の高さやリズム・言い方まで変えて演じている。
片岡さんもいい。人のいい人情家なんだけど、実利だけを重んじている、情愛とか女心を全く理解できない男をさらっと演じている。たきちゃんの婿選びのセンスに笑った。そりゃあお嬢様が抜けない奥様が、別に目を向けてしまうのわかる。自分の感性に一生懸命耳を傾けてくれて、同じ感性から出てくる言葉を言ってくれる人が側にいてくれるだけで、どれだけ人生が輝きだすか。
そして、松さん、片岡さんをはじめとして、全ての方の所作が綺麗。それをみているだけでもうっとりしてくる。
たきちゃんの秘密。あの手紙、そしてベッドの上に掲げられていた絵の謎。
レビューでも、いろいろ憶測が流れており、私もいろいろと想像はするが、
自分にとっての大切な居場所を守ろうとする必死な気持ちは痛いほどわかる。
「奥様の為」「坊ちゃまの為」…滅私奉公の時代「自分の為」という意識はあったのかな?勿論、年を重ねれば、なによりも「自分の為」であったことは自覚してくるが。
原作未読。映画化するにあたって重要なプロットを削っているときく。だから?な部分が残る。
そもそも宣伝に使われていた”秘密”は鑑賞者にとっては”秘密”ではなく、この映画を鑑賞することでさらに何かもっと大きな”秘密”があるんじゃないかなんて思ってしまう。
消化不全。
砂糖菓子みたいな生活を見るのはよかったけれど、構成を練り直してほしい。
日本映画の傑作
アカデミー賞繋がり
どうしても地味そうで見る気がしなかった今作。今年のアカデミー賞ノミネート作品達にもやもやとした疑問をもったせいで過去のノミネート作品を見る羽目になった。
松たか子と黒木華の素晴らしい芝居と戦前のほのぼのとした雰囲気。
映画自体は素晴らしいと思いますが、どうしても気になる事があって仕方がないです。
他の方のレビューにもありましたが、タキばあちゃんの部屋に飾ってある赤い屋根の絵は何を訴えたいのか、何度も巻もどし作風を確認してイタクラの作品なのはわかったよ。
にもかかわらず、その絵がどうしてタキのもとに、大事そうに寝室にかけてあるのか、そこの伏線放り出して自分で考えろって想像の余地を残す親切なふりをした手抜きなんじゃありませんか?
見事に一切ふれないもんね、最初から。
遺品整理で捨てちゃうし。
あとで巨匠の作品と気づいて驚くくだりがあるかと思えばなんもないし。
タキが戦後に会ってもらったくだりがあるかと思えばそれもなし。なんにもなしで想像しろってこと?
なんの意味のないただの絵ですよ、はないよね。
ばあちゃん号泣の大事なシーンでアップにしたりして、さんざん目をひきつけといてさ、回収無しの放置プレイ。
誰か原作読んでる方、あの赤い絵の意味教えてください。
わからないからこの映画に点つけられません。
あの絵の意味を回収してくれ
オープ二ングの遺品整理であっけなく捨てられるタキの部屋に飾ってあった赤いお家の絵。
大事に寝室に飾っていたあの赤いお家の絵。
あれが板倉の絵でないはずがない。
板倉の絵を持っているタキは2人が戦後あっていた証ではないのか?
いつになったらその話が出てくるのか?
その伏線の回収を待ちにまったが、最後まで一切触れないとはどう言う事か?全て観客の想像力に任せるとは、なんという大胆不適な終わりだろうか。
生涯独身を貫いたタキと板倉。
もしタキがあの手紙を板倉に渡していれば、奥様への罪悪感を持たず、戦後に板倉と心置きなく結ばれていただろうに、渡さなかったが為の罪悪感から結婚して結ばれる事をあきらたのだろうか。
第一にタキばあちゃんの孫がいるって事は子供がいるわけで、それも板倉の子であろうか?伏線の回収がない為に全てもやもやするではないか。誰の子なんだ。
最後のタキの涙からの板倉の絵のアップに対して私はそういう結論を持ってこの映画を見たが、他の方のだす結論が気になってしまう。
せめて伏線の回収はしておいてくれないと、こうしてもやもやするのでやめて欲しいものだ。
このもやもやをなんとかしたいのでとりあえず原作を読んで事実を知ろうと思う。
せめて原作までが伏線回収無しのもやもや終わりじゃない事を願う。
原作のレビューをみて想像する限り、タキの部屋に赤いお家の絵は無さそうだ。
もしかしてだが、映像的になんとなく絵を掛けただけじゃないだろうな。映像的に赤いお家の絵があった方がしまるよね、とか意味なく絵を掛けたから伏線回収がない訳じゃないよな、、、
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