「昭和な感じ。」小さいおうち mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
昭和な感じ。
ひょっとすると、山田洋次という映画作家は、脚色において本領を発揮する人なのかもしれない。彼の作品群のなかで異彩をはなっていると思っている時代劇の3部作は藤沢周平の原作。本作も中島京子の原作である。
タキちゃん(黒木華)が奉公することになった赤い瓦屋根の小さいおうちは、おもちゃ会社の専務平井の家であった。旦那さま(片岡孝太郎)の会社のデザイナー板倉(吉岡秀隆)が平井家に現れてから、時子奥様(松たか子)は浮き立つようになる。
戦時という背景と、松、片岡というノーブルなキャストがあいまって、雰囲気のある映像に仕上がった。
出征する板倉に会いに行こうとした時子を止めるタキちゃんの苦悩は、わかりやすい語りがあるものの、庭先から玄関に移動するタキちゃんをワンカットでとらえた演出によく表われていた。
現代劇を撮るのはもうつらいかなと思っていた山田洋次だが、時代を限定するとまだまだいけそうである。
「東京家族」のキャストが勢ぞろいで、吉岡秀隆と中嶋朋子が同じ作品に出るのはあれ以来のはずで、次回作ではこのふたりのからみも観てみたい。
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