「山田洋次版「家政婦は見た」」小さいおうち ヴァルさんの映画レビュー(感想・評価)
山田洋次版「家政婦は見た」
戦争直前、そして戦時中と言った激動の時代を舞台にした作品なのに、描かれていたのは一つの家庭の物凄く淡々とした出来事でしたので、普通ならちょっと退屈してもおかしくない内容だったと思うのですが、それをここまで退屈せずしかも物凄く感情移入出来る作品に仕上げてしまうとは・・・いやはや恐れ入りました。
それにしても、妻夫木聡が演じた健史じゃないですが、戦時中ってもっと暗々とした暮らしをしていたのかと思っていましたが、全部が全部そう言う訳ではなく、楽しいことも一杯あったり、戦争よりも身近な問題の方がもっと切実だったり、まあ時代が許さなかったことも多々あったようですが、基本的には「生きる」ことって今と同じだったんですね。
勿論この映画で描かれた平井家は間違いなくこの時代では富裕層に位置する家族だったと思うので、一般的ではなかったと思いますが、それを嫌味なく描いた山田監督はさすがの一言としか言い様がないですね。
ちなみに予告編で気になっていた奥様ご乱心のシーンでは、ここでも健史同様に三角関係?なんて貧しい発想に至りそうになりましたが、細かい伏線を考えればなるほどタキちゃんには「強いある想い」があったのかなんて読み取れたり、現代のタキばあちゃんの涙の意味も含めて、まあとにかく見終わって物凄くいい余韻が残る映画だったなと、満足感で一杯になりました。
まあでも私がこの映画を良かったと思えた最大の要因は、何と言ってもタキを演じた黒木華の存在感に他ならないですね。
松たか子が演じた時子の凛とした品のある美しさも勿論印象深かったですが、黒木華の田舎臭さと献身さ、これぞザ・昭和の愛すべき女な感じで、思いっきりツボに嵌ってしまいました!