「あの「言葉」。」小さいおうち SALTYさんの映画レビュー(感想・評価)
あの「言葉」。
山田監督の「東京家族」に引き続きの作品。
先日、この映画の公開にからめて「東京家族」がTVにて放送されており、改めての感動を頂いたため期待を込めて映画館に足を運びました。
戦争への足音が大きくなる昭和初期の物語であります。
私自身、戦争を知らない世代であり主人公である「タキ」の親類である「健史」同様に教科書的な史実に基ずく時代しか見えてきません。(もちろんその当時をモチーフにした「映像」や「書籍」視点での知識はありますが)
この映画は題名にあるように「小さないえ」に住む家族を中心に物語は進んでいきます。
全体的に、小津映画的にトーンを抑え気味な印象をうけました。それでも「主人公」の悲しみが伝わってきます。
現在(平成)の「タキ」がテーブルに突っ伏して吐くあの言葉・・・彼女の人生の集約なのでしょうか?
実は私自身は、イマイチこの物語に引き込まれませんでした。
構成上?あまりにも沢山の登場人物とそれぞれの思惑が交差し、フォーカスすべきモノと観客側の身の置き所の居心地の悪さが原因のような気がしました。特に女中としての「タキ」の心情をもっと丁寧に深く描いていれば・・・。感情移入ができたのではとも思いました。
ネタばれになりたくないので、深くは書きませんが直接的な表現で「タキ」の心情を慮るのは先ほど記したあの言葉だけだったような気がします。
きっと監督的には、あえてそこはそうしました。という事なのかわかりませんが、個人的には消化不良でした。
前作の「東京家族」のように「言葉」や「しぐさ」でグッとくる作品もあれば、この作品のようにより抑え気味なトーンの作品もあるという事でしょうかね。
また、私自身がこの作品にイマイチ引き込まれなかったのは、戦争への足音が聞こえるこの時期で中心となる「小さないえ」の家族や取り巻く人々がある意味その時期の「富裕層」であり、庶民の生活からは一段上の生活を送っている人たちであり、この時代を描く作品としては稀であったように思いました。やはり庶民感覚ではないので「よくある庶民」(例えばNHK「ごちそうさま」的な?)のギャップも大きなファクターであったとも思いました。きっと私自身がこの時代を描くならこうでなくっちゃみたいな固まった意識があるんでしょうね。
俳優陣は正に現代の「山田組」オールスターで、演技は楽しめましたよ。
個人的には、木村文乃さんをもっと見たかったのですが、さすがは黒木華さん♪本当に良かったです。このキャスティングは大当たりです。
正にそこに「タキ」を見ました。