「悪魔を憐れむ歌」嘆きのピエタ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
悪魔を憐れむ歌
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負債者を障害者にしてその保険金で借金を返済させる非道な取り立て屋のガンド。天涯孤独に生きてきた彼の前に、突然母親と名乗る女性が現れ…。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝くキム・キドク監督作。
当然信じられず、邪険に振る舞うガンド。
が、母親という女性は赦しを乞い、献身的に世話をする。
初めて知った母の温もり。次第に心を開き始める…。
年甲斐もなく母親に甘えたり、二人でデートしたり…。
負債者から悪魔と恐れられている男の童心のような一面。
序盤の取り立てシーンは胸糞悪いにせよ、“母の慈愛”をテーマに、あのキム・キドクが優しい映画を…?
いやいや、やはりパンチの効いた鬱映画だった。
中盤辺りで、ひょっとしてこういう展開じゃないかな、と少し察しがついた。
母が息子の取り立て先を記してあるノートを見て涙したり、息子の○○を激しく拒絶するように洗い流したり、何より息子の前で微笑みを見せた事が無い。
これは壮絶な復讐劇。
愛を与えて与えて、正体も明かさず、その愛を目の前で絶ち切る。
…その筈が、悪魔へ芽生えていた憐れみと慈愛。
悪魔も愛を欲していたのだ。
最後に知った衝撃の事実。
それでも母親の愛を欲す。
愛を知り、失った悪魔はもう…
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