「新たな作品の一作目なのに続編ありきな構成に呆れました。」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
新たな作品の一作目なのに続編ありきな構成に呆れました。
2014年9月下旬にMOVIX昭島のスクリーン6にてレイトショーの2D上映で鑑賞。
アンディ・ランニングとダン・アブネットが生み出した同名のコミックを『スリザー』のジェームズ・ガン監督が実写化し、“マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース(MCU)”の第十弾にして、“フェーズ2”の第四弾でありながら、この段階での初のオリジナルな作品となった異色な一作が本作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』です。
幼い頃にヨンドゥ(マイケル・ルーカー)の宇宙船に吸い込まれ、地球外の惑星で育ち、銀河系でトレジャー・ハンターとして成長したピーター(クリス・プラット)は、ある日、手に入れた“オーブ”というアイテムを質屋に持っていった直後に、買い取りを断られ、そのオーブを狙う緑色の肌を持った女性暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)や遺伝子改造されたアライグマの姿をしたロケット(ブラッドリー・クーパー)と樹木の姿のグルート(ヴィン・ディーゼル)に襲われ、それによって、彼らは皆、その地の警察に逮捕され、刑務所へと送られてしまう(あらすじ、以上)。
鑑賞前の期待度は高い方でした。MCUとしての前作『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』がシリーズを持ち直し、本作は今までに映像化された事の無い作品にして、このシリーズが宇宙へと拡がりを見せるだけでなく、『マイティ・ソー ダーク・ワールド』のラストに登場したコレクター(ベニチオ・デル=トロ)、『アヴェンジャーズ』に出てきたサノス(ジョシュ・ブローリン)が本格的に姿を見せ、ロイド・カウフマン率いるトロマ映画社で下積みをしたジェームズ・ガン監督が初めて大作に挑戦するという事もあり、注目度は大作のなかで非常に高く、予告を観て、「これは面白そう」と強く思ったので、期待しないわけにはいきませんでした。しかし、残念なことに、期待は悪い意味で大きく裏切られ、非常にガッカリする結果に終わりました。
説明しなければならない事柄が多いのに、それが殆ど行われていなかったように思います。冒頭で少年時代のピーターが母親を病気で失うところから始まりますが、彼が病院の外に飛び出して、ヨンドゥの宇宙船に吸い込まれてから、いきなり時代が20年近く経過し、そこに登場した青年のピーターはウォークマンで音楽を聴いている点を除き、少年のピーターと繋がるところが無く、少年時代に関する情報が少なく、彼の性格や物事の捉え方、トレジャー・ハンターになった経緯、ヨンドゥとの関係等が見えず、早速、置いていかれるような感じで観ていました。この作品は、今回が第一弾で、同時にMCUの新作でもあり、『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』等の第一弾で主人公に関する事を徹底的に描き、「この人は、こういう人物」というのを見せてきただけに、本作の主人公の詳細な人物像が見えないので、その行動に共感したり、感情移入する事が出来ません。他にも組織(今後に“アヴェンジャーズ”と“ガーディアンズ”が共闘するかもしれないのに、“ラヴェジャーズ”という名前の組織がメインで出てくるのは非常にややこしいです)やアイテムなどの用語や役割などが今一つ伝わらず、作品のテンポが良すぎるので、それらがうろ覚えの状態で見ることしか出来ず、「あれは何だったんだろうか?」とこんがらがる事もありました。
MCUとしては十作目の作品ですが、前述の通り、新しいキャラクターたちによる新しい話の第一弾でもあるので、その間口の自由度は広い方だと思いますが、続編を意識しているように見えるせいか、話を描かなすぎで、伏線を張るだけ張って、それが回収されず、かと思いきや、終盤で今まで何の伏線も張られていなかった真実が明らかになったりと、いい加減な構成が目立ちます。サノスがそんなに活躍しなかったのはしょうがないと思えます。これもMCU的には同時進行な話の可能性が高く、サノスが途中で姿を消すのは、ロキ(トム・ヒドルストン)と結託して、ニューヨークを侵攻していたかもしれず、サノスの真の実力などが明らかになるのは、何れ、描かれるかもしれない“アヴェンジャーズ”のメンバーが銀河系に進出してからだと思うので、ここで描く必要は無いのかもしれませんが、それでも、『ダーク・ワールド』で初登場した時は「今後に大活躍するんじゃないか」という雰囲気を漂わせていたコレクターが思わせ振りで終わったり、銀河征服を企むロナン(リー・ペイス)が悪役らしく見えなかったり、ガモーラと因縁のあるネビュラ(カレン・ギラン)がロクに活躍せずに戦いの場から逃げ出して、「決着は次回作までお預けよ」と言うような感じで、続編ありきな作りに唖然とし、普通なら、ピーターの適当な言動やロケットの口の悪さなどを心地よく感じられる筈なのに、それを一切感じなかったのは話がつまらないだけでなく、作品のやる気の無さに呆れ果てていたからかもしれません。
本作は娯楽のSFファンタジーであり、『2001年 宇宙の旅』のような科学的考証に基づいているモノとは違い、『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』等と同様に光速で動く宇宙船が登場したり、宇宙空間でドックファイトが起きるのが普通な作品で、過去に作られた、そういう系統の作品の大半が現在の場所から、次の目的地へ宇宙船で移動し、その航法や到着までの間に起きる出来事が見所の一つで、本作にもそういうのを期待していたのですが、それは見られず、「ここへ行く」と決まったら、次の瞬間には、その地へやって来ていたり、いつの間にか、敵が接近していたりと、宇宙物の醍醐味が見られないのも自分としてはマイナスなように思います(「これは21世紀の“スター・ウォーズ”だ」と評されている作品なので、そういうお決まりの描写があっても良かった筈ですが、それを望むのは贅沢すぎるでしょうか?)。
私が本作を観たスクリーンはスクリーンマスクがシネスコ型に開かず、ヴィスタ型で上下に黒い帯が残る形な上に音量が小さめで、劇場の醍醐味を味わえない形での鑑賞になり、ディズニー傘下のマーヴェル作品では奇跡とも言えるガン監督の新作を目にし、そこに監督の師匠であるロイド・カウフマンのカメオやB級映画の異才ロブ・ゾンビ監督の声の出演など、夢のような作品を最適な環境で味わえなかったというのも、本作のガッカリの要因の一つなのかもしれませんが、これでハッキリしたのは『ウィンター・ソルジャー』の遺した遺産は本作だけで食い潰され、自分が完全にMCUの今後の作品を劇場で観なくても、問題ないと認識した事です。それだけ、本作はつまらない一作と言えます。