「独りでいなくたっていいんだよ」アナと雪の女王 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
独りでいなくたっていいんだよ
3D字幕版を鑑賞。
吹替の主演をした松たか子は良い女優さん
だと思うけど、アカデミー賞主題歌賞を
獲った声で映画を観てみたかった。
* * *
総評。良い。いや、かなり良い。
たぶんどんな世代でも、笑って泣けて
暖かい気持ちになれるステキな映画でした。
(この映画に限らず)ストーリーが単純
というレビューをよく見掛けるけど、
ストーリーが凝っている=面白いとは限らないし、
個人的には手垢の付いているはずのストーリーを
これだけ新鮮かつエモーショナルに
見せられる手腕こそ素晴らしいと思う。
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まずはキャラが魅力的!
陽気で快活なアナはキュートだし、一方のエルサ
も妹の為に必死に耐える健気さに心を打たれる。
ちょっと抜けてるけど優しくて頼もしい
クリストフも良いね。
雪だるまのオラフや忠犬……じゃなかった
忠トナカイのスヴェンも可愛いくてユーモラス。
どちらも単なる笑えるキャラじゃなく、
主人公達を後押しするステキなキャラ。
特にオラフは、昔アナの為に作った雪だるま
そのままの姿形に思いがけずウルッと来た。
キャラの活き活きとした動きや表情は
楽しいし、アニメっぽくもどこかリアル。
雪山の雄大さを初めとした自然の風景も
しばしばCGであることを忘れてしまうほどに
美しくきめ細やかだ。
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そして、歌。
映画館に行く度に流れる例の長い予告編には
正直ウンザリしていたのだが(←オイ)、
それでも素晴らしくエモーショナルだった。
「雪だるま作ろう」という言葉を繰り返し、
姉妹の成長や関係が変わっていく様子を
ダイジェストで見せるシーンの切なさ、
予告編でもおなじみの、エルサがそれまで
抑え付けていた感情を爆発させるシーン
の激しさと高揚感には涙が出た。
* * *
エルサと同じような想いを抱えて
生きている人は多いんじゃないだろうか。
自分をさらけ出して相手を傷付ける事が怖い。
相手から拒絶されて自分が傷付く事も怖い。
孤独でいればその恐怖を味わうことはない。
『LIFE IN A DAY』というドキュメンタリー映画が
あるのだが、そのなかに登場した女性がこんな
主旨の事を言って涙ぐんでいたのを思い出す。
「孤独になるのが怖いから、孤独なままでいるの」
外の世界に憧れるアナと、外の世界を怖れるエルサ。
人間誰しも外の世界への不安と憧れがある訳で、
そういう意味では姉妹は合わせて1人の人格だ。
独りのままでいいと言うエルサを
アナは救い出そうとする。
長過ぎる孤独もまた耐え難いものだから。
* * *
そんな孤独を吹き飛ばす清々しいラスト!
自分が忌み嫌っている欠点は、ひょっとしたら
誰かを喜ばせる長所になるかもしれない。
決まりきった良い/悪いの概念に囚われず、
自分なりに人を笑顔にする方法を探せば良い。
ありのままのあなたを愛してくれる人が
きっとどこかにいる。
この映画はそう勇気付けてくれている気がする。
* * *
ストーリー展開がスムーズ過ぎてやや
薄味に感じる部分も無くはないけれど、
最新技術を使いこなし、
キャラを魅力的に描き、
エンタメとしても楽しませつつ、
どんな時代にも通用するテーマで
観た人の心を動かす……
これらを全部成功させるのってスゴいこと
だと思う。改めて、ディズニー映画恐るべし。
<2014.03.21鑑賞>
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余談:
今年のアカデミー賞で『風立ちぬ』を押さえて
長編アニメーション賞を受賞した本作。
個人的な意見を言うと、
『風立ちぬ』の方が物語に深みはあると
思うけれど、大人から子どもまで楽しめ、
感動できるという点では『アナと雪の女王』
に軍配が上がると思う。
それ以前に『風立ちぬ』は
日本の近代史の知識が無きゃ物語を
追うことすら難しい話だし、なにより
宮崎監督も会見で語っていた通り、
零戦開発者の話だしね。
ノミネートされた事だけでも驚きかも。
まあつまりは、どっちが優れた作品か
とかじゃなくて、どっちもベクトルは
違うけど秀作だと言いたい訳です。
八方美人いぇーい。