「いいネタを入れて、いい仕事をするのが職人」二郎は鮨の夢を見る shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
いいネタを入れて、いい仕事をするのが職人
映画「二郎は鮨の夢を見る」(デビッド・ゲルブ監督)から。
東京・銀座の名店「すきやばし次郎」の店主で寿司職人の
「小野二郎さん」に密着したドキュメンタリーである。
普段は、あまりインタビューで構成される作品は観ないのだが、
「ミシュランガイド東京」で8年連続の三ツ星獲得の秘密を知りたくて
メモ帳片手に、何度も巻き戻して鑑賞を終えた。
書きなぐりの台詞を整理したら「職人」というキーワードにぶつかった。
次郎さんだけでなく、登場人物のほとんどが口にする「職人」という定義が、
面白かったので、紹介したい。
元「すきやばし 次郎」鮨職人「水谷八郎」さんも、
「同じことを同じようにやるのが、職人の仕事だから」と言い切るし、
料理評論家・山本益博さんも、彼のお店で出される「お鮨」について
「どのお鮨もシンプル。余計なことをしていない。
シンプルを極めていくと、ピュアになる」という言葉を残している。
そのためには「毎日、決まったものを。電車にのる場所まで決まっている。
そして(次郎さんは)お正月休みが一番苦手だ、と言っていた」ことも披露。
自分に厳しく、いかにいつも同じ状態でいられるか、を念頭に置き、
「ミシェラン3つ星の条件」と言われる「クオリティ・オリジナリティ・
いつも同じ状態か?」は、ミシュランの格付けが始まる前から、
自分たちは実践してきた、という自負が感じられた。
そんな次郎さんの「職人」に対する定義は、皆のひとつ上をいく
「いいネタを入れて、いい仕事をするのが職人で」だった。
「あとは、儲かろうが、儲からんが、あまりそれは気にしない」と続いた。
「(鮨は)出来たらすぐ召し上がっていただくのが食べごろです」という、
次郎さんらしい言葉も印象に残る。
私として「プロフェショナル」とはちょっと違う感覚の「職人」の仕事、
この映画を観ると、無性に「職人の作った料理」が食べたくなるに違いない。