劇場公開日 2013年2月2日

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二郎は鮨の夢を見る : 映画評論・批評

2013年1月29日更新

2013年2月2日よりヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースほかにてロードショー

日本の食文化の素晴らしさに、震えるようなすごい映画

寿司の「すきやばし次郎」といえば、ミシュラン三ツ星とか、1人3万円からの価格とか、それなのに銀座の地下街の外れにあってカウンターとテーブルで10席しかないとか、さらには酒のつまみもなくておまかせコース20貫をただひたすら食べていくだけで、客によっては15分で食事が終わってしまうとか、恐ろしい話ばかりが有名だ。そういう噂に恐れをなして、私もまだ行ったことがない。

しかしこの映画は、そういう恐ろしい話をはるかに越えた先にあるものを見せてくれる。なぜ「次郎」の寿司がすごいのかという科学的な解明がされているわけではない。そういう意味で普通の料理ドキュメンタリーとは全然違う。どちらかといえば「禅」の精神を魅せられているような映画だ。

主人公の二郎さんのみならず、周囲が素晴らしい。徹底的に職人に徹してすごい食材ばかりを集めてくる築地の市場の人たち。ピカピカに磨かれた調理場で下ごしらえから焼き物までの調理を支える職人たち。そして修業に修業を重ねて鍛錬し、父親を乗り越えようとする二人の息子。これぞプロの集団である。そしてこういうプロが大量にいるからこそ、この世界に誇る日本の食文化や生活文化は実現しているのだなと実感させられる。

そういうプロ集団の努力が結集する先に、「次郎」のカウンターの中で舞う二郎さんの手さばきがある。その映像は本当に美しい。フィリップ・グラスやモーツァルト、バッハの音楽が重ねられているのだけれど、何の違和感もない。音楽とともに、二郎さんの手はまるで蝶のように舞っているように見える。

佐々木俊尚

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