天使の分け前のレビュー・感想・評価
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ミートボール
ではなく、ハリー、良い味出してるなぁ…。
こういう人の良い、面倒見の良いおじさん、世の中必要だよね。
そんな役に敵役である。
敵が多く、彼女の父親にまで追い出されそうなロビー。
暴力的な過去を持ち、そこからどうやって更生するのか、ハラハラしながら観ていた。
生まれたばかりのルークと悲しい別れがあるんじゃないかと。
しかし、しばらくは働かなくても生活していけたのか?その辺の描写がちょっと雑かな。
ウイスキーに魅せられた、というところも、もう少し丁寧でもよかったような。
あと4人が仲良くなるのも、社会奉仕を一緒にやったから?そこも物足りなかったな。
最後にハリーへ、感謝の気持ちとしてボトルを1本プレゼントする。
それはもちろん出所がわかったら心境は複雑…なはず。
しかし、搾取ありきの不平等な社会が間違っていると言い続けている監督にとって、これは犯罪ではない。ハリーは手放しで喜んだ、としているのかも。
監督の作品の賛否が分かれるのはここかもなぁ、と思った。
ケン・ローチファン以外にはちょっとお勧めしづらいかも
ケン・ローチにしては後半からラストへの帰結が軽快で、巨匠特有の重厚な作品を求める人には合わないかもしれないです。一方でケン・ローチの芸風を知らない方にとっては、何故主人公が過去の犯罪に対してコメントをできなかったのか、何故その状況の解決方法が犯罪しかないのかが捉えづらいかも知れないと感じました。
天使の分け前というタイトルの所以となっている、ウィスキーが蒸発する現象に対するおしゃれな呼び方がストーリーの軸になっていて、この演出は見事でした。
このウィスキーが蒸発する現象に対する呼び方は「天使の取り分」とも訳されるようで、僕はそちらの訳の方が、最終的に彼に贈られたウィスキーをよく表しているかもと思いました。
個人的には、バーでタデウスに話を持ちかけるシーンが痺れました。
グラスにウィスキーを注ぎ、その匂いを嗅いだだけで全てを把握したタデウス。
その表情を映したシーンが妙にかっこよくて、ストーリーとタイトルも含めて、この監督にしては珍しくハリウッドっぽい味わいを感じました。
過去の罪と向き合い、更生を望み、それでも立ち行かず、理解者に相談を持ちかけた結果の解決方法が犯罪であるという点は確かに僕も若干引っ掛かりましたし、ツッコミどころにはなると思いますが、まあそれ言い出すと映画なんて見れないなと。
加えて、ケン・ローチは社会的マイノリティの、状況的などうしようもなさを徹底的に描く人なので、正攻法であの状況を解決することがほぼ不可能だという主張もあったような気がします。
真面目な人には納得できないかも
確かに盗んだ量は雀の涙ほどかも知れないが、盗みは盗み。観終わってどうも納得がいかない。父親になって真面目に生きていくと誓った矢先、これだもの。環境が整えば普通の暮らしが出来るのかもしれないが、短絡的な行動に不安が残る。主人公や友達がまた罪を犯さず幸せになっていることを祈りたい。
チャンスをありがとう。
映画「天使の分け前」(ケン・ローチ監督)から。
鑑賞後、久しぶりにタイトルに、お見事・・と拍手した。
原題「The Angels' Share」(天使の分け前)
作品の中で、このフレーズが出てくるのは、2カ所。
1カ所は「ウィスキー蒸留所で、樽を前に説明を受けるシーン」
「毎年2%、中身は減っていく。空中に蒸発してしまうのね、
これを『天使の分け前』と呼ぶの」という何気ない設定。
そしてもう一つは、ラストシーン。
彼があるきっかけで出会った、犯罪者の奉仕活動指導者で、
ウイスキー愛好家だったハリーの自宅におかれたメモ。
「モルト・ミル 天使の分け前。チャンスをありがとう。ロビー」
世界のベスト・ウィスキーと言われた「モルト ミル」、
手に入れ方は感心しないけれど、その利益を自分たちだけで分けず、
奉仕活動を命じられた犯罪者たちに対して、真剣に相談にのり、
社会復帰できるようアドバイスを送り続けた指導者に、
自分たちが立ち直れたのは、あなたのおかげです、という意味で、
飲んだことがない、いや貴重なウィスキーで飲むことなどありえない、
と言っていた世界の名酒「モルト・ミル」を盗んできて、
その1本を、そっとテーブルの上に置くなんて、素敵だな、
「天使の分け前」というメッセージを添えて。
こういう終わり方は、私好みの作品であるな。
P.S.
「私たちの鼻は、とても鋭敏よ。百万倍に薄めた香りでも分かる。
嗅覚は原始的で、下等の動物だった大昔からあるの」
この説明もなんとなく気になった。鼻って、老化現象がないから。
意外な展開
主人公の追い詰められ感がよく出ている。同じような境遇の人は実社会にもたくさんいるのだろう。
恩人となる人との出会いがその後の人生に大きく影響するが、そんなにラッキーな人は少ないのかもしれない。
ウイスキー造りを通じて社会復帰を成し遂げるお話と思いきや、意外な展開であったがチャンスを有効に活かした主人公はなるべくして窮地を脱する。
今後の展開が楽しみな作品。
恩師への分け前。
行動の是非で問うなら、まったくけしからん映画ではある。
天使の分け前と言いながら、結局そうなるの?というお話。
しかしこれは良識を問う前に、分けちゃったら?という監督の
社会持論を明らかに謳い上げている作品である。
登場する若者達は(本人の素性もあろうが)働く場がない。
必然と悪の道に染まり、暴力に明け暮れ、社会活動に流れる。
もうそういう若者には、二度と更生の道は拓かれないものか。
物語にはそういう若者を見離す大人と見守る大人が登場する。
どちらのやり方が良いとか悪いとかではない。
ただこれから生きていくためには何としてでも自分の努力で
今の現状を打開しなくてはならない、その手助けをしている。
ウイスキーの魅力を愛好家のハリーから教えられたロビーは、
自身にその素質があることに気付く。何とかして職業にしたい
(あるいは金儲けしたい)ロビーだが、もちろんコネも金もない。
そこで奉仕活動仲間の悪友を取り込み、とある計画を立てる。
(ここでウイスキー作りに精を出すと思ったら、大間違い^^;)
今作で非常に面白いのはウイスキーの知られざる魅力だった。
自身は飲まないので味そのものの魅力はまったく分からないが、
熟成樽の中で年間2%蒸発する分を「天使の分け前」だという、
ずいぶん粋な表現だな♪と思って感心した。
笑うに笑えない現状が一気にドキドキさせるシーンへと代わり、
最後は想像通りのハートウォーミング路線へと持っていかれる。
少し前のK・ローチ作品にはまず笑いなどあり得なかったが、
二作前の「エリックを探して」なんかはかなり笑った記憶がある。
テーマは分け合うこと。助け合うこと。恩意は謝意で返すこと。
あと悪友たち!早く更生しなさいよ。
(どの国の若者も現状は厳しいねぇ。でもどこかにきっと道はある)
いろんな事が中途半端ですが、カッコイイとこはカッコイイ
どうしようもないチンピラの一発逆転ストーリー。
序盤は少年犯罪の裁判から始まり、ドラッグや暴行、窃盗の少年犯罪を強く匂わせる感じからスタートし、陰鬱でけだるい感じが強く、正直『だるい』映画と感じました。
ただ途中、ウィスキーの会でロビーが見事なテイスティングを見せてから、物語は一気にテンポを上げていきます。
モルト・ミル…100万ポンドを越える金額でやり取りされる、至宝のウィスキーをかっぱらい、売り払って金を得る…ところまでは想像通りのストーリーでしたが、タデウスとの交渉の始まりから、さらにテンポを上げてクライマックスへ。
『何本ある?』
『保存用、交換用、友人との試飲用』
『まさか支配人と?』
『勇気がない』
小気味の良いこのシーン最高にカッコ良かったです。
アルバートが失態を犯したあとのロビーの交渉から、モルト・ミルを1本で10万ポンドまで釣り上げつつ、『天使の分け前』を恩師に届けるラストはとっても痛快でした。
途中、スコットランドの山々もとっても素敵な景色でよかったですが、そこを旅するチンピラのケルトスカート×パーカーのルックスに唖然…
また、前半の安易な絶望感は後半とのコントラストなのかも知れませんが、ちょっと食傷気味でした。後半にはぱたっと止まる感じですし…
でも、後半のストーリーと『天使の分け前』というタイトルと、ロビーというキャラクターはとっても気に入りました!
ウィスキー文化の描かれ方が興味深い
スコッチウィスキーや、スコットランドの荒涼とした景色に憧れ
のある私にとって、本作でスクリーンに映される本場の蒸留所内
部やハイランドの景色は、それだけで及第点を与えられる。
本作を見るにあたり、労働者階級の若者が這い上がっていく姿が
描かれていると知ったときは、「トレインスポッティング」「リ
トル・ダンサー」で作品背景として取り上げられたような、現代
イギリスの矛盾についての描かれ方にも興味を持って臨んだ。
底辺からの脱出を貴重な銘酒を盗むことで果たすという、大筋と
その結末は賛否あると思う。だが、それは国情も文化も違う国の
事。私にどうこう云う話ではないと思う。
むしろ、本作で面白いのはウィスキーの描かれ方である。
テイスティングのフレーズをコケにする。飲み残しや痰壺かわり
のウィスキーを飲ませる。中身を入れ替えたウィスキーをオーク
ション落札者に賞賛させる。オークションの前日に怪しげな相談
を持ちかけられるのは、実在の蒸留所のマネージャー(その方は
俳優が演じているのか、本人役なのかはわからないが)である。
貴重な銘酒をまんまと盗まれるのは実在の蒸留所からである。
その一方で、テイスティングの権威として登場するのは、本物の
ウィスキーの権威であり、本物の蒸留所が実名で登場する。
普通に考えれば、コケにされる蒸留所は仮名だろう。スコッチの
描かれ方も、名声を壊さない程度に採り上げるところだろう。だ
が、そうしないところが面白い。歴史の荒波を潜り抜けてきたス
コットランドとスコッチウィスキーの、したたかでユーモアを大
切にする精神が見え隠れする。ブームの陰で、スコッチウィスキー
ーの味を知らないスコットランド人の若者が増えていることを、
本作を見て初めて知った。本作でスコッチウィスキーの若者離れ
が食い止められたとすれば、見事というほかはない。
観終わった後の後味もすっきりしていて、私も本作を観た後、無
性にスコッチが呑みたくなった。(呑んだのは余市蒸留所の原酒
だが・・・)
2013/6/23 川崎市アートセンター アルテリオ映像館
同情はできるけど、共感はできない
ウイスキーである必要が?というのが正直な感想。
映像は綺麗だし、音楽も素敵ですが、どうしてもストーリーに
もやっとするところがありました。
更正するチャンスをつかむ為とはいえ、結局やった事は犯罪だし、
他の樽のウイスキーを混ぜるなんて以ての外。
ウイスキーを作った人に失礼だし、そんな人が蒸留所で働くのが
ハッピーエンドなんて…。
主人公の天性の味覚を生かしてというのであれば、
もっと綺麗事な話で見たかった。
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