「いろんな意味で偏っている」ゼロ・ダーク・サーティ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
いろんな意味で偏っている
いろんな意味で偏っている
まず編集。
ストーリーに必要な要素を抜き出すなら、「彼」が何をした人物で、なぜ居所が分からないかなどの基本的な説明がまったく描かれていない。
世界中の人が知っていることで、説明の必要も無いということか。だとすれば、事件の記憶も薄れた頃合いに、この映画を見た時に、「何の映画?」と思われることが避けられない。つまり、10年後にも語り継がれる物語にはなり得ない。
CIAの分析官が主人公で、彼女の行動は、核心に迫るのに不可欠の働きだったのだろうが、実際何をしているのかつかみどころがない。ただの傍観者にも見える。イスラム側の報復を恐れて、わざとぼかしてあるのか。それだけに、映画の主人公らしくない。
大がかりな作戦シーンは、迫力もあって、見入ってしまうが、それ以外の政治的なやり取りであったり、酒場で疲れをいやすようなシーンにはやっつけ感が漂う。映りこんでいる背景が作り物臭くて仕方ない。セットのことを言っているんじゃなくて、オフィスで仕事をしている人とか、食堂で食事している人とか、酒場で踊っているダンサーとか、いわゆるエキストラに本物っぽさが全くない。
ジェシカ・チャスティン見たさに選んだが、彼女が出ていなかったら、たぶん見ようとも思わなかっただろう。
マーク・ストロングはチャーミングな禿げ頭をかくし、かつら着用で出演。なんでだ?実在の人物に配慮したのか。役作りなら失敗としか言えない。
突入部隊にクリス・プラットがいたのにびっくりした。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の2年前で、ブレイク寸前の頃だ。ぽっちゃり体型とか言われていたけど、肉体改造はこの頃から取り組んでいたのか。見事な軍人っぽさだった。同じスクワッド内に「シカゴ・ファイア」のテイラー・キニーもいた。映画の撮影後に、ドラマの出演が決まったのだろうか。
ジェシカの演技は素晴らしい。感情の起伏が見事に表現されていて、何かを成し遂げたということが、伝わるいい演技だった。
そんなこんなで、ビンラディン暗殺を知るには不十分な内容だが、その周辺で動いていた人たちの暗躍を知るには、いいと思う。いろんな意味で、偏りがある内容だった。
2017.11.2