「憎しみの究極のかたち」さよなら渓谷 ブッチマン2013さんの映画レビュー(感想・評価)
憎しみの究極のかたち
レイプ被害者と加害者が、一見仲良く、一緒に暮らしている、その心模様を掘り下げた映画。
端的に言うと、不幸を追い求めているんです、彼らは。被害者なのに、そのせいで負のスパイラルに陥ってきた彼女。加害者なのに立派に就職し、彼女もできてうまくいっている彼。その二人が出会ったとき、当然罵る彼女と、何も言えない彼、そして不幸になるために一緒に暮らす、という話。
邦画独特のあの雰囲気、BGMやセリフが少なくて、季節や自然の音をメインに、表情や佇まいで魅せる、そういうのがぴったりな映画でした。
タイトルのさよなら渓谷は、つまりは幸せになりそうだから、のさよならなんです。でもついてこい、と。
死んで楽になるのなら、一生つきまとってでも不幸にしてやる、という彼女の憎悪は激しくて、それでももう彼しかいないというもの悲しい、あれは愛というのか、そういう貪るような無言のSEXも印象的でした。
人間は複雑で、当たり前なんて実はごく一部のパターンなんじゃないかって思います。
憎悪が行き過ぎて愛になるなんて普通あり得ないと思いますけど、心の動きは妙に納得感があり。
それにしても、レイプはやっぱり残酷な犯罪だなあって再認しました。今回の題材は集団レイプですから、よりひどい。
暴力や詐欺なんかより、殺人に次ぐくらいの重たい犯罪だと思うのですが、社会的制裁を受けない男たちに全く憤りを感じます。
きっと、憎悪と愛の微妙な境目みたいなものを表現したかったのだと思うので、派手さはありません。淡々と進みます。ただもっともっと、女性のもつ本質的な憎しみを表に出してもよいかな、と。若干まだ男よりで、その辺り犯罪の重大性が少し薄らいでしまってたかなって思います。
でも自分は、こういう映画結構好きです。また一つ、人生経験が増えた気がします。