「夢と現実の狭間で走り続けるアイドルたちのチキンレース」DOCUMENTARY of AKB48 No flower without rain 少女たちは涙の後に何を見る? 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
夢と現実の狭間で走り続けるアイドルたちのチキンレース
総選挙や武道館コンサートetc.のアイドル道を切磋琢磨する一方、東日本大震災の復興支援ライブに積極的に取り組み、日本の現状にどう関わっていくべきか!?という社会派のメッセージが盛り込まれていた前作に対し、今回は絶対エース・前田敦子の卒業を主軸に華麗かつ過酷なAKBサバイバルレースを純粋にクローズアップしており、アイドルの生き様を濃厚に浮き彫りに描き、面白かった。
色々な意味でもAKBの歴史は、前田敦子の歴史とも云える従来のメディア展開が卒業を機に一転し、第2章へ進むのが今作の争点。
激流の渦の深さを12年度総選挙での勝敗の格差に残酷なまでに物語っている。
また、新組閣編成を経て生き残りを賭けた各々の葛藤、御法度の恋愛に対する謝罪、厳しいリハ、超過密スケジュールetc.etc.
華やかなスポットライトよりも苦難の壁が遥かに大きい芸能界で、どう自分を商品化し、ファンに晒け出していくかをメンバー1人1人が真剣に向かい合う。
喜怒哀楽を露わにインタビューに回答している姿は、選ばれし者の風格が個性として備わっており、とても聴き応えがあった。
中でも交際ペナルティーに対し最も熱心に語っているのが、現在、渦中の峯岸みなみだったのが感慨深い。
そして、ドキュメンタリーシリーズを観る度に、メンバーを叱咤激励し、牽引する総監督・高橋みなみの存在が如何に重要かがよく解る。
職場での人間関係と照らし合わせながら観るのも面白い鑑賞方法かもしれない。
少々長過ぎるキライがあるものの、アイドルスターの夢と現実を精密に追跡した今作は、そこいらの甘ったるい芸能ドキュメンタリーとは一線を画す。
因みに私の推しメンは長年、板野友美だったが、卒業してしまうので、柏木由紀に移行しつつある。
テレビ東京の深夜ドラマ『ミエリーノ柏木』の影響が大きい。
こちらもいち早い映画化をキボンヌしながら、最後に短歌を一首
『華の舞ふ ゼロは眩しく 道苦く 背負ゐし涙 卒業の跡』
by全竜