劇場公開日 2013年1月11日

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「3Dを意識しすぎて、特撮でジェット・リーのアクションを殺してしまったことが残念!」ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.03Dを意識しすぎて、特撮でジェット・リーのアクションを殺してしまったことが残念!

2013年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 本作は、香港カンフー映画の最高峰である『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズを監督した大御所ツイ・ハーク監督とジェット・リー主演という黄金コンビが14年ぶりに復活した注目作品。
 またストーリーとしては、巨匠ギン・フー監督の『残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿』(1967)とそのリメイク『ドラゴン・イン』の後日談となる作品です。

 ストーリーは波瀾万丈すぎて、いささか滑稽に感じました。とにかく3Dの飛び出す映像のために作られたような作品なのです。目立つのは、ニュートンの法則を全く無視して剣と手裏剣が、そして人間すらも剣縦横無尽にビュンビュン飛び回ること。とにかくワイアーアクションが、かなり派手に使われ過ぎていると思うのです。そのため、アクションのリアルティなど微塵も感じさせません。せっかくのジェット・リーの主演でも、彼ならではのアクションのキレが特撮で相殺されてしまっているので残念でなりませんでした。
 ワイアーアクションが好きな人もいるとは思いますが程度の問題。『新少林寺』でのアンディ・ラウのアクションみたいに、最小限にワイアー使用を止めて、ガチンコで痛みが伝わる格闘をみせてくれた方が感情移入しやすくなるものです。2Dで見てしまったため余計にそれを感じてしまいました。

 またストーリー面も、お宝探しがメインなのか、宦官ユーの圧政を倒すことか、はっきりしません。ラストに意外な人物の裏切りによるドンデン返しも、唐突過ぎる感じがしました。
 ただ冒頭の東廠(唐の秘密警察機関)の拠点を主人公たちが空から急襲する、垂直的な高低差を巧みに操るアクションとラストの砂漠から廃墟の都市が現れるダイナミックな特撮シーンには目を見張りました。

 物語は砂漠の宿屋を舞台に、砂下に沈んだ都市の秘宝を巡って、リー扮する義士と女侠客、そして諜報機関・西廠の督主で、権力の亡者となっている宦官ユー、それに財宝を狙っているモンゴル人の盗賊団が入り乱れて戦いが繰り広げられることが描かれます。

 まぁ、香港カンフーは昔からストーリーは二の次でしたから、今更目くじら立てるのも野暮というべきでしょう。伝統の上下を移動する縦方向のアクションをたっぷり見せ付けてくれる点では、ファンとして涙腺もものだし、これからのカンフー映画の方向性を打ち出した作品として、画期的ではあると思います。

流山の小地蔵