「性と死は鬼才の遺作に最も相応しいテーマ」千年の愉楽 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
性と死は鬼才の遺作に最も相応しいテーマ
長年、一貫してこだわり続けてきた“性と死”をテーマに濃厚に突き進む今作は、完成直後、交通事故で急逝する己の運命を既に悟っていたような感慨深い見応えだった。
ストーリーは4人の若き風来坊が交代でセックスと酒に生きるSAGA方式で展開し、クールな井浦新・殺気めいた高良健吾、哀愁感溢れる高岡蒼甫、まだあどけない染谷将太と、若手実力派が各々の世知辛い夜を語る中、最も印象深いのは、やはり高良健吾であろう。
温厚で誰にでも打ち解ける『横道世之介』とは対照的に、人との交流が苦手な尖ったキャラクターは、彼の著しい成長を確認できた。
その4人を常に温かい目で見守る寺島しのぶの豊かな包容力は母親そのものなのに、最後の最後に抱かれ女に墜ちていく色濃い悶えは、若松ワールドの真骨頂を感じただけに、鬼才の早過ぎる死を改めて悔やまざるを得ない。
では最後に短歌を一首
『淀む血に 波打つ筆の 不如帰 罪とさすらう 宿無しの路地』
by全竜
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