「予告編より格段に良い」オール・ユー・ニード・イズ・キル blueheavenさんの映画レビュー(感想・評価)
予告編より格段に良い
誰かが「予告編下手すぎ」と書いていたが、その通りだと思う。
確かに予告編どおり、作品紹介文どおりの筋書きだが、イメージしていたものとはまったく違った。
「何回か繰り返す」という作品はあったと思うが、そのループの回数は桁違い。これを表現する技術に感心してしまう。最初に死ぬまでも短かったが(それでも、状況設定、人物の性格をしっかり説明する程度の長さがある。)その後のループまでの短いこと。
友人を救おうとして共倒れ。リタを助けようとして自分がアウト。こうして、ああして、とリタと綿密に打ち合わせても、姿勢を低くしなかっただけでアウト。訓練用の機会に叩きのめされてアウト。丘に登って、無数にある車のうち試してないのは2台だけ・・・車の数だけアウトだったってこと。一方、「あ、その場面は前は省略してたね。」と思うところもある。
肝っ玉なし、小ずるいケージ少佐は、終盤に入ってりりしく変わるというよりは、私には絶望していくように見える。
バイクに乗る場面と、カフェにいる場面が理解しにくかったが、あれは、訓練を抜け出してリタに会いに行くかわりに、逃げ出しちゃった、ということ?「ずっと前に死んでいても不思議じゃない。」とつぶやく顔は屈折して見える。そうやって出撃を回避しても、結局ギタイたちはロンドンにも押し寄せてくる。ケージも殺されてしまう。
ケージは、一直線にヒーローになるのではなく、悲惨な記憶を蓄積しながらループを繰り返す。「農家に一晩泊まろう。それだけはまだやったことがない。」とリタに勧めるケージは、ループに疲れ「休ませてくれ。一時の平穏をくれ。」と言っているように見える。
でも最後はヒーロー大好きアメリカ映画だから、勇敢に献身的に敵に立ち向かっていく。突破口は、出撃の前の時点でオメガを倒すこと。但しその前にアルファを倒すと、オメガの能力で出来事の前に戻ってしまうから誰かが囮になってアルファを生かしたままでひきつけておかねばならない。そして共に戦う仲間を作ること。今まで負の要因にしか見えなかったJ部隊のメンバーが、個性あふれ、信頼しあう仲間になる。
そしてループの能力を失い、もう一発勝負しか選択の道がないケージとリタが最後の戦いを挑む。
あのね、舌を巻くような構成力だと思うよ。そして以上のようなストーリーと心理を演技で伝えてきているキャストの皆さんにも、こういうイメージを彷彿とさせた原作者にもブラボーッ!であります。