「ヘタレがタフになる」オール・ユー・ニード・イズ・キル マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘタレがタフになる
いわゆるタイムループものだが、その回転速度が凄まじい。訓練の1日を除けば、初回は戦闘開始後たった5分で死んで前日に戻ってくる。同じ経験を繰り返すことによるスキルアップで、この5分が次第に延びていき、最終的に侵略者“ギタイ”の大ボスにたどり着くというわけだ。
最初は5分から始まる「ジ・エンドの壁」が物語の核で、この作品の原題も『Edge of Tomorrow』になっている。邦題よりもわかりやすい。
地球を侵略するエイリアンのミミックス“ギタイ”のデザインは新鮮味に欠けるが、戦闘隊員が身につけるパワードスーツは面白い。洗練されたデザインとは言いがたく、走る姿が不格好で笑える。
それが当初ヘタレで始まるケイジの場合、余計に不格好さが際立つから面白い。トム・クルーズのヘタレさが最高だ。しかもずる賢さを漂わせて、実に上手い。
VFXによる輸送機は重量感があり、ILMによるものかと思うほど素晴らしいデキ。音響も今年観た映画の中でトップクラス。
ヒロイン役のエミリー・ブラントは「プラダを着た悪魔」以来、最高に魅力を引き出された作品になった。
何度、生き返ったのかわからなくなるが、話は整理されていて難解さはない。実際にあんなふうになったら、体力はリセットされるだろうが、続けざまの戦闘は精神が相当タフでないと持たない。これはヘタレがタフになる話だ。
ただ違和感があるのがラスト。どうも時系列が合わず、説得力に欠ける。
あそこは、ブリガム将軍(ブレンダン・グリーソン)との面談まで戻って
「戦いなら任せてください。ほかの誰よりも経験豊富ですから」なんて台詞で終わったほうがよかったと思うのだが。