「「ループもの」映画の系譜を裏切らない。あの作品とはリタ繋がりだったり。」オール・ユー・ニード・イズ・キル ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
「ループもの」映画の系譜を裏切らない。あの作品とはリタ繋がりだったり。
『ミッション:8ミニッツ』をさらにヒロイックにしたのが今作と言えるし、さらにはヒロインも協力してくれるのでロマンスもアリ。他にもパワードスーツでエイリアンと戦うアクションや謎解きの要素まで詰め込んで個人的には全部乗せ。これで映像のクオリティが高かったら文句無しだろうけど、この題材でなおかつ日本のラノベ原作となればよくぞここまで仕上げたと言うべきでしょう。
もちろんネガティブな点はいくらもある。さすがに主人公が年寄りすぎだし笑、戦うことや死へのプレッシャーがあまりに軽くされている、パワードスーツがしょぼい、敵の造形を含め既視感の連続などなど。特にループへの葛藤が希薄だったのがもったいない気がした。そこを掘り下げないと作品を通しての重みが変わってくるし、カタルシスにも関わるだろう。だからそれを掘り下げないとわかった時点でエンターテイメントをのみ享受しようと心に決めた。とは言えトムの年齢で最前線に立たせるためのアイデアが意外とよくできていたのはよかった。
でポジティブな点と言えばこれらの裏返しでもある。トムが主人公で臆病物を演じていて、戦場では役立たずで脱走するし何度も何度もマヌケな死に方をしては「maggots」とののしられる‥‥これは笑える。ビル・パクストンの配役も含めて。
最初の戦闘シーンはロケーションや撮影のスタイルなどが『プライベート・ライアン』で、そこに『スターシップ・トルーパーズ』を乗っけてしまうという暴挙。面白いこと全部やっちゃおうというノリは嫌いじゃないし、実際うまくいっていた。あのしょぼいパワードスーツも実際は40kgくらいのものを演者が装着してやっていたということでリアリティがなくもない。その辺りはスタント大好きのトムならではでしょう。エミリー・ブラントは大変だったと思うけど笑。ちなみに彼女の配役もよかったね。元々好きな顔だし、戦士ぽくないのは設定とおり。根っからの勇者ではないから初めにケイジと遭遇した際には素直に驚きたじろいでもいた。そして使命感で支えられた彼女が主人公を導いていくくだりの気の強い演技は持ち味でもある。
スーツが使えなくなってからはドラマが始まるが、クライマックスなどは陳腐だけどたやすくベタな恋愛が始まらないのがラストの余韻に繋がっていると思う。そしてループで戻った過去でもアルファがいなくなっていたのが何故なのか、を考えるのも楽しい。
あと珍しく劇中の日本語の発音がちゃんとしていたのもよかった。