「静かに迫る恐怖感」フッテージ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに迫る恐怖感
一発屋のミステリー作家の主人公が、曰く付きの物件に越してきたことから始まるホラー。家族には「この家は何も事件と関係ない」と嘘をつき、結局は巻き込んでしまうというダメな父親を演じるのは、イーサン・ホーク。家族に楽をさせたい、もっと売れたいという葛藤や焦りがひしひしと伝わる演技力で観客の心を揺さぶる。
ありがちな設定であり、特にこれと言って抜きん出ているところも無いかもしれないが、強弱がはっきりとつけられた恐怖演出が楽しませてくれる。じわっとした恐怖感もやや全盛期のJホラーを彷彿とさせる部分があり、日本人にも受け入れられる作品だと思う。
8mmカメラに収められた残虐な殺人映像、いわゆるスナッフフィルムから謎を紐解いていくという物語だが、流石スコット・デリクソン監督。謎解きからの恐怖演出、終盤に活きてくるキーワード等を絶妙な配分で描いている。昼間なのに部屋の中が暗いのは毎度の事だが、本作に登場する屋敷のような曰く付き物件には持ってこいの空気感だろう。イーサン・ホークという監督のお気に入り俳優の主演だが、登場人物が地味というか物静かなイメージが強く、華の様な存在が居ないのも大ヒットした「死霊館」のフランチャイズシリーズとの大きな差だろう。本作がヒットしたのもあえて犠牲にした派手な恐怖演出等の工夫がホラーファンを唸らせたのかも知れない。ちなみに個人的にだが芝刈り機のシーンは主人公と同じ反応をしてしまう位の驚き度だった。恐らく本作の最恐シーンだろう。
本作で報われないのは何を隠そう主人公の妻と子である。明らかな人道から外れた行為ではなく、本の執筆という仕事でこれに巻き込まれたのだ。子供思いの妻にはこれといった見所は無いが、不眠症に悩む長男はかなり爪痕を残してくれたと思うが笑。
SFでは観客からそっぽを向かれ気味のスコット・デリクソン監督はやはり低予算のホラーの作り手なのだろうと実感させられた作品である。