はじまりのみちのレビュー・感想・評価
全6件を表示
木下惠介監督へのラヴレター。 この題材で映画一本作ったことに拍手👏
昭和初期から平成にかけて活躍した映画監督・木下惠介の、母親をリアカーに乗せて疎開したという実際の出来事を基に映画化したヒューマン・ドラマ。
監督/脚本は『クレヨンしんちゃん』シリーズや『カラフル』の、巨匠・原恵一。
主人公である木下惠介監督を演じるのは、『アウトレイジ』シリーズや『SPEC』シリーズの加瀬亮。
惠介の母、木下たまを演じるのは『もののけ姫』『ゲド戦記』の、レジェンド女優・田中裕子。
木下の疎開を手伝う便利屋を演じるのは『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』の濱田岳。
木下一家が泊まる旅館の主人、庄平を演じるのは『20世紀少年』シリーズや『カイジ』シリーズの光石研。
旅館の娘、やゑ子を演じるのは『桐島、部活やめるってよ』『悪の教典』の松岡茉優。
松竹のプロデューサー、城戸四郎を演じるのは『踊る大捜査線』シリーズや『ツレがうつになりまして。』の大杉漣。
木下が見かけた学校の先生を演じるのは『ソラニン』『おおかみこどもの雨と雪』の宮崎あおい。
なお、作中のナレーションも宮崎が担当している。
第5回 TAMA映画賞において、特別賞を受賞!
『クレヨンしんちゃん』シリーズでお馴染み、アニメファンなら当然知っている名匠・原恵一の初実写作品。
題材としたのは原監督も大いに影響を受けているという昭和映画界の巨人・木下惠介。
黒澤明のライバルといわれ、戦後映画界を牽引した偉大な映画監督。
恥ずかしながら、自分は木下映画を一本も観たことが無い💦
それどころか木下惠介という名前すら知らなかった…何という無知´д` ;
こんな木下惠介監督のことを全く知らない人間がみても、十分に良い映画だと思いました。
木下惠介生誕100周年記念作品ということで、木下惠介監督の偉業が伝わるように、彼の作品の実際の映像が作中に引用されますが、そのどれもが素晴らしく芸術的で木下作品を観てみたい!という気持ちにさせてくれます。
映画の内容は恐ろしく地味。昭和文学の香りが漂うミニマムな物語。
とはいえ、母と子の物語かつ喪失したアイデンティティの再発見という物語なので、誰もが共感し感動する映画になっています。
加瀬亮とユースケ・サンタマリア、そして濱田岳のロードムービーという側面もあり、この3人のアンサンブルも見所の一つ。
ぐっと抑えたユースケ・サンタマリアの演技が光っている。
特に濱田岳の演技が素晴らしい。ちょっと厚かましい青年の役をやらせると、本当に濱田岳は上手い!
中々良作だと思うが、気になる点もいくつかある。
まず冒頭、木下惠介と松竹のお偉いさんの大杉漣の会話シーン。ここが説明的すぎる…。
いかにも演技してます感が、ちょっとな〜と思ってしまう。
冒頭でもたついてしまって、物語にスッと入り込めなかった感じ。
それと空襲のシーンが一つもないのは、やはり予算の関係だろうか。
やっぱり戦時中が舞台の映画では燃え上がる炎の恐怖を見せて欲しい。
意外と木下惠介と母親が差し向かうシーンがないのもあれっ?と思った。
何故木下惠介がこれほどまでに母親孝行をするのか、そこはもっと掘り下げられたのではないだろうか?
長旅で乱れたお母さんの髪を、惠介が櫛でとかすシーンは非常に素晴らしかったので、もっとこの親子の関係を描いて欲しかった。
あとは木下惠介作品の引用部分。
引用自体は良いんだけど、ちょっと長すぎやしませんか?正直、映画全体のテンポが悪くなっている。
あえて長尺で引用しているのだろうが、もっとスマートにした方が良いと思う。
少々不満点も書いたものの、心に染み入る良い映画なのは間違いない。
優秀なアニメ監督は、やはり実写を撮っても優秀なのだということを証明した一作。
8月に観る映画としては最適です!
母を大切にしたい
ちょうど昨日まで、母をお伊勢参りと岐阜の用事で、新潟から車で連れて行っていたため、ちょっと気持ちが分かる内容だった。リヤカーで峠を越えるような苦労はなかったのだが、それでも面倒でつらかった。この映画を見た後だったらもっと優しくできただろうにと後悔した。
濱田岳さんが素晴らしい勝手な人間ながらも、その正直さで核心を突くような素晴らしい役どころで、演技も素晴らしかった。田中裕子さんが上品なおばあさんになっていて見事な存在感だった。
しかし、映画としてはあまりに地味で、物足りなさを感じた。予算もあるのだろうか、流れる木下監督作品に比べて映画のスケールが小さくて寂しかった。
親子の情を描くこと。
まさにタイトルに相応しい内容が名監督への敬愛に満ちている。
「親子の情を描くことが何故いけないんです?」と、食ってかかる
加瀬亮演じる木下惠介が、そのまま今作の原恵一の感性と繋がる。
親子愛、とりわけ息子が母親に注ぐ思慕の情と、母親が息子に注ぐ
究極の愛は、自分の母と兄の関係に観てとれるし、私が息子を
想う気持ちにも重なる。嫁と姑の諍いが絶えないのも納得至極だ。
そして時代が映画という媒体を使い、広く訴えたのが戦争である。
日本だけではない、海外のあらゆるフィルムが検閲に晒され、
多くは焼却されたり、フィルムをカットされるという扱いを受けた。
所詮こういった娯楽は、何もかもが時代に左右され翻弄される。
だけど「ここで腐るなよ!木下君!」も本当。(さすが松竹・城戸四郎)
いつか必ず自由に描ける時がくる。その時こそ、自分の映画を。
結果、木下惠介は多くの名作を次々と世に出す監督へと成長する。
特に彼の作品を熱心に観たわけではないが、作中で紹介される
木下作品はほとんど観た(もちろんビデオでになるけど)
カレーライスのエピソードは、あのシーンに繋がったのか(涙)
便利屋と破れ太鼓の阪妻の姿がピタリと重なり、涙がこぼれた。
二十四の瞳も然り、陸軍然り、楢山節考然り、数々の名シーンが、
今作で描かれるエピソードと重なり、エンドでは感動の涙が溢れる。
よく繋げた。よく演出したね。と、原監督に拍手を贈りたい。
さて、本作の内容は
次回作に待ったをかけられ腐った木下青年が、実家浜松に戻り、
脳溢血で倒れた母親を看病しつつ、兄と便利屋の三人リヤカーで
山越えをして、母親を勝坂まで疎開させる、という物語。
戦中から戦後にかけて、木下が家族とともに経験した出来事総てが
彼の原点(戦前もいい作品を撮ってますが)になっていることを示す。
一緒に旅をする便利屋(濱田岳)が、とりわけいい味を醸しており、
言葉少ない兄弟(兄はユースケ)の雑談相手にもなっているのだが、
河原にて、橇の合わない木下に「陸軍っていう映画知ってるかい?」
と感想を訥々と語るシーンが素晴らしい。延々とノーカットで
陸軍のラストが流されるのだが、母親の田中絹代の追いかけ場面が
息子を戦地へ送る母親として女々しすぎるという、曰くつきのシーン。
ここで冒頭の「親子の情を描くことが何故いけないんです?」を思う。
どの母親も旗を振り万歳三唱をしながら、心の中で泣いているのを
木下が彼女の表情動作ひとつで、恐々と訴え続けるのが凄まじい。
口八丁手八丁で俗世に塗れながら生きてきた便利屋のような男が、
ああいう映画をもっかい観たいなぁ。という言葉に無言で男泣きを
する木下は、やっぱり間違ってない、とここで自信を回復したはず。
映画監督の性というか、どんなシーンも映像化して考える
(ファインダーを覗く)仕草が、やはり手放せない才能を感じさせる。
のちに疎開先で母親から手渡される手紙によって、彼は東京へ戻り
監督業を再開するのだが、そこまで息子の決めたことにはただ頷き、
批判も不満も口にせず(病のせいもあるが)、じっと見守る母の姿勢に
またしても私は感銘を受けた。あ~こういう母親になれたら!(涙)
どうして人格者たる人物の親というのは、こうやって物静かなんだ。
あれこれ口出しをせず、ここぞ!というところでだけ、意見を云う。
この一家は総じて寡黙な家系^^;にも思えるが、まぁそうだとしても、
父といい、兄といい、終始穏やかに語りかける姿勢はとても素敵だ。
木下映画の名作は数々あるが、
私的にいちばん深く心に残っているのが「喜びも悲しみも幾歳月」で、
まだ結婚の真髄をなんにも分かっていなかった自分に、
夫婦って、家族って、こんな風に支え合っていくものなんだ!を、
教えてくれた教科書のような存在。
これを観て、何事にも耐えるぞと、深く心に決めたはずなのに…(爆)
自分の母親の実家が今作で描かれた土地に近く、方言が耳慣れて
とても懐かしく感じられた。母親を誘えば良かった、と後で思った。
(カレーライスは当時から御馳走だったのね。どこのカレー粉だろう)
ドキュメンタリーだった
原恵一ということで期待して観に行ったけど、話が単純でオチがいまいちだった。
木下監督の過去の作品が流れる部分で涙した感じ。
木下監督への感情移入で涙したわけだが、映画というよりはテレビでやっているドキュメンタリーといった感じだった。
もう少し深く掘り下げてほしかった。
自分は心が腐ってるのか。
予告を観てコレは感動出来るに違いないと劇場まで足を運んで観てきたワケですが、自分の心は腐ってるのか?ってくらい何も感じなかったです。
作りたい映画が作れない時代に翻弄された主人公。病気の母をリアカーに乗せて山を越え疎開させる兄弟と便利屋。
申し訳ないくらいに何も伝わっては来なかったです。
全6件を表示