劇場公開日 2013年2月16日

  • 予告編を見る

「巨大高層ビルに閉じ込められた二人のサバイバルアクション」ジャッジ・ドレッド 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5巨大高層ビルに閉じ込められた二人のサバイバルアクション

2013年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

まるで『X-men』の悪役マグニートーみたいなヘルメットをかぶり、複数の特殊弾を使い分けられる専用銃を持ち、プレート入りの全身黒スーツというスタイルの治安要員ジャッジ。
彼らは現場で法適用を判断、その場で処刑することも許可されている存在。
こんな連中が街に配置されているのに、それでも治安が悪いという時代設定。うーん、荒廃してますな~。

そんなジャッジの一人ドレッドは、武装した麻薬売人3人に単独で立ち向かい、無傷で対処するという人物。短い冒頭でベテランっぷりを観客に教え込む。
麻薬吸った連中がキラキラなのに、妙な美術意識を植え込んだのかと嫌な予感がしたものの、これは杞憂。すぐに理由が判明する。
ごくごく短時間で必要な情報を上げ膳据え膳。この小気味よさが心地よい。

ベテランのドレッドが主人公なだけに、ちょっとやそっとの犯罪者じゃ対抗できない。そのためか本作では、映画演出上、なかなかに困難なシチュエーションが提供された。
地上200階の超高層ビルで、外部への連絡手段を断たれ、そこの犯罪組織とガチンコ勝負しなければならない。映画『ダイ・ハード』にそっくりだ。
違うのは、ドレッドにはとびきり強力な銃が提供される。またルーキーとはいえ、身近に相棒を置くというのも強みの一つ。

ドレッドに与えられた銃は、音声入力により発射する弾丸が選択でき、比較的軽微の犯罪者にはスタン弾で感電させ、群れたギャングには焼夷弾で一網打尽にするなどといった使い方ができる万能銃。
こんな銃を装備してQCBやられた日には、まるでサバゲーそのものの。実際、そんなシーンも存在して、ジャッジ二人がギャングどもをコテンパンにする。
というか、武装こそ強力なものの、立ち回りがまるで素人なギャングが訓練されたジャッジにかなうはずもないのだけど。

またルーキーは透視と読心ができる超能力者。
接敵を回避したり、捕虜尋問に精神ダイブしたりと便利すぎる技を持つ。超能力ネタが好きな人には垂涎ものの見せ場も用意されている。
そんなだから、なんか含みがあるかと期待してみれば、単に便利なだけという設定には苦笑しちゃうけれど。

ギャング団のボスもなかなかキレた存在。
元娼婦なのだが、ヒモがナイフで顔に切りつけてきた際、そいつのアレを噛み千切るというアレな人。逆にポン引きのシマを乗っ取り、さらに超高層ビル一棟まるごと支配しちゃったという猛者。
荒れくれのギャングたちを統率し、麻薬売買で収益を上げ、ドレッドとの対決も即断即決で実行に移した張本人。ゾクゾクしますな~。

見所はいくつかあるけども、一番イカしてる(イカれてる?)と思ったのは機関砲3門で住民ごとジャッジを制圧するシーン。
映画『マトリックス』でもクライマックスでビルが破壊されるほどの銃撃戦に遭遇するが、あれ以上の破壊ぶり。そりゃそうだわな。まるで武装ヘリに搭載するようなガトリングガンでやられるのだから。
さすがのジャッジも死ぬかと思ったわ。

あわやジャッジとなったのは別シーン。
最強の治安要員にぶつけられたのは同じく最強の人たちなのだけど、そこで初めて負傷してしまう。
その治療方法がまた痛々しい。まるでホチキスみたいなの使って傷口ふさぐとか、荒っぽ過ぎるぜ、アンタ。

ラストはギャングボスがビルの一般市民を人質に取った大勝負に打って出てくる。
それに対するジャッジ・ドレッドのとった選択も秀逸。
最後まで観客の期待に応えてくれる男だぜ。

では評価。

キャスティング:6(ルーキー役のオリヴィア・サールビーが美しくも成長していくジャッジを熱演、組織のボス"ママ"役のレナ・ヘディの凶悪ぶりもイケてる)
ストーリー:7(サクサク背景説明、スマートな場面展開が気持ちいい)
映像・演出:7(特殊弾の効果が視覚的にもバッチリわかる/精神ダイブの描写がナイス)
ガンアクション:8(射撃姿勢や特殊弾の使い分け、立ち回りにリアリティ)
男臭さ:8(無駄口叩くくらいなら銃を撃つ、撃たれたらホチキスで止める)

というわけで総合評価は50点満点中36点。

設定がかっちりしてるなと思ったら、原作コミックがあるそうな。道理で。
その雰囲気も味わいつつ、コピー「この男の裁き(ジャッジ)を見届けよ」にのっとって鑑賞するのがオススメ。

永賀だいす樹