真夏の方程式のレビュー・感想・評価
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心に傷が残りすぎです!
テレビ未視聴、原作未読、映画のみのお付き合いです。
安心安定品質のフジテレビ映画、さすがです。冒頭に伏線を張り巡らし、後半からサクサクと回収。小気味よく楽しめました。海の青さも清々しく、暗くベタベタになりかねない話をぐっと引き上げてくれます。豪華キャストの配し方もなかなか。(個人的には、本作含め最近の西田尚美さんの役回りは魅力が生かされず残念な気がしますが…。)久しぶりの白竜さんはハマりすぎでした! 杏の少女時代を演じた子役さんは、本人かと思うほど面影が重なり、びっくりしました。また、彼らの出会いのきっかけとなる環境保護と資源開発の論争、湯川の「グレーの選択」発言が、善悪をすっきり二分できない人間の性、主役一家が抱える秘密のメタファーとなっている点もうまいなあと感じました。
…とはいえ。
観終えた率直な感想は「…ひどい話」。謎解きとしてはよくできていると思いますが、少年に対する仕打ちがひどすぎます。心の傷が心配です。主人公一家はあんなに互いを慎重に思いやっていたのに、親戚の子への配慮がなさ過ぎるのでは?と思いました。実の親も愛情深いとは思えず、彼の将来が心配です。…もしや、そうして彼は科学にのめり込み、第二の湯川博士になる? ひょっとして、再会して擬似親子に? 「そして父になる」につながっていくのか?…などと取り留めない妄想が膨らむのでした。
「そして父になる」の福山さんに会うのが待ち遠しいです。
「ガリレオ」シリーズでは出色の出来
2022年9月にシリーズ最新作「沈黙のパレード」が劇場公開を控えているが、現時点では「ガリレオ」シリーズで、この劇場版第2作「真夏の方程式」が最も完成度の高い作品と個人的には感じている。
東野圭吾氏の原作で、福山雅治が天才物理学者・湯川学を演じる人気シリーズ。湯川の口癖は、「実に面白い」。子ども嫌いで有名だが、今作では10歳の少年・恭平と海辺の町で夏を過ごすことになり、事件に巻き込まれていく姿を描く。この恭平との触れ合いが、今までのシリーズでは見たことのない表情を垣間見ることができる。
また、レギュラー陣ともいえる吉高由里子や北村一輝も観る者の目を楽しませてくれるが、今作では杏の芝居が素晴らしいことも特筆しておく。
【78.3】真夏の方程式 映画レビュー
本作は、殺人事件の謎解きを主軸に据えながらも、環境問題、世代間の責任、子供と大人の倫理観、そして主人公・湯川学の人間的成長という、複数のテーマを緻密に絡ませることで、作品に奥行きをもたらそうとしている。湯川が子供嫌いという設定から、少年・恭平との出会いを通じて彼の内面に変化が訪れる過程は、キャラクターに新たな魅力を付与し、シリーズに新鮮な息吹を吹き込んだ。
これらのテーマはそれぞれに意義深く、現代社会が抱える問題意識を巧みに取り込んでいる。特に、美しい自然の中で起きる悲劇が、環境保護の重要性を静かに訴えかける点は特筆すべきだ。しかし、これら多様なテーマを一つの物語の中で高い密度で融合させ、強烈な求心力を持たせることには、若干の課題を残した感がある。各要素が丁寧ではあるものの、観客に与える感情的な衝撃や、心に深く刻まれるメッセージの強度という点では、見る者によっては物足りなさを感じる可能性も孕んでいる。物語全体に緩やかに流れる情感は魅力的だが、それが時にミステリーとしての緊迫感を薄める結果にも繋がりうる。
西谷弘監督の演出は、過剰なドラマティックさを排し、静謐な映像美と抑制の効いた語り口が特徴である。舞台となる玻璃ヶ浦の雄大で美しい自然は、単なる背景に留まらず、物語の重要な一部として機能する。その景観は、時に事件の悲劇性を際立たせ、時に登場人物たちの心の揺れ動きを象徴的に描き出す。光と影の使い方は巧みであり、登場人物たちの内面を繊細に映し出す。
演出は、感情を直接的に爆発させるよりも、登場人物たちの細やかな表情や仕草、そして間の使い方によって、彼らの内面や葛藤を表現することに重点を置いている。これにより、観客は登場人物たちの心情を深く考察し、共感する余地を与えられる。しかし、その抑制されたアプローチが、ミステリーとしてのサスペンスフルな展開や、物語の推進力を一部において緩やかに感じさせる側面も否定できない。
福山雅治は、これまでにも増して湯川学の人間的な側面を深く掘り下げた。科学者としての冷静沈着さと、子供との交流を通じて芽生える戸惑いや微かな感情の揺れ動きを、非常に繊細かつ説得力のある演技で表現している。特に、子供の純粋な疑問に直面した際の表情の変化や、科学では割り切れない感情との対峙は、湯川というキャラクターに新たな深みを与え、観客に強い印象を残した。
吉高由里子演じる岸谷美砂は、湯川とは対照的な、直情的で人間味あふれる刑事として、物語に軽妙なリズムと緩急をもたらした。彼女の奔放さと、時に見せる真摯な表情が、湯川との絶妙な掛け合いを生み出し、作品全体のトーンに幅を与えている。物語における彼女の存在は、観客にとっての感情的な案内役としても機能した。
北村一輝が演じる草薙俊平は、湯川学の旧友として、物語に安定感と人間的な深みを与えている。湯川の天才性を理解しつつも、事件や人情に対する独自の視点を持つ彼の存在は、物語に多角的な視点をもたらし、湯川の行動や思考に対する観客の理解を促した。抑制された演技の中に、長年の友情と職務への誠実さがにじみ出ていた。
杏が演じる川畑成実は、物語の核心に深く関わるキャラクターとして、その複雑な内面を丁寧に表現した。過去の秘密と現在の苦悩を抱えながら生きる女性の葛藤を、表面的な強さの裏に隠された脆さや悲しみとして巧みに演じている。特に、事件の真相が明らかになるにつれて見せる、感情の細やかな変化は、観客に深い共感を呼び、物語の悲劇性をより一層際立たせた。
脚本は、東野圭吾の原作が持つ緻密なプロットを映像作品として丁寧に再構築している。殺人事件の謎解きに加え、複雑に絡み合う人間関係、そして過去の出来事が現在の事件にどう影響しているかという点が、段階的に明らかになる構成は見事だ。環境問題が単なる背景としてではなく、事件の動機や登場人物の行動原理に深く関わってくる点は、現代社会への鋭い眼差しを感じさせる。
物語は、単なる犯人探しに留まらず、法では裁ききれない人間の感情、そして世代間で受け継がれる責任と苦悩という、普遍的なテーマを観客に問いかける。特に、物語の終盤で明らかになる真実と、それに対する湯川の葛藤や決断は、観客に深い倫理的な考察を促す。しかし、ミステリーとしての「トリックの鮮やかさ」や「意外性」という点では、比較的現実的な範疇に収まっており、観客に与える衝撃の度合いは、物語の情感的な深さに比べると控えめである。
映像は、玻璃ヶ浦の美しい自然を雄大に捉え、物語の叙情性と、事件の陰鬱さを対比させる効果を巧みに生み出している。特に、海底資源の開発と自然保護というテーマを視覚的に表現するため、広大な海と空、そして開発によって傷つけられる自然の対比が印象的だ。美術は、事件現場のリアリティと、登場人物たちの生活空間のディテールにこだわり、物語の世界観を構築している。衣装は、キャラクターの個性を反映しつつ、物語のトーンに合わせた抑制された色使いがなされており、俳優たちの演技を妨げることなく、彼らの内面を補完する役割を果たした。これらの要素が一体となり、物語の空気感を豊かに表現している。
編集は、物語のテンポと緊張感を巧みにコントロールしている。ミステリーとしての謎解きの過程は、テンポの良いカット割りと的確な情報提示によって、観客を飽きさせないよう配慮されている。一方で、登場人物たちの心情描写や、人間ドラマの重要な局面では、ゆったりとした時間をかけることで、感情の機微を丁寧に描き出した。過去の回想シーンと現在の出来事がシームレスに繋がっており、物語の複雑な構成を分かりやすく提示している点は評価できる。全体の進行は決して急がず、観客に思考と感情が浸透する時間を与えている。
作曲家・菅野祐悟による音楽は、物語の情感を豊かに彩り、緊張感と感動を効果的に増幅させている。ミステリーとしてのサスペンスフルな楽曲から、人間ドラマの繊細な感情を表現するメロディーまで、幅広い音色が物語に深みを与えている。特に、感動的なシーンでのストリングスの使い方や、湯川学の思索を描く際の静謐なピアノの旋律は印象的だ。音響は、海の音や風の音など、自然の音が効果的に用いられ、物語の舞台である玻璃ヶ浦の臨場感を高めた。また、事件の緊迫感を演出する効果音も適切に配置され、観客の没入感を深めた。主題歌である福山雅治の「恋の魔力」は、映画の世界観に寄り添いつつも、観客に強い印象を残す、力強くも切ない楽曲であり、物語の余韻を深める役割を果たしている。
「真夏の方程式」は、科学ミステリーの枠を超え、人間ドラマと社会問題を深く掘り下げようと試みた挑戦的な作品である。湯川学の新たな一面を描き、普遍的なテーマを内包することで、シリーズに多様性をもたらした。ミステリーとしての衝撃度においては抑制的であるものの、その分、静かな感動と深い思索を観客に促す力を持っている。シリーズ作品としてだけでなく、独立した一本の映画として、鑑賞に値する良質な作品であると言えるだろう。
作品
監督 (作品の完成度) 西谷弘 109.5×0.715 78.3
①脚本、脚色 原作 東野圭吾 脚本 福田靖 B+7.5×7
②主演 福山雅治B8×3
③助演 杏 B8×1
④撮影、視覚効果 柳島克己 A9×1
⑤ 美術、衣装デザイン 清水剛 B8×1
⑥編集 山本正明
⑦作曲、歌曲 菅野祐悟 福山雅治 B8×1
重苦しい
前作との共通点が驚くほど多い。
母娘に絡む、情のない被害者。(心情的には犯人に同情してしまう)
それをかばって守ってあげようとする共犯者。
真犯人は、心に傷を負ったまま真相を隠し続ける。
それを隠すために、第2の殺人が起こる。
湯川学だけが真相にたどり着き、悲しい謎解きをする。
それにしても、TVシリーズでは科学実験でトリックの再現をして謎解きをする湯川教授が、映画ではなぜか人情味のある探偵になってしまうのがいただけません。
教授らしいことと言えば、前半のアセスメントのコメントと、子供にペットボトルロケットの実験をさせるところ位で、謎解きはどちらかと言えば、動機や、情のもつれを紐解いたものでした。
物理学者がたどり着けるような推理ではありませんでしたね。
なにしろ、重苦しい雰囲気で、娯楽性に乏しい内容でした。
ハカセ(湯川)の言動を楽しむ
圭吾の方程式 : 東野圭吾=切ない x 期待を裏切らない
2022 165本目
真相を探らせまいとする無理
夏休みの科学実験
ガリレオ新作の予習2。
前作の「容疑者Xの献身」と比べれば、そりゃ色々と納得いかない部分があるし、面白みにも欠ける。けど、単体作品として見れば上出来だし、やっぱり面白い。ガリレオというシリーズが長年に渡って愛される理由がわかる。
ドラマ版ガリレオは、吉高ガリレオしか見ていなかったため、正直柴咲ガリレオより馴染みがあってか好き。この不器用で頼りないけど、助けたくなる感じは柴咲コウよりも吉高由里子の方があるかと。湯川先生とも息の根が合っている気がするし。
子どもが苦手な湯川先生が子どもと関わりを持ち、様々な科学を教えるのは、見ているこっちも楽しいし微笑ましい。やはり、ストーリー展開はお見事で非常に楽しめました。前作のベストアクターは堤真一でしたが、本作は風吹ジュン。どの作品でもいい味を出す、大好きな女優のひとりです。女将が似合うこと似合うこと。
トリックも良くて、相も変わらず見応えのあるものではあるのだけど、あまり湯川先生に関係しなくないか?物理じゃなくないか?と感じてしまった。前作に比べるとやはり弱いし、レベルが低いかな。海を見せるシーンや終わりはとても良かったんだけどね。
10年近く前ということもあってか、海があまり美しく見えないのも気になったし、冒頭もあまり引き込まれない。少々納得のいかない部分はあるのだけど、やっぱりガリレオというシリーズは安定して面白く、身を委ねられる。あと、この頃の福山雅治が一番カッコイイ。とても40代とは思えない。もう50代っていうのも信じらんないくらい、今なお綺麗で演技力と歌唱力がずば抜けた天才です。(ベタ褒め)
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