「解いてしまったからには。」真夏の方程式 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
解いてしまったからには。
タイトルにある、この真夏の方程式をどこで書くのだろうと
思って待っていたのだが、今回はまったく出てこなかった。
テレビシリーズではお約束の、解決前の湯川の数式披露!
アレ?映画版だからか…?とも思ったんだけど(原作未読)
よく考えたら、そういうテーマじゃなかったことに気付く。
解いちゃいけなかったんだ…まぁ解けちゃったんだけど^^;
湯川が真相に近づけば近づくほど、傷つく人間が増えて、
果てはある人物の人生を懸けた行為が無になってしまうかも
しれない事実や、第三者である無垢な少年を巻き込む可能性
まで出てきたりと、いつも強気の湯川も今回ばっかりは…。
話としてはとてもよく出来ている。
登場人物総て、彼らが抱える秘密、それに絡む残酷な真実。
二時間の中に巧く纏め上げ、最後までじっくりと描いた。
前作「容疑者Xの献身」も、非常に哀しい物語だったが、
今回もそれに負けていない。冒頭に描かれる母娘二人の
秘密?が一体何なのか、これが暴かれる中盤~後半あたりで
再度冒頭の場面が映し出される。そういうことだったのか…。
ハッキリ言ってしまうと、事件にあまり意外性はない。
この軸となる家族が抱える哀しい秘密→真実までの道のりは
観客の予想を大きく裏切ることはない。
私は途中でほぼ犯人が分かったし、そこに何らかの理由がある
こともだいたいは見てとれた。
よくある話とはいえ、巻き込まれる子供の未来を予測したなら
大人達の身勝手な選択が選ばせた代償は大きい。
さらに子供の未来に拘るなら、
今作が面白いのは、湯川と絡む少年の存在に他ならない。
冒頭~延々と湯川の行動に絡んで来るこの少年の、愛らしさに
加えて洞察力の鋭さ、ちょっとリトル湯川みたいな^^;単純には
片づけられない子供ならではの超感性というか、そこを湯川が
巧く掬った結果が、親族の事件に加担してしまったことに気付く
少年の今後をさらに不安にさせていく。
解いてはいけないものを解いてしまった代償が、今度はこっち
にまで及んでくるわけだ…。うむむ、湯川先生、大ピンチ。。
な~んにも気付いていない呑気な少年の父親のように、
私たち親は子供の本質(何を考え悩んでいるのか)が見えていない、
そこのところが非常に自分の胸を突いてきて仕方がなかった。
では湯川は、そこのところの決着をどう図り事件を締め括ったか。
なかなか味わい深い(やはり人情編)仕上がりになっている。
まぁ…どんな事情があるにせよ、罪は罪であることは変わらない。
様々な事情を抱えて生きるからこそ、判断を見誤ると危ない。
それぞれが複雑な想いを遺しつつ、美しい景色で幕は閉じる…。
(海底ロケットは良かったなぁ。あんな自由研究、高度過ぎるよね^^;)