「物事の表裏、そして、愛」真夏の方程式 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
物事の表裏、そして、愛
"土曜プレミアム" で鑑賞(地上波初放送)。
原作は読了済み。
原作は高校3年生の時に読んだ。発売日に購入して受験勉強そっちのけで読み、3日で読破した(当時の私にちゃんと勉強せんかいと言いたい)。
本作も前作と同様、テレビシリーズとは一味違う静謐さを漂わせながらストーリーが進行する。湯川が謎を解けた時に数式を書くシーンは無い。
玻璃ヶ浦の海を守ろうとする住民と、資源採掘を計画する企業との対立が縦軸として描かれる。科学技術の発展の陰で、自然が壊されてしまう。文明の発展と切り離せない問題に考えさせられた。この問題に対する湯川の意見が描かれていて、推理機械とは違う人間的な面を垣間見れて嬉しい。
また、こんな一面も。蕁麻疹が出るほど子供嫌いな湯川が少年と過ごす姿が微笑ましい。恭平といる時は何故か蕁麻疹が出ない。おそらく理論的な子供だからだろう。恭平に科学の面白さを教えようとペットボトル・ロケットを使った実験を提案したりもする。こんなにワクワクする自由研究なら、夏休みの宿題も楽しくやれただろうなと思った。
湯川は恭平に、科学が齎す光と影を教えた。それは、玻璃ヶ浦の海を巡る問題にも繋がり、果ては物事には裏と表があると観る者に気づかせ、事件の悲しい真相ともさりげなくリンクしていく。本作の主題は「表裏」なのかもしれないと感じた。
事件の裏に秘められた関係者たちの人生の秘密と罪と罰、計り知れない愛の物語が心に深く突き刺さる。大切なものを守るために罪を犯し、それを心の内に秘めて生きて来た人たちがいる。俳優陣の熱演が胸に染み渡るような切なさを齎す。庶民的な役が似合う前田吟と風吹ジュンをキャスティング出来た時点で、本作は成功したと言えるだろう。単なるミステリーのままでは終わらない重厚でエモーショナルな人間ドラマが「ガリレオ」の劇場版シリーズの持ち味であり、大きな魅力だと、改めて感じた。
[鑑賞記録]
2014/06/21:土曜プレミアム(地上波初放送)
2016/03/26:土曜プレミアム
2017/? ?/? ?:Blu-ray
2020/03/15:WOWOWシネマ
2020/09/19:WOWOWシネマ
2021/07/23:Blu-ray
2025/10/04:土曜プレミアム
*修正(2025/10/04)
