「日本映画としては物足りない」KILLERS キラーズ いためしさんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画としては物足りない
北村一輝主演のKILLERS/キラーズ、舞台挨拶+試写会に参加。
『悪の教典』のようにバッタバッタ殺すわけではないが、前触れ通りに残酷なシーンも多い。
たしかにこの映画も恐怖はあるが、それは『ホステル』の恐怖でもなく、『悪の教典』の恐怖でもない。
野村(=北村一輝)が処刑の光景をネットに上げる行動が東京とジャカルタを繋ぎあわせる「鍵」なのだが、野村がそこに至る経緯の説明が若干不足していた様に感じた。作中に「一番最初は偶然、でも次からはうまくいかない」と説明してることから、偶発的だったものと考えられるが、発端をもう少し意識して欲しかった。
おそらく姉の死が引き金になっているように思えたが、もう少し分かりやすくても良かったと思える。
作中親しくなる女性が弟を殺そうとしていたことから、野村は彼女の殺人鬼としての素質を感じるようになる。次第に亡き姉を投影してしまい、自閉症の弟を姉を守るように攻撃的な性格につくり上げる。
自分が守れなかった姉を守れるようにしたかったように感じられた。
野村も幼少期は同じような障害(=サイコパス)を持っていたのかもしれない。
終盤のジャカルタに集結する部分も親子愛による奪還を描きたかったのだろうが、ニーアム・ニーソン主演の『96時間/Taken』のような目新しさは感じられなかった。
ラストシーンに「鍵」が再登場するのだが、「鍵」はインターネット普及によるエジプトのジャスミン革命を背景にするとともに、誰でも殺人鬼になりうるということを示唆していたように感じられた。
時より、「ここ笑わせに来てるの?」というシーンもあったがシリアスな映画なので反応がし辛い。
また、中盤から終盤かけての都合が良すぎる展開にうんざり。絶対尺足りなくなったよね。
殺害シーンを幻想的にさせるためにクラシックを流す、ってのもさすがに陳腐すぎてちょっと残念。ここで新しい切り口を見せられれば猟奇映画としても大成功だと思えた。惜しい。
日本映画としては少し物足りないが、インドネシア映画としてはこんなものか。と感じてしまった。2人の主人公に感情移入もしづらく(猟奇物なので当たり前だが)この映画の伝えたいことが表現しきれてない。
それでも北村一輝の演技力の高さはこの映画で十二分に伝わる。