「父親の反対を押し切るのは命がけ」箱入り息子の恋 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
父親の反対を押し切るのは命がけ
『箱入り息子の恋』(2013)
星野源と言えば、若いのに脳疾患になってしまったあたりから認識したが、復帰後、ヒット曲を連発し、テレビドラマでさらにブレイクした、蓄積はあったからだろうが、急激に知名度が高まった人だと思うが、この映画は2013年。脳疾患になってしまった頃か、社会的にもそう目立つ頃では無かっただろうし、この映画の役柄が酒タバコもギャンブルもせず、役場の記録課で13年。ひたすら貯蓄に励み、女性交際も飲みにもいかないという役柄。カエルがペット。黒縁の四角い眼鏡をかけているから、地味に地味。その後、草食系というような言われ方もしたかも知れないが、そうした人物は実際にもいるだろうし、そうした息子への両親(平泉成、森山良子)の心配から、代理見合いというのか、親同士が会って子供の見合い相手を探して来るというのをして、息子(星野源)は盲目の娘(夏帆)と見合いする。娘の父(大杉漣)は地味でやる気がないと思うような息子が気に食わなくて、見合いの席でも息子を批判し通して、息子の母は頭に来て出て行こうとするが、息子は冷静に、娘の気持ちはどうなのかを相手の父に語る。芯があるじゃないかと思わせるが、帰宅後に自分の部屋を怒りで滅茶苦茶にして泣くシーンは凄まじい。星野源の当時の病気と、この映画の撮影の兼ね合いはどうだったのだろう。下手をすると遺作になってしまったかも知れないのに。その後ブレイクしてしまったというのに。しかし娘の母親(黒木瞳)の配慮で、不器用な男と目の見えない女は初デートをする。女は目が見えないから、エスコ―トするのだが、いちいち遠くの車で待つ娘の母親に、手をつないでいいかと食事に行くのを伝えて了承を得てから行く。しかも食事の場所は吉野家だ。不器用な男が目の見えない女へのエスコートがぎこちないがほほえましく、牛丼が食べたくなる。男は立ち食いそばやにも女を連れていったりする。電話したり。楽しそうな二人である。調べたら夏帆は『ピンクとグレー』のヒロインらしく、一度観たはずなのだが思い出せず、この映画で認識するかも知れないが、目の不自由な役柄で難しい役柄だと思う。遠くの車からそれを見守る母親。男は勇気を出してプロポーズした後で、キスシーンとなるが、これも不器用に初々しいシーンなのだが、結婚を目指すとは言え、開きすぎるほど開いた日本社会の現状ではこうした事にもなるだろうか。母親はにこやかにみていた。ともかく、受けたこともない昇進試験を男は女のために受けることにさえする。見合い以前に、雨の中で偶然に男が女に傘を渡して去るシーンがあった。母娘はそれを見たり、声でわかっていたり、そういうこともあった。こうした純愛への経過を生きる男女がある一方で、とんねるずの石橋貴明の娘が、役場の後輩なのだが、酒に酔って、歩道橋の上だったか、「あたしがヤリマンなら、あの女も男もみんなヤリマーン」と叫ぶシーンがあるが、そうした浮遊した恋愛事情を風刺した場面かも知れない。しかし、女性のほうも了承したというか、女性のほうも望んだのだが、もっと知りたいというので、ホテルに行ってしまう。
こうした婚外交渉を不器用な男女でみせて良いのかという疑問を持つのだが、二人は結婚するつもりのケースではある。しかし婚外交渉をして別れてしまうケースも多々あると思われ、婚外交渉を含める映画は私は価値は落としたいと思う。それを美しくみせようとするのは二重に悪質な気もする。だが、母娘と息子は楽しくデートして過ごすが、父親に見つかる。そこで息子は地面に土下座する。娘も地面にひざまずく。これはもう地味でおとなしい男と違う迫力だったが、父親はわからづやで息子を突き飛ばして、母親に頬をはられる。母親が父親に陰でこそこそしているのはあなたじゃありませんかと揉める。そうしたら娘が来た車に轢かれそうになるのを男はかばい車に轢かれて、男の大量の血が頭から出るのだが、星野源にしてみれば、脳疾患していた頃かも知れず、本当に、運命の不思議を感じる作品かも知れない。病院に渋滞の娘と両親が見舞いに行くと、今度は、息子の母親のほうが、「あなた耳まで悪いの」と娘に辛辣な言葉をかけてしまう。娘は泣きだし、両親は部屋から娘を連れ出す。こうした悲劇になる前に婚外性交してしまうのは、やはり危険だと思わせる。だが二人の恋愛は本当で、娘が部屋の外で雨に濡れるシーンはそれを語る。娘の母親は二人を結び付けたいが、父親はこれで終わりにするときかない。男は助かる。車いすで女に電話するが、繋がらない。一体どういう結末になるんだろう。息子はまたゲームをしていて、父親が「また、元のあいつに戻っちまったな」と言い、息子のほうの父親は理解があるが、息子の母親のほうが、娘の父親同様に、子供を構ってしまうのだった。この映画では、子供同士だけではなくて、
それぞれの両親に起きる確執も描いた。自暴自棄が諦めになったようなところを、石橋貴明の娘が演ずる後輩が、諦めるんじゃないとはっぱをかけ、男は雨の中、松葉杖がすべり、大の字で塗れたりするが、体調に重ねて、一人の異性との出会いはそこまで大きく、杖がとれたところで時間の経過が表されるが、偶然、一人で杖をついて歩いている彼女を見つけ、後ろをつける。彼女は一人で吉野家に入る。それを男は見る。男も離れた向かい側に座り、同じものを頼む。声を出さずにメニューを指さして注文する。ここはなんだか泣けてくるシーンである。女は牛丼を食べているうちに泣いてしまう。泣きながら牛丼を食べる。両端の男性が声をかけないのも変な展開だが、
向かい側の男もつられて泣いてしまい声を上げてしまう。こんな偶然はドラマでないとあり得ない確率は相当高いのだろうが、泣いているうちに牛丼屋で彼女の名前を叫んでしまうが、そこで客は誰もが驚いてみる。既に彼女は牛丼屋を出た後だった。そして、父親が迎えに来てしまった。午後の役場でも感情が爆発してしまった男は、役場内で叫んでしまう。そして上司に、13年間真面目に勤務してきたが、とても大切な用事が出来たため早退させてくださいと言って職場を飛び出す。これも仕事とは何か、パートナーとは何かを考えてしまう。男は走り、全力で走り、叫びながら走り、フェンスをよじ登り、あたりは夜になってしまっていたが、彼女の家へとやってきた。倒れてワイシャツは土だらけ。汗だく。すごい映画になってしまうのだが、彼は柱をよじ登ろうとし、彼女の部屋の2階に行こうとする。怖い映画になってしまった。よじ登ったまま、以前デートで披露したカエルの鳴きまねをすると、彼女は窓を開けてベランダに出る。彼女は目が見えないが、カエルの鳴き声の音のほうに行く。この2階へのよじ登りで彼女が手を差し伸べ、引っ張り上げるシーンは異常なのだが、すごいことに2階に到達する。男は体力の限界を突破したこともあり、恍惚の表情を浮かべ、このシーンもどうかと思うが、二人が性行為するシーンとなる。なんだかわからない野生の展開になってしまうが、喜び合う二人に娘の両親は「なにか笑い声が聞こえなかったか」と振り向く。こんなにこじれてしまったのは、娘の父と息子の母のせいでもあるのだが、全裸で立ち上がった息子に父親は暴行を振るう。ここまでして父親は反対するのか。男はそれでも全裸で立ち上がる。後ろ向きなのでチ〇ポは見えない。ところが、一瞬の感覚の違いで、女と手が繋げられず、男は1階に自ら転落してしまった。男はまたしても死なず、再入院していた。このかなり危険な命がけのアプローチに、娘の父親も、息子の母親も折れたのだろう。男が入院先で打った点字の手紙をなぞり、女は微笑む。とにかく奨励しないが、婚外交渉するくらいの相手とは命がけになるものだろう。希望は残した作品としておこう。