「スピルバーグが描いたリンカーン大統領の素顔」リンカーン 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグが描いたリンカーン大統領の素顔
(奴隷解放の修正案を通すためには、
議員の多数派工作が必須!!だった)
リンカーン大統領が修正案を通すために如何に苦労したかが、
中心に描かれた映画です。
勿論そこからリンカーンの素顔がありありと浮かぶから、
素晴らしい演出なのですが、一般的な伝記映画とは、
一線を画す様式です。
2012年(アメリカ)監督:スティーブン・スピルバーグ。
1865年には、アメリカの議会民主主議は、
既に現在と同じ完成形を成していた。
その事を、知る映画でした。
ポリティカル・サスペンス的映画。
興味深く面白かったです。
1865年でもう既に「ロビイスト」がいて、票集めは、金による買収ではなくて、
ポスト(地位や役職)だった。
口利きのようなものですね。
郵便局長とか税務官とか、失職しても食べるのに困らないようなポスト。
一時金(買収)より、長期に渡って収入が約束される職種です。
南北戦争が4年も続くなか、エイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)は、
再選されて2ヶ月。
リンカーンの悲願は、奴隷制度廃止を盛り込んだ、
「アメリカ合衆国憲法法修正第13条」
これを通過させて成立する事。
これが奴隷解放に繋がるのです。
リンカーンの共和党だけでは「修正第13条」を可決するには、
3分の2に20票足りないのです。
正義の人「リンカーン大統領」でも、すら、ですよ・・・
議会の多数派工作に本当に苦労したのですね。
この映画は奴隷解放に繋がる修正案を可決する一点に
特化した作品に見えます。
しかし、リンカーンの人となり、妻の人となり→
つまり家庭人リンカーンがくっきりと浮かんでくる
優れた人物伝でもあります。
有名人の悪妻としての呼び声の高いメアリー(サリー・フィールド)と、
リンカーンが並ぶ肖像写真を見ると
ダニエル・デイ=ルイスとサリー・フィールドが、
ご本人たちとあまりにも似ているのに驚かされます。
リンカーンの身長は公称193センチの偉丈夫です。
ダニエル・デイ=ルイスは187センチなのでまあまあほぼ同じとしましょう。
妻役サリー・フィールドは159センチ。
ずんぐりむっくりのふくれっ面、太っててコロンと小さいところまで、
そっくり。
長男のジョセフ・ゴードン=レビットは、
小柄で176センチです。
リンカーンの大きさを目立つようにキャスティングされてますね。
そして悪妻メアリー。
大変なあげまんで、リンカーンが合衆国大統領になる事を、
至極当然だと確信して、
社交面で後押し、「奴隷制度肯定派」だったリンカーンを、
「奴隷制度廃止派」に
変えるほど、世相や世論を読み切った才女だそうです。
時には熱いコーヒーをぶっかけるほどの、癇癪を起こすDV妻だったとは、
まったく驚きですね。
この映画を観ると、1865年当時とアメリカの議会民主主義が、
150年を経て格段に進歩したとはとても思えないのです。
エイブラハム・リンカーンという巨人を
いとも容易く暗殺して葬り去る国ですから。
議会民主主義の以前に、
人命の尊重をお願いしたいものです。
(と書いて、日本でも暗殺事件が起こり、他人事ではないのでした)
ダニエル・デイ=ルイスはこういう昔の人似合いますね。スピルバーグの冒頭の説明は説教くさくて余計でした。でも名作ですね。日本史、地理が受験選択でしたので詳しくはないですが【レビューはあげてませんすみません】