「堕落とは」戦争と一人の女 シンさんの映画レビュー(感想・評価)
堕落とは
「堕落」とは人間から自由を奪い、身体・こころを管理しようとする者からの「距離」のことか。国家・天皇を上位・上方と位置付け国民の視線・精神をそこへ収奪する。その構図にまれに感知してしまった個人がその追っ手から逃れる先は下方しかあるまい。「堕落」するのである。横は無いのか。人間は地に縛り付けられて生きる。戦前・戦中ならなおさら移動(海外渡航・国籍の変更)の自由は制度的にも経済的にもかなり制限されていたであろう。一般庶民に横への逃亡は不可能であったに違いない。自由である為に唯一残された道が堕ちる事だと安吾は言ったのか。
しかし物理的落下が人間に死をもたらすのと同様、「堕ちる」ことは個人にとって限りない死への接近でもある。意志して堕ちるとは命がけなのだ。
今この時代に作られた事の意味は大きいと思う。製作陣の気概をひしひしと感じた。
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