劇場公開日 1958年12月28日

「三悪人とは果たして」隠し砦の三悪人 ぶっちさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0三悪人とは果たして

2025年5月4日
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又七と太平の口ゲンカで幕を開け、同じく二人が仲良くトボトボ家路に就く姿で終わる。この映画の主人公は真壁六郎太ではなく、まるでこの二人のようだ。
明治生まれの藤原釜足が大正生まれの三船敏郎を劇中では「兄貴」と呼ぶ。千秋実も三船より年上だが、そう呼ぶ。映画の中でも二人のほうがもちろん年上に見える。
しかし強い者がやっぱり“兄貴”なのだ。それは戦国の世だけではなく、いまでも変わらない。お調子者は実力者に胡麻を擂り、媚を売り、保身を図る。弱い者はそうやって生き延びてゆく。
しかもこの二人は、自分の都合でお互い手を組んだり陥れたりしようとする。腹の中では何を考えているかわかったものではない。黄金を見たら欲が沸き、もっと、もっとと手に入れたがる。こうやって人は投資詐欺に引っ掛かっていく。まったく今と変わらない。監督は四百年前の現代を描いている。いや、映画自体が七十年近く前のものだ。まことにもって恐れ入る次第だ。
一方で、忠義に徹する六郎太がいる。気高い矜持の姫がいる。男の友情に生きる田所兵衛がいる。下女も姫を守ろうとする。
対照的な人物配置と緊迫した脱出ストーリーで、巧みに長丁場を持たせようとする。この映画はロードムービーに分類されるという。
捕虜たちが大脱走を試みる一大スペクタルシーン。火祭りで踊るシーンも圧巻だ。六郎太が馬上で二人も敵兵を斬り落とす有名なシーンは何度観てもわくわくする。又七と太平のコンビネーションは後に『スターウォーズ』でロボットコンビとして世界に進出することにもなる……。
文字通り日本を代表する痛快時代劇だ。

ぶっち
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