劇場公開日 2013年1月12日

  • 予告編を見る

LOOPER ルーパー : 映画評論・批評

2013年1月8日更新

2013年1月12日より丸の内ルーブルほかにてロードショー

過去に呪われ、未来に呪われる。ゲーム感覚にとどまらぬ底冷えが忍び寄る

<未来に追われ、過去にとり憑かれる>――「LOOPER ルーパー」が全米公開されたときの惹句だ。いい線を行っている、と私は思った。大げさでも、もの欲しげでもない。映画が始まって間もなく、この惹句はリアルに立ち上がる。

最初の舞台は、2044年のカンザス州だ。そこへ突然、男が飛び出す。縛られて、顔に袋をかぶせられた男だ。男は瞬時に射殺される。

殺された男は、2074年の未来社会から送り込まれてきた。未来社会ではタイムトラベルが発明されている。犯罪組織はひそかにこの技術を用いて邪魔者を30年前に送り返し、そこで殺し屋に始末させる。

説明が長くなった。話の前提を押えてもらいたかったからだ。腕利きの殺し屋ジョー(ジョセフ・ゴードン=レビット)も、この習慣に親しんでいる。だがある日、30年後のジョー(ブルース・ウィリス)が眼前に出現する。さあ、どうするか。運命を甘受してループを閉じるか。それともオールド・ジョーに自由を与えるか。話は、急速にギアを上げる。

オールド・ジョーは、ヤング・ジョーの延長線上にいる。だがふたりは、別々の夢を見ている。オールド・ジョーは特別の意図を持って2044年に乗り込んできた。ヤング・ジョーは迷う。話はよじれる。ふたりの話だけでも十分にややこしいのに、「ブリキの太鼓」のオスカルを思わせる少年まで登場して、物語を重層的にする。監督のライアン・ジョンソンは、殺し屋という存在の危うさを描くだけでは満足していない。未来社会のディストピア的な要素をえぐるだけでも不十分と考えている。彼は観客の大脳とハートの両方に、強烈な幻覚剤を射ち込もうとする。かなり大胆だ。そうか、と観客も気づく。もしかすると人はみな、過去に呪われ、未来に呪われているのではないか。ゲーム感覚やただの才気にとどまらぬ底冷えが、足もとに忍び寄る。

芝山幹郎

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「LOOPER ルーパー」の作品トップへ