「イモータン・フォレストを讃えよ! V8!V8!」欲望のバージニア たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
イモータン・フォレストを讃えよ! V8!V8!
禁酒法時代のバージニア州フランクリン群を舞台に、密造酒の売人であるボンデュラント三兄弟と悪徳取締官レイクスとの血で血を洗う抗争を描いた、実話を基にしたクライム・サスペンス。
主人公である三兄弟の末っ子、ジャック・ボンデュラントを演じるのは、『トランスフォーマー』シリーズや『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のシャイア・ラブーフ。
三兄弟の次男、「不滅」の異名を持つ男フォレスト・ボンデュラントを演じるのは、『インセプション』『ダークナイト ライジング』のトム・ハーディ,CBE。
新任の禁酒法取締官チャーリー・レイクスを演じるのは『メメント』『英国王のスピーチ』の、名優ガイ・ピアース。
シカゴから来た謎の美女マギーを演じるのは『ヘルプ』『ゼロ・ダーク・サーティ』の、名優ジェシカ・チャステイン。
ジャックが想いを寄せる町の説教者の娘、バーサを演じるのは『アリス・イン・ワンダーランド』『永遠の僕たち』のミア・ワシコウスカ。
ジャックの友人で三兄弟の協力者、クリケットを演じるのは『リンカーン』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』のデイン・デハーン。
フランクリン群を牛耳るマフィアのボス、フロイド・バナーを演じるのは『レオン』『ハリー・ポッター』シリーズの、名優ゲイリー・オールドマン。
本作の原作を書いたのはマット・ボンデュラントさん。
彼は本作の主人公ジャック・ボンデュラントのお孫さん。
お爺さんから聞いた昔話があまりに面白かったため、小説にして出版したら、あれよあれよといううちに大ヒット。そして映画化という運びになったわけです。
…爺さんの昔話なんて、100%盛ってるよなぁ。いやまぁそれは良いんだけど。
時代は1931年。アメリカは禁酒法時代の真っ只中。
この禁酒法、1920〜1933年という14年間しか施行されなかった法律ではあるが、今でも世紀の悪法としてその名が歴史に刻まれている。
現代でも「禁酒法って最高じゃん。酔っ払いは減るし、嫌な飲み会も無くなるし。」と考える人は居るだろう。自分もちょっとそう思う。
しかしこれが大きな間違い。
まず、当然ながら醸造や酒場関係の職についている人は失業してしまう。
さらに、アメリカ政府の大きな財源であった酒税による税収も無くなってしまう。
さらにさらに、正規の取扱がなくなれば、当然アンダーグラウンドの人間たちがその代わりにお酒の製造・販売を始める。その結果、アル・カポネなどのマフィアはより大きな力を持ち始める。
さらにさらにさらに、余りにも手広く闇商売が行われているので、取り締まることがなかなか出来ない。そのため、一般市民もどんどん禁酒法を破り、結果として人々の中にある法の遵守意識が薄まってしまう。
これらに加え、粗悪な酒が出回ったことによる健康被害も当然あったことだろう。
禁酒法による負のスパイラルはアメリカ国内に暗い影を落とす。
そして1929年、世界恐慌が始まってしまいもうアメリカ国内は無茶苦茶。禁酒法への不満の高鳴りはついにピークを迎え、ニューディール政策でお馴染みのフランクリン・ルーズベルトが、1933年に大統領に就任すると同時に禁酒法の廃止を決定した。
本作の主人公であるボンデュラント兄弟も、敵対するチャーリー・レイクス特別補佐官も、禁酒法を逆手にとって金稼ぎをしているという点では同じ穴の狢。
善と悪とのぶつかり合いではなく、原題『Lawless』が示すとおり「無法者」同士が鎬を削るというのが本作の魅力である。
因みに、本作の舞台であるバージニア州フランクリン群は「世界の密造酒首都」という不名誉な別名を持っている。
したがって邦題をつけるなら「バージニア」ではなく「フランクリン」をフィーチャーして欲しいところ。どうせつけるのなら『欲望のフランクリン』の方が正しい。
個人的に20世紀初頭のアメリカの感じ、文明が開拓時代を過去に追いやろうとしているという時代感が大好きなので、本作は大変楽しめた💕
西部劇風のファッションもクールだし、マフィアがトンプソンをぶっ放すところも堪らない!
カントリー&ウェスタンをメインに据えた劇伴も最高にカッコいい。レジェンド・ミュージシャンの1人、ニック・ケイヴは最高の仕事をしてくれている。
キャストも最高!
ひ弱オーラ全開なシャイア・ラブーフ、見事な脱ぎっぷりを披露したジェシカ・チャステイン、ムカつく潔癖ポマード野郎ガイ・ピアースなど、メインどころの配役はピッタリ。
ゲイリー・オールドマンはほとんど友情出演みたいな感じだったけど、それでもやっぱりオーラが凄い。裏世界のボスって感じがビンビンだった。
なにより最高なのは、不死身の男フォレスト・ボンデュラントを演じた、安心と信頼のトム・ハーディ😍
生粋のイギリス人なのに、完璧にマッチョ信仰な田舎のアメリカ人を演じきっている。
トム・ハーディの大暴れを見る為だけでも、この映画を鑑賞する価値は大いにある!
大人気漫画「ゴールデン・カムイ」の主人公は「不死身の杉元」。いやいや、「不死身」ってのはフォレスト・ボンデュラントくらいの存在になってから言って欲しいものだʅ(◞‿◟)ʃ
大体「不死身」のキャラクターというのは物語の最後で死んでしまうもの。なのでフォレストが物語の中盤で喉元を掻っ切られた時にはマジで驚いた😵
「えっ、こんな美味しいキャラをここで殺すのかよっ!」
しかし、驚くのはここから!あの出血量、あの傷でまさかの生還!?うっそだろ!
あの喉元掻っ切られ描写は100%死ぬ時の奴ですやん!あれで生きているのはもう人間じゃない…。
さらに驚かされるのはクライマックス!
敵の銃弾で蜂の巣になるフォレスト💥💥💥🔫
「うわー、これは死んだ…。さらばフォレスト⚰️👼」
からの生還!?うっそだろ!
結果エピローグまで生き残るんだから大したもんだ。
もうイモータン・ジョーのことをイモータンとは呼べない。代わりにイモータン・フォレストを崇めよう。V8!V8!
すごく好きなタイプのエンターテイメントだったんだけど、それだけに惜しいっ!と思ってしまうところもある。
まず主人公のジャックが好きになれない。
基本全部お前のしくじりのせいやんけ!
まぁ未熟な若者というキャラクターだからしょうがないんだけど、フォレストという美味しすぎるキャラクターがいるんだからもっとそっちをフィーチャーして欲しかった。
フォレストが喉元を掻っ切られ、その後やった奴等に復讐をするという中盤の展開。
この辺りまではめちゃくちゃ楽しかった。ほぼ満点💯
でもなんか、この後ちょっと物語が停滞してしまう。
やった奴らの元締めがチャーリー・レイクスだと分かったんだから、あとは敵の本部に殴り込みを仕掛けてクライマックス。これしかねぇだろ!…と思ったんだけど、そのあとが結構モタモタ…。ここは刺客のちんぽ切り取ったテンションそのままに、レイクスに殴り込みを仕掛けて欲しかった。
あとはラストの決闘シーン。
親友のクリケットは殺され、フォレストも蜂の巣に。その怒りの全てをチャーリー・レイクスにぶつけろジャック!という、間違いなく1番盛り上がるシーンのはず。
…なんだけど、なんか有耶無耶な感じで終わる。これなんでなんだ?
クライマックスは間の取り方から構図まで完全に西部劇なんだから、あとはジャックとレイクスの早撃ち対決しかないだろー!
クライマックスのカタルシス、それとフォレストの大立ち回りがもっと有ればかなりの高評価だったのだけど、ちょっと惜しかったね🤏
本作の教訓としては、「効率」とか「賢い生き方」とか、そんなもんを追求すると地獄をみるぞ。ということか。信念を持って真っ直ぐに生きましょう。そして逝きましょう👼