共喰いのレビュー・感想・評価
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この話の鍵は昭和64年が直ぐに終わってしまった事。
物理的な男性は死んだ後に土左衛門になると、うつ伏せになる。仰向けになるのは女性。
我が亡き母は、自分がガキの頃つまり、日米戦争の頃、利根川を流れてくる土左衛門を何度も見そうだ。最初は怖かったが、何度も流れてくるので、友人と葦の穂で土左衛門を突いたそうで、プシューと腹の中のガスが抜けると、この世とは思えぬ臭いの渦が漂ったそうである。
そんな話を母がすると、羽田沖にも沢山の土左衛門が散在したと親父は言っていた。まるで母の話に張り合う様に。親父は付け加えて「羽田沖の土左衛門の周りにはシャコだらけだった」と話した。すると、「母は利根川は鰻だらけだよ」と張り合った。
親父は性癖に関係なく誰にでも暴力をふるった。それでも、子供の僕だけには手を上げなかった。親父が半身不随になってから、その理由を聞くと親父は「お前が怖かった」と曰わった。
お腹の子供が誰の子なのか?それが分かれば原作と違う面白さがあると思うが、残念ながらが、原作は読んでいない。
あの人が始めた戦争と言うが、それは違う。そう結論づけるのは本当の戦犯を見過ごしている。若しくは、アイロニーでそう言っているのだろうか。
【青山真治監督×荒井晴彦脚本のダーク極まりない世界観が衝撃的。菅田将暉の衝撃の本格デビュー作でもある。】
全編、濃密な血と暴力の物語である。
セックスの時に女を殴る性癖がある父、円(光石研:圧倒的な演技に驚く・・。)を持つ17歳の遠馬(菅田将暉)。
生みの母、仁子(田中裕子)は川を隔てた魚屋で独り暮らし(左腕の手首から先がないため)、”特殊な義手”を装着して、魚を捌く・・。
淀んだ川で、鰻を釣る遠馬。それを貪り食う円。
ー 母さん、なんで僕を生んだのですか?あの男の血をひく僕を ー。
遠馬も恋人千種(木下美咲)と交わる。父と同じように性に耽溺する自分を嘆く・・。
円は、その狂暴性から同居していた恋人琴子(篠原友希子:体当たり演技:円との情交シーンはちょっと凄すぎる・・)に逃げられて・・。
<この作品の余りのダークな雰囲気に呑まれて、菅田さんの現在の快進撃までは当時、想像できなかった作品。>
<2014年2月16日 劇場にて鑑賞>
気分が悪い映画
円死ねばいいのに、と思ったら死んだ。憎しみが大きすぎてそこがピークになってしまって、仁子の刑務所での言葉には「え、そこ?」と思ってしまったし、千種の最後の言葉も別に刺さらなかった。
琴子が語った、「妹でも弟でもない、あなたのお父さんの子供ではない」からの「仁子から『子供がいたら殴られない』と聞いていたから」の流れで、殴られたくないから子供ができたと嘘をついたのかと思ったけどそういうことでもなく、勝手にがっかりしたりもした。
ただ唯一、その直後、しようとしているさなかの琴子の無邪気な「あ!子供が動いた」には狂気を感じゾクっとしたけど。
円が千種にまで手を出す辺り本当に気分が悪かったけど、琴子への欲情を抑えきれない遠馬も似たようなもので、結局父親も息子もやりたいだけじゃないか、という感想。
原作とはまた違う良さ。
菅田将暉主演で気になっていたところ、原作を読む機会があり、原作が面白かったので鑑賞。
台詞や設定が原作に忠実なまま進行、仁子さんの凶行以降が映画オリジナルストーリーになります。
原作より明るいラスト、確かにそうすれば殴ったり首絞めたりせんでいいよね…!!と妙に納得。
あの父親の血を引いて、あんなゴミ溜めみたいな川辺に住んで。
希望なんて絶対持ち得ない状況やけど、
母親が父親を殺してくれて千種が魚屋を継いでくれて昭和から平成に移って、
遠馬の未来がうっすら見えかけて終わる。
テーマは暗いけれど、意外にも鑑賞後爽やかな気持ちになれる映画でした。
菅田将暉が現在のイケメン俳優キラキラオーラを完全に封印して、
文字通り裸一貫で田舎の地味な高校生を演じていたのが、とっても良かった。
あの年頃には難しい役やったやろうけど、演じきっていて流石というところ。
停滞している空気感
女を殴って、自分の思うまま生きてきた父親
それを嫌悪する息子
自分にそんな父親の血が入っているから自分もそうなると信じ苦悩する
複雑な家庭環境でもあるが、みんなどこかずれている気がする
横暴な父親
元夫への憎しみを息子へ言う母親
暴力を受けつつも笑っている再婚相手
(再婚相手に関しては、逃げたあと妊娠中に主人公と関係をもとうとしてるところに一番狂気を感じたが)
主人公しか見えていない彼女
主人公が父親の血のことで自身を追い詰めていることも、父親が独裁的なことも、彼女が魚屋を継いでることも、
閉鎖的な地域なのか、時代なのか、目に見えない混沌とした何かが停滞して、そこ周辺だけでぐるぐるまわっているように思った
思ったよりダークではない
脚本が何を描きたいのか不明すぎる。少年が自分の中の父親の血と決別する物語なのかと思ったが、全然そういう構成になっていない。では父親という悪者が退治される物語かというと、父親が中途半端な悪者なので最後に殺されてもスカっとはしない。それと最後にいきなり、あの人を批判するセリフが出てきて??になる。
女って‥
出てくる女性陣が、みんな凄い。強い。自分だったらどうなんだろう‥と、凄く考えさせられた。多感な時期にも関わらず、恥ずかしげもなく下ネタを堂々と自然に話す様子が新鮮で、リアルだった。散々セックスしても痛くて、レイプされてから快楽を知る‥。いやあ、凄い!!男が酷い、というより、女としての生き方を考えさせられた。
匂いのモト
昭和臭が漂う映画。
—
原作は、ドロドロとした人間関係を描きつつも、どこか冷めていてクドくない。案外、古臭くない小説だと思った。
映画も中盤まで、ほぼ原作通りに進む。
主人公の菅田将暉がイイ。真剣だがそこはかとなくボンクラだ。
女優さん達もイイ。三人とも違うタイプだが堂々としている。
あと、小道具さんの仕事ぶりも楽しい。蚊帳の中のモジャモジャしすぎた張形や、釣竿にぶら下がるふたなりの鈴など、チョイ下品で笑う。
—
映画後半、原作から離れ脚本がプチ暴走する。クドくない話がクドくなり始める。脚本家・荒井晴彦センセイの「いっちょヤッたるで」的な鼻息が荒くなる。この「いっちょヤッたるで」な感じが、昭和(団塊)っぽい。本作の「恩赦うんぬん」のセリフは、荒井氏の30年前の作品『もどり川』にも出てきて、懐かしさすら漂う。
この辺りが、本作に漂う昭和臭のモトなのかもなあと思う。
いろいろよかった
田中裕子の片腕マシンおばさんぶりに魂消た。
木下美咲ちゃんのおっぱいがとても可愛らしくて、すごく好きになってしまった。顔やスタイル、演技が素晴らしかった。彼女には出世して欲しい。原作の意味合いではもっと多分ブスな役柄なのだろう。
青山監督がこのような人間味あふれる映画を作って驚き、ファンになった。
主導権のS。
原作は未読なんだけど(受賞時の有名な台詞は覚えてますが)
だいたいの内容はあらすじなどからも見てとれるし、なにより
一番の期待株は主役の菅田将暉、彼の演技を観てみたかった。
少し前に35歳の高校生、というドラマがあって彼が出ていた。
まぁ~小憎らしい顔つきに、小憎らしい台詞と笑い方、アイドル
顔でこんなヒール役を堂々とやる彼がとても素晴らしかったので、
今度はどんな演技を魅せてくれるのかと、とっても楽しみだった。
仮面ライダー当時から知っているという友人は私に、
「フィリップだよ、フィリップ」としきりに言うけど、見てないし~。
どうやら史上最年少ライダーを演じたのが、彼だったらしい。
日活ロマンポルノ風に(かなり意識して)作りあげたという本作。
うーん…ポルノマニアじゃないし、詳しくないので分からないが
女の私が観ても、それほど厭らしさは感じられなかった。
どちらかというと青山真治らしさのほうが随所に感じられた。
役者は皆いい。その菅田くんをはじめ、有名無名合わせて快挙。
特に女優陣の脱ぎっぷりといい、演技っぷりといい、素晴らしい。
昭和という時代(舞台は63年)を暴力前提で描くのだとしたら、
こんな風にドブ川(ってほど汚くも感じなかったが)沿いの臭いと
神輿庫の暑狭、団地の日照りベランダ、タイル張りの風呂場など
かなりきてるぞ感を醸し出す生臭さをふんだんに加えているのが
なかなかそれらしかった。父親の性癖(とでもいうのかな)となる
あの行為は、今ではDV!家庭内暴力!と大騒ぎされるだろうが
私的には「ああいうのがSなんじゃないの?」という感じだった。
日常生活で妻子を殴るのではなく、性行為時のみでということは、
酒乱患者に見られるタイプか、単に変質者か、どちらかと思った。
引っ叩かれたり殴られたりすることに快感を覚える人間はいない
と思いたいけれど、なぜかその相手から離れようとしない女達。
いつか、ダメだと思い離れる時まで心身が持つのかと心配になる。
殴る方は傷つく相手の一体どこに快感を覚えているのだろうか。
それにしても可哀想なのは息子の方である。
あの男、あの男、と夫のことを呼んでは、その血を継ぐ子供など
アンタひとりで十分だと、主人公の母親は何度も息子に言う。
それあんまりじゃないか。この子はアンタの子供でもあるんだよ!
親父の血を継いでいるのが半分、母親の血を継いでいるのが半分、
どうしてこの子をあんな父親の元で住まわせておくんだろう?と
言っていることとやっていることが違うだろう、アンタ?なんて
最初は母親に対してかなり腹を立てていた。
どんな男とくっ付くのも結構だが、子供を産んだのは親の責任だ。
何のどんな血を継いでいようと、ならば一生その子がそうならない
ように見守ってやるのが親だろーが。なんて腹を立てまくったが、
どうやらこの息子は、憎みながらも父を愛し、母をも大切に思って
いる、実に優しい息子であることが分かった。
母親も自分のところへ足繁く通う息子に安堵して見守っていたのか。
彼女である千種と何度も交わるうちに、自分もいつか父のように
女を殴る日が来るんじゃないかとビクビクしている主人公。
おそらくはビクビクしながらも、大きな衝動に駆られていたと思う。
思春期の男の子が、想像を絶する性への興味を持つことは普通で、
ただ実際にそれをやるかどうか、の問題なんだろうと私には思える。
遺伝による性癖になるかどうかは、生きてる環境で決まらないか。
このくだりの例えで後半、千種が素晴らしい一言を彼に吐く。
「アンタのその手は、私を殴るためにあるん?可愛がる為にあるん?」
(その後の行為に要注目)
原作にはないラストの描写まで、ほとんど笑いのないドラマなのだが
あのラストには思わずニンマリしてしまった私。
いいとか悪いとかでなく、本当に好きなんだ…が見てとれたのである。
自分のことを大好きで、愛してくれて、大切に思う気持ちがある人が
もし傍にいてくれるのなら、大いなる欠点が解決できるかもしれない。
女はそういう計画性に於いて、かなりしたたか。
無意識に、抜け目なく、何事もない顔で、確実にそれを実行に移す。
今作に登場する女三人のそれぞれの言い分は(その時点で)
男をビックリさせるものかもしれないけど、よく考えればその通り。
いや~よく喰いまくりましたね、お互いを。
(淡々とした風景の中にうごめくエロと暴力。でも映像は控えめです)
万人向きではないが、これ程の衝撃を受けた作品は久々!今井監督作品同様の戦慄感が堪らない
山口県・下関市内 小さな片田舎の町の中心を流れている汚れた川
昭和63年の夏・この小さな町に、こだましているのは蝉の大合唱だけだった。
このファーストシーン、画面から溢れ出す熱波、その感じが凄い!
ジメジメと身体を蝕み、人を狂わすその暑さ、遠馬のナレーションと被さり、暑さと気だるさだけが観客の脳裏にも届いて来る。
17歳の誕生日を迎えたばかりの主人公・遠馬のギラギラと燃えたぎり、抑え切れない性衝動、遠馬の心と身体の全体を蝕み、包み込んでいる性衝動と言う、この熱く生きる塊。
それが嫌でも、いつしか観客自身を十代の自分との対面へと引きずり込んで行く。
10代の男子高校生、女子高生の性への目覚めから体験へと移って行く辺りの不安と戸惑いの感じが、実に画面の隅々まで、ギラギラと熱く溢れ出ている。
そして、遠馬は父を軽蔑し、憎みながらもその血同じが自分自身にも、歴然として流れている事への恐怖、その感覚を良くぞ、この若い俳優が演じたと菅田将暉に衝撃を憶える。
毎度の毎度の事で、申し訳ないのですが、私はこの映画の原作を未読だ。
だから、この映画のラストが田中慎弥氏の原作のラストとは大きく異なると言うのだが、そのどちらの方が、より素晴らしいのかについての判断が全く出来ない。
しかし、この物語には人間誰しもが持っている心の闇・自分の弱さや欠点と、その闇に何とか、抵抗しようと試みても、己の弱みを振り切り、欠点を打ち負かす事が出来ずに、更に苦しみ、迷い続ける・多感なティーンエイジャーに限らず、人間が本来抱える悲哀が、切々と胸に響いて来る衝撃的な作品だった。そして女性が持っている底力、生命力、運命に翻弄されるだけではない、最後に下す、決断力の強さに圧倒された。
私は実は何故か、この青山真治監督作品を余り観ていなかった。特別嫌いと言う訳では無かったのだが、彼の撮ってきた作品を今迄は観ようと言う想いに駆られる事は無かった。だが、今回この作品を観て、この人の観客の感情に無理矢理忍び込み、観客の感情を鷲掴みにする画の撮り方に脱帽したので、彼の他の作品も今後観てみようと思う。
私は、シャーリー・マクレーンの大ファンなので、ついついこの原作者の田中慎弥氏が芥川賞受賞発表記者会見の時にお騒がせ発言した事は、笑えない出来事であったのだが、この映画を観ると、二十歳から引き篭もり同然に、一人で執筆に専念し、作家への道を極めようとした執念の強さ、底力と言うのだろうか?その強い生きる力のような物が物語の随所から溢れていた。人間に限らず、生きる動物のエネルギーの凄まじさを感じられずにはいられなかった。益々今後、彼の作品が面白さを増してきそうで、映画化も楽しみだ。
しかし、彼のこの物語を、此処まで熱く、狂気と衝撃の高みへと押し上げたのは、田中裕子と光石研の確かな芝居を抜きにしては、完成出来なかった事は言うまでもない!
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