劇場公開日 2013年9月7日

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共喰い : 映画評論・批評

2013年9月4日更新

2013年9月7日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

荒井晴彦と青山真治によるロマンポルノの復活

昭和63年の夏。山口県下関市の川辺と呼ばれる、どぶ川の河口の一角で、17歳の遠馬(菅田将暉)、セックスするときに相手の女を殴る父親(光石研)と父親の愛人(篠原友希)、遠馬のガールフレンド(木下美咲)、空襲で左手首を失った母親(田中裕子)、それに娼婦の6人が、血と性の物語を紡ぎ出す。

2012年に芥川賞を受賞した田中慎弥の同名小説を映画化するに当たって、脚本の荒井晴彦と監督の青山真治は、ロマンポルノの乗りで作ろうと考えたという。

ロマンポルノは、傾きかけた日活が会社の延命を図るために、10分に1回、濡れ場(セックスシーン)があれば、素材にも主題にもこだわらないという、1971年からおよそ17年間にわたって、日活撮影所で撮られたプログラム・ピクチャーである。

70年代当時、ロマンポルノの現場にもいた荒井は、原作小説を脚色する自分の仕事を、「活字を原稿用紙のマス目に写しただけ」と各地の映画祭で語っているが、それは本音ではない。「脚色とは原作に対する批評である」というのが荒井の持論であり、その批評性は映画的改変を施した脚本となり映画となる。当然本作においても、いくつかの映画的改変が行われている。

映画の終盤に加えられた半年後のエピソードは、昭和天皇の戦争責任を意識させ、原作者は唸ったという。また、小説にはない性愛シーンも描かれるが、青山監督は一度もキスを撮らない。それは、「体は許しても唇は許さない」というプロのこだわりが象徴する、女性の中に潜む娼婦性を想起させる。

女性上位社会の到来を感じさせる、いかにもロマンポルノ的な映画である。

(品川信道)

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