人生の特等席のレビュー・感想・評価
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ややリアリティーに欠ける
いい話だが、クリントイーストウッドの親子の年齢差、草野球程度しかしていない少年がメジャー級の投球したり等、全体的にリアリティに欠ける。あと、原題は、Trouble with the Curveで、カーブに問題ありという意味だと思うが、邦題自体はいい題だが、あまりにも原題とかけ離れていて、製作者に失礼ではないか。
原題 カーブの時の問題
イーストウッド80歳。
軽いコメディ。アメリカ大リーグ。引退をようやく考え始めているスカウトマン。高校生たちの試合を追って地方巡り。視力に、気力に、運転も覚束なくなっている。ただ、スカウトの真髄は心得ている。
娘が30すぎ。弁護士事務所に所属して中堅。共同経営者候補という切れ者。しかし、同僚との恋は結婚には結びつかず、やや焦りはじめた世代。娘と父親の二人ともが主人公と言っても良いだろう。
後半でわかるが、娘は少女期において、父とのスカウティング放浪生活で、プロ野球の選手、技術、記録など一流の知識を自然に身につけていた。このことが終盤に生きてくる。
このありえなさそうなデコボココンビが面白い。はたから見れば、30過ぎのインテリ女を連れた80過ぎの痩せたおじいさん。
このコンビに父親ガスの知り合いだったひとりの男が絡んでくる。
終盤で何もかもがうまく転んで、落ち着くところへ落ち着くのだが、前半の引退間近の老人がまた生き甲斐を見出すラストはひとつのカタルシスではある。
いいタイトルつけましたね(^-^)
大好きな映画です! 野球観戦は好きですし(テレビでね(笑))、ロードムービーも好きですし、主演はクリント・イーストウッド、そして透明感の塊のようなエイミー・アダムス(笑) 憎たらしい連中は最後に思い知りますし、スカッとします! カーブが打てないあのバッターの父親も思い知るシーンが欲しかったかなあ~。 ジャスティン・ティンバーレイクは全然好きじゃないのですが、何とか我慢できます(笑) ファンの方々ごめんなさい!
ラスト5分が痛快!
実はずっと星5個はつけるつもりはなかったのですが、ラスト5分がとにかく痛快で爽快でいっきに星5個になりました。
ガスとミッキーは最後は一発逆転、人の足をひっぱる同僚弁護士と若手スカウトマンはメッキが剥がれ、父と娘は分かり合い、そしてミッキーのラブストーリーはハッピーエンドと、ラスト5分の畳み掛ける痛快さは映画の醍醐味です!
老いてもなお増す不思議な魅力
イーストウッド82才、まだまだいけるアクションスター、酒場で娘に絡む男の胸ぐらを掴んで殺しかねない形相、ちょっと異常に思えたら後にその訳が語られる、ピーナッツ売りの男の子がナイスコントロールでピーナッツの袋を投げるシーンも伏線だった。ストーリーはメジャーリーグの老スカウトマンと娘の絆を描いたハートフルドラマなのだがクリント・イーストウッドとエイミー・アダムスがいい味出していました。テーマが父娘なのでヒール役はさほど重要でないとしてもデータ野球で実物を見ないスカウトマンなんて馬鹿過ぎる。昔の男なら昨今の頭でっかちの若造にお灸を据えたがる気持ちに共感するとの読みもあるのだろう。
公開後に脚本の盗作訴訟でごたごたしたらしいが年間5万本の企画が飛び交うハリウッド、似たようなものがあっても不思議はない、仮に物語が同じでもクリント・イーストウッドが演じなければこの良さは出なかったろう。
イーストウッドにしては
娘と父親の愛情の物語。彼に対してだけは寛大な父親、ここが納得いかなかった。短気で浅はかでどこが良いのだろうと思ったから。娘のスカウト能力についてもドラマだな〜と思う。
イーストウッド感満載映画
最近目がほぼ見えなくなってきたけど昔は腕の良いスカウトマンの父と娘の話。
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正直こうやって割と連続でイーストウッドの作品見てるとあまり違いが分からなくなってくる(笑)まぁでもとりあえず、家族との確執をどうにか乗り越えたいということは全般的に伝わる。
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今回は、野球のスカウトマンだったから家族との関係よりトレードの行方の方が気になった。白人のデブのいきがったバッターより、アラブ系(?)の野球クラブにすら入ってない青年のが能力があるというのがいかにも今っぽい。
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最後にスカッとできて良い映画でした。
何度見ても素晴らしい
野球好きの頑固オヤジを持つ娘です。
まぁ父はスカウトマンじゃありませんが。
娘心を全部詰めてある映画だなぁと思いました。
特に部屋の鍵を開けるときなんて正にって感じの
態度でしたが大好きで仕方ない父。
そんな父親役のクリントイーストウッドは
点数を付けられないほど100点でした。
私が演技の点数なんて、おこがましいな…
どんな人にも見て欲しい作品です。
イーストウッドの頑固親父が良いが、結末は駄目
総合70点 ( ストーリー:65点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
野球選手の調査員の男とその娘の関係を、調査を絡めて描く。大きな出来事はなくてむしろ静かにゆっくりと物語は進むのだが、それでは退屈しそうなのに退屈はしない。それどころか徐々に親子関係の過去が明らかになるし、また野球に関する選手の調査の話も出てきてどう判断がされるのかが気になるしで惹きつけられる。
終盤近くまでは面白かったのだが、最後は急に野球をやっていたわけでもなさそうなピーナッツ売りが実は凄い投手だという展開が白々しくてちょっとひいた。それ以外のことも結末の短い時間で色々と強引にまとめようとしすぎたのではないかと感じて惜しい。
イーストウッドは若い頃は派手な活劇で名を鳴らしたが、だんだんと年齢を重ねて欠点もある頑固親父を演じるようになってまた新境地を開拓したきたと思う。今作もはまり役だった。娘役もよく対応出来ていた。
好みの問題ですが
頑固な親父をやらせたらイーストウッドの右に出る人はいなさそうですね…。娘役の人も親父譲りの頑固さを上手く表現できていたと思います。
でも僕はこの映画、勧善懲悪っぽすぎるところが好きじゃないっていうか…。一番象徴的なシーンはやはりラストの対決ですよね。娘がスカウトしたピッチャーと悪役がスカウトしたバッターの。バッターが全ての球空振りするじゃないですか。それがなんかすごい象徴的。僕はストレートは打たれるけどカーブで打ち取るって展開ならまだ納得できたかもしれないです。ストレートまで空振っちゃうとなんか違うよなあ…って気がしちゃって。
その後の畳み掛けるようなそのピッチャーの入団決定、ガスが世話してた選手の成功の報、悪役スカウトはクビ、球場の前で待ってる彼氏…幸せなキス。ちょっとやり過ぎ感が否めない…。
勿論この親子に肩入れできてれば最高にアガるし多幸感全開のラストなのは間違いないですが、僕はあまりできませんでした…。娘がダイナーで朝食取ってる時いきなり昔話し出すのとかちょっと唐突じゃないかって思ったりして、キモの部分に同情できなかった。
でも、ラストのセリフはグッとくる…。紛れも無い娘思いの父親がいました。やっぱりイーストウッドはかっこいい。
がんこおやじ
典型的ながんこおやじは娘に対して、幼少期の出来事の罪悪感を抱いていた。
長い間一緒にいたふたりにしか芽生えない強い絆と信頼関係は、観ていてとてもよく伝わってきた。
野球好きはスカウトの裏を覗いているようでもあり、より楽しめる
野球映画の系譜
昔ながらのやり方(スカウトの直感)に固執する頑固な名スカウトが主人公とくれば、どうしても思い出すのが、『マネー・ボール』。これはメジャーリーグのスカウティングの世界において『マネー・ボール』と対ををなすオールドファッションなスカウトの世界を描いている。
将来有望とされドラフトの目玉になっているスラッガーが実はしょうもないヤツで、コイツに馬鹿にされるピーナッツ売りの少年が実はすごいピッチャーだというのは、容易に察せられるし、この辺りの予定調和は許せるものの、娘のロマンス要素は要らない。(J・ティンバーレイクが悪い訳じゃない)
父親と過ごした野球漬けの日々を懐かしく思いながら、父親に捨てられたという思いから弁護士となりしゃかりきに働く娘が実は父親の“見る目”と“野球愛”を受け継いでいて、反発しながらも、失明しつつある父親を助け、その過程で父娘が和解する。
その話だけで十分傑作になったと思う。
ハリウッド映画の悪癖なのか、とってつけたようなロマンス要素で焦点のぼけた凡庸な作品になってしまって残念。
野球映画というそれだけである種の清々しさがある魅力的なジャンルなので、きっちり“野球映画”として作って欲しかった。
さて、俺はバスで帰ろう
映画「人生の特等席」(ロバート・ローレンツ監督)から。
野球を題材にしているが、テーマは「父娘の親子愛」。
映画「アルマゲドン」も同じだった気がする。
娘を思う父親の気持ちは、いつの時代も、そして世界共通、
そんなことを思いながら、観終わった。
ただ、本人を目の前にして、素直に愛情表現できないのも事実。
「服も買えないのか」「ヨガの帰りなの」「カルトにはまったか」
そんな心にもない嫌みを口にしてみたり、
わざと突き放したのも「苦労させたくなかった、三等席の人生だ」と、
娘の幸せを願うことに他ならない。
そんな父親の思いに、娘がやっと気がつき、
「三等席じゃない。目覚めるとパパは野球をみてて、
体に悪いものばかり食べて、徹夜でビリヤード、人生の特等席だった」と
言い返すシーン、ジーンときた。
タイトルの「人生の特等席」というフレーズは、娘の一言だった。
最後に、娘に対して、父親はこう言う。
「同じ血が流れてる。幸せを願ってる」
普段意識しないけれど、妻を大切にする意味とはちょっと違い、
自分と同じ血が流れている子どもとの絆の強さを、私は感じた。
ラストシーン、娘の幸せを邪魔せぬようにサラッと呟く。
「さて、俺はバスで帰ろう」・・・わかるなぁ、そんな父親の気持ち。
ハッピーエンドてんこ盛り!
基本的にクリント・イーストウッドの映画は外れがないので観に行くことにしているが、この作品は正直微妙ところ。やはりイーストウッド自身が監督したものとは趣が異なるようだ。
メジャー球団の有能なスカウトのガスは、幼い娘を残して妻に先立たれ、しばらく仕事に娘を同道するが、ある時変質者(幼児性愛者)に娘を狙われたことで、自分の仕事の環境は娘にふさわしくないと人に預けてしまう。娘はそれを父親に捨てられたと解釈し、父親に認められようと弁護士になる。父親はそんな娘の頑張りを見守りつつ、スカウトを辞められない自分に娘を引き取ることはできないとあえて疎遠にする。
そんな父と娘の理解と和解を描く作品で、テーマは悪くないしイーストウッドは勿論、エイミー・アダムスを初め手堅く固められた共演陣の演技も素晴らしい。しかし正直に言わせてもらえば作品全体としてはあまり高い評価はできない。その原因はやはり脚本である。
色々な衝突を繰り返しながら娘と父がようやくお互いの思いを理解し、和解していくのを描く場面でも、本来大きな山場であるのにそこに至るストーリーの盛り上げ方が弱く、父親が「お前を一緒に連れていくことはできなかった。俺の隣は安物の3等席だ」と自嘲気味に言うのに娘が「お父さんの隣は私にとって特等席だった」と答えるシーンが大して印象に残らない。
そしてラストはもうハッピーエンドのてんこ盛り。まず父親の意見を無視され、球団がボーを指名したことでジョニーに去られたミッキーの眼前に、全く無名の剛球投手が現れ臨時入団テストでボーをコテンパンにする(その投手は母親に勉強に専念するよう言われているためにチームにも入らず、勉強の合間の独学(自主練)でプロでも通用する投球術を身に着けたという設定!)。次にスランプに陥っていた打者がガスの意見で家族を呼び寄せたら見事に復活する。そしてミッキーの勤める法律事務所でもライバルが失敗し、復帰後の昇進を約束される。更に怒りに任せて暴言を吐いて去ったジョニーも恥ずかしげもなく戻ってくる。
これはいくら何でもやり過ぎと言うもので、その安易さに画面を見続ける意欲も無くしてしまう。特にジョニーの別れの言葉は怒りに我を忘れたとはいえあまりにひどいもの(怒りにまかせて発する言葉はその人の本音であることが多い)で、ミッキーがなぜ易々と許すのか男の自分が見ても全然納得できない。
イーストウッドもすっかり年老いて、もう新作は観られないかもしれない。しかしこれが最終作にはなって欲しくない。
三等席の映画
イーストウッドが俳優として久々に復帰した。「憎まれ口を叩く、いけ好かないじじい」の役はもはや鉄板であり、安定した演技を見せてくれる。口下手だから娘に思いを伝えられなくて、時折見せる悲しそうな表情はとても繊細だ。
そのイーストウッドの娘役がエイミー・アダムスと来れば文句なし。男勝りのキャリアウーマンだが、内面では父親の愛を欲している。楽しそうなときもどこか物憂げなところが役に深みを与えている。
その他、ジャスティン・ティンバーレイクはスカウトに転向した元投手を演じている。(少々さわやかすぎるが)非常に好感が持てて、彼とアダムスの会話のシーンは見事にかみ合っている。ジョン・グッドマンに至っては言わずもがな。脇役なのに、ストーリーの雰囲気を最終的に形作るのは彼と言っても過言ではない。
しかしこんなに良い役者がそろっているにも関わらず、この映画は限りなく微妙だ。おそらく脚本が根本的に良くないのだろう。何しろ、盛り込まれているエピソードが「父親がスカウトをクビになりそう」「父と娘のすれ違い」「娘の昇進」「娘の恋愛」・・・etc。どれに主軸を置いているのか全く分からない。しかもそれぞれの話が唐突に登場するものだから、ツッコミどころ満載だ。
肝心の「秘められた過去」が明らかになるときはある意味テンションが上がる。なんとハリー・キャラハンが登場するのだ。いや、ガスの昔の姿を再現しているのだがそれが「ダーティハリー」のイーストウッドそっくり。正直、このシーン以外頭に残っていないのだが。
敵役の作り込みの甘さも致命的だろう。この映画は「マネーボール」とは正反対の主張をしている。つまり選手はパソコンなんかではなく、スカウトの目で見つけ出すものだと。だが「マネーボール」では頭の固い老スカウトにも一理ある、と描かれていたのに対し、この映画での”パソコン野郎”は典型的な嫌な奴でしかない。ただただ、むかつくのだ。まあ最後の安っぽいエンディング(ここですべての問題が一気に解決する)のおかげで、「ざまあみろ!!」という気分にはなれるが。
良いシーンもたくさんあるのに、すべてを台無しにしている。監督はイーストウッドの弟子だから、彼の魅力をどう生かせばいいのかはよく分かっていただろう。だがストーリーがこれじゃあ、キャラクターが良くても映画はダメだ。
とはいえ、「人生の特等席」を嫌いになるのは難しい。クオリティは「三等席」だが、それはそれで楽しいのだ。
(2012年12月20日鑑賞)
特等席は座席指定。
「グラン・トリノ」で俳優に終止符を打ったはずのイーストウッド卿が
またもや愛すべきクソジジイとなって帰ってきた。
あれ以上の偏屈をどう表現するかと思えば更に磨きが繋っていた。
いや~あっぱれだ。高倉健が佇まいで魅せる映画俳優とすると、
イーストウッドは立ってよし、喋ってよし、殴りかかってまた、よし。
この佇まいは現在の老役者でもなかなか味わえない。
今作は設定や物語でいえばかなり単調な部類に入ると思う。
驚くような展開(ほぼ予想がつく)はないし、娘が出てきた時点で、
あーこの娘の将来はきっと…なんていう想像もたやすい。
ただ、この二人の最大のわだかまり、幼い頃に何があったのか。
が解き明かされる後半、父親の願いと娘の想いの交錯にグッとくる。
観る立場にも依ろうかと思うが、私などはドンピシャでこの関係だ。
むろん、里子に出された訳でも母親不在の訳でもないが^^;
幼い頃から現在に至るまで、父親と楽しく会話できた試しがない。
自分が親となり、親がどれだけ子供を愛しく想うかは理解できた。
問題はその表現力(性格がおおよそ占めるが)だよと今では思う。
だから彼の娘ミッキーが抱えるジレンマが非常に理解できるのだ。
ホント分からないんだよねぇ…その言葉の真意が(爆)
娘を最大限傷つける言葉を吐いといて、いけしゃあしゃあとしている。
ちょっと父親がそういうこと言っていいのかよ!謝りもしないとは!
こちらは噴火寸前の火山である。何を言っても通じない。無視される。
おそらく私が今まで生きてきて他人に吐かれたどんな卑劣な台詞より、
最も傷ついたのは父親(母親もあるが)から吐かれた台詞である。
感情でモノを云う生物の人間は、理性のコントロールでそれを回避する
というが、回避できない人間がこんな身近にいるのを知って悲嘆した。
しかしまぁ面白いのは、おそらくあとになって…後悔するのだろうが、
何気に優しく近づいてくるのである(爆)でも決して言葉での謝罪はない。
こちらが気付くか気付かないかのレベルで赦しを請いにかかってくる。
…バカか、こいつは!
だったらあんなこと言わなきゃいいだろが!よく考えろ、クソオヤジ!
今まで何回、こんなことがあっただろう。いや、未だに何回もある^^;
まるで自分らを観ているような父親と娘の掛け合いが面白い反面、
なんでこの親父は、娘に心を拓けないんだろうと哀れに思えてくる。
(このあたり、頑固一徹親父の皆さま、どうかご助言下さい)
どんな子供でも可愛いのと同じで、どんな親でも子供には最愛の親だ。
お互いを理解し仲良くやっていきたいのに、どうして些細なことで親子は
こう、ぶつかってしまうんだろうなぁ。
老スカウトマンのガスは、ほぼ目が利かなくなっており解雇寸前。
最後のスカウトに賭けた彼に、仕事一辺倒の娘が心配して寄り添う。
蛙の子は蛙で、娘にもその才能は受け継がれている。野球が好きなのだ。
しかし父親は頑なに娘を拒み、帰らせようとする。その真意とは…。
酒場で娘に近寄る男に殴りかかろうとする彼の行動の裏に秘密があった。
幼い頃に娘を手放し、音信不通にまでなった父親の決断と、
父親に遺棄された(も同然)と思って育ってきた娘の葛藤の日々をさらい、
父は娘の未来に何を願い、娘は愛されたいがために優秀であり続けたと
いう(この部分など凄く分かる)切ない事実が浮かび上がってくる。
私のことキライなんだと思ってた…と娘が吐く台詞に号泣してしまった。
誰もが誰かに認められたいと願っている。
認められたいから頑張ってその座を得ようと努力をする。
力が落ちて、もう使い物にならない烙印を押されても、いや、まだまだ!
と踏ん張るお年寄りも多いと思う。特に男性は…しぶといよね(我が父も)
子供が勉強や習い事を頑張るのは(小さい頃は)親のためである。
親が喜ぶ姿を見たくて、自分が褒められることが嬉しくて、頑張るのだ。
本当は好きな道(今作でいえば野球)に進みたかったけど、親がダメだと
いうからこっちを選んだ。なんて年老いてから聞かされたら、私は悲しい。
そのために子供の芽を摘むなんて(親だけの責任とはいえませんけど)
やっぱり道は拓いておいてあげたい。失敗や苦労は本人のためになる。
人生の特等席。かぁ…。
私の特等席といえば、もちろん映画の座席指定になるけれど(爆)
イーストウッド卿の特等席は、未だ現役で頑張れるその位置だろうか。
引退など考えたこともないという。さすがだ。
死ぬまでその姿を私らに焼き付けて下さいませ。いまの調子でね。
最後になるけど、A・アダムス、J・ティンバーレイク、いい演技でした。
(R・パトリックの渋さもハンパじゃない。彼にも長生きを強要しますよ)
いつもイーストウッドはヒーロー
原題:THE TROUBLE WITH THE CURVE
クリント イーストウッドは私の人生で、いつもヒーローだった。
小学生のときに「ローハイド」、中学生のときにマカロニウェスタン、「荒野の用心棒」、大学生で 「ダーテイーハリー」、大人になって、「許されざる者」。中年になって「マデイソン郡の橋」や「ミステイックリバー」。ババになって、「ミリオンダラーベイビー」、「グラントリノ」そしてさらに、この映画「人生の特等席」だ。
彼が一生かかって描いてきたものが、そのまま私の人生の軌跡に重なる。だから82歳の彼が元気で現役役者や監督でいてくれることが、とても嬉しい。この映画は、恐らく彼が主演を勤める最後の映画になるだろう。これは彼の監督業で右腕になってきたロバート ローレンツが単独で 初めて監督をした映画。イーストウッドの右腕だけあって、音の使い方がうまく、映画全体の起承転結 メリハリの付けかたが秀逸。とてもよく出来た映画だ。
ただ邦題の「人生の、、、」の意味するものはよくわからない。原題をそのまま つけるべきだと思う。「TROUBLE WITH THE CURVE」の題は そのまま訳して、「カーブでトラブル」とか、「カーブが難問」とかの意味。
ストーリーは
ガスはメジャーリーグ、ボストンレッドソックスのスカウトマン。毎年有能な新人を発掘してチームに入れて成功させている。スカウトマンの中で一番古くからチームに貢献してきて、本当に使い物になるスターを見出すことで仲間からも ライバルチームのスカウトマンたちからも一目置かれていた。
しかし寄る年波には勝てない。ガスは新聞を読むにも眼鏡だけでは活字が見えなくて、虫眼鏡が要るようになった。視野の中心部がぼやけて足元が危うくて、よく転ぶ。医者からは黄班部変性か緑内障なので早く専門医に行って治療が必要だと言われている。スカウトマンのボス、ビートからは 何時引退するのか、と問われている。
しかしガスは聴く耳を持たない。大丈夫。今までも上手にやって来た、これからもやっていけるさ。スカウトマンは街から街へ 旅を続けて新人を見出す。ゆっくり家で腰を下ろしている暇などないのだ。
彼には自慢の娘がいる。33歳 独身の弁護士ミッキーだ。彼女は若いのにやり手で努力家。実績を買われて名のあるファームの招聘されている。名誉なことだ。恋人も弁護士で将来結婚するつもりでいる。
ガスのボス、ビートがある日、弁護士事務所に訪ねてくる。ビートはミッキーが赤ちゃんの頃から知っている。ミッキーは6歳で母親を亡くし、幼いうちからいつもガスに引っ付いていたからだ。彼は、ガスがどこか、体の調子が悪いのでは無いかと言う。そういわれると、忙しくてこのごろ疎遠にしていた父親が心配。でも、訪ねてみると頑固親爺は娘をうるさがるばかり。目医者に行くなど、とんでもない。不健康な食生活、酒も葉巻も手放せない。娘を怒らせて、サッサと返すだけの父親。
ある町にすごい新人バッターが出現。ガスを始めとして各チームのスカウトマンが町に乗り込んでくる。ガスを追って、ミッキーもこの町に。新人バッターは、皆の目の前で ジャンジャンボールをかっ飛ばす。どのチームもこの新人は「買い」だ、という中で、ガスはひとり反対する。新人は手を捻ってバットを握っている。これではカーブは打てない。とガスは言う。しかし眼鏡をかけても遠くが見えないガスの言うことなど誰も聞かない。ガスは、新人がボールをバットに当てる時の「音」だけで、バッターの欠点がわかったのだ。ガスの主張を娘のミッキーだけは信じる。父が強情に言い張る時は 絶対に正しい。しかし、「音でわかる」と言うガスをみんなは笑いものにして、この新人をチームは買う。
ミッキーは他のチームのスカウトマンをしている青年に 新しい恋をしていた。相手は、ガスが昔、見出したピッチャーのジョニーだ。彼は腕を痛めてプロから脱落、今はブロードキャストを目指しながらスカウトマンをやっている。ガスもミッキーもこの新人は「止め」というのでスカウトしなかった。しかし、ガスのチーム、レッドソックスは この新人を買った。ジョニーは、ガスとミッキーが自分を裏切ったと思って、怒って町を去っていく。ガスも 自分の意見を聞かずに カーブも打てないバッターを買ったチームの首脳陣に怒って、町から引き上げる。
しかし、町に残ったミッキーは、そこで埋もれていた とんでもない実力のあるピッチャーを見つける。ホテルの下働きをしている青年だった。ミッキーは、彼の投球するカーブに惚れこんで、彼を連れてレッドソックスの本部に乗り込む。そこでガスもビートも見ている前で 買ったばかりの新人バッターが この青年の投げるカーブも、ストライクさえも打てない醜態を見せて、父親の言ったことが真実だったことを証明してみせたのだった。
というおはなし。
父と娘の絆の深さに胸がジンと滲みる。老練のスカウトマンの正しさを娘が実証して仇をとる痛快な終わり方に拍手。この父にしてこの娘あり。やったぜい。最後に年をとったクリント イーストウッドがひとり歩み去る後姿が、娘との二人三脚の歓び、人生の喜怒哀楽を語っている。
それにしても、クリント イーストウッドはなんと「男」であることか。バーで33歳の娘に言い寄る男が出てきたとたんに、ぶん殴りに飛び込んでいく。転んでも人の手を借りない。だいたい転んだことを認めない。娘を和解しても抱き合わない。手も触れないし、肩に手を置く事もしない。ハローと言って軽く抱き合い、行ってらっしゃい お帰りと言い合い頬にキスする習慣の国で 彼は全然誰も抱いたりしない。するのは男と男の握手だけ。
家事ができない。夕食は冷蔵庫に入れっぱなしの食べかけの缶スパムのランチョンミート。これを直接フォークで口に掻き込む。または、フライパンで焼きすぎて真っ黒になった肉。朝食兼ランチは出前のピザ。葉巻タバコを手放せず、夜になれば勿論呑む。なんと偏った不健康な食事と生活態度、、、これが男だ。
「グラントリノ」でも誕生日に、でっかいバースデイケーキと 老人用の文字盤が大きい電話、落ちたものを拾える杖など持ってきた息子夫婦に怒ってどなり帰す。プレゼントはぶん投げて帰すが バースデイケーキは夕食に食べようとして 隣人にバーベキューに呼ばれるシーンがある。
彼の初期の頃の「ローハイド」では、彼はいつもアルミの皿に、「また豆かよ。」と文句を言いつつまずそうにスプーンで豆をすくって食べていた。彼の出てくる映画で彼が 健康的でおいしそうな食べ物を食べているシーンを見たことが無い。男もつらいな。
ガスがもう30年近く前に亡くなった妻の墓で妻に語りかけるのは「ユーアーマイサンシャイン」の歌詞だ。
「おまえが俺には太陽の光
俺には この光があるだけさ
おまえだけが、この俺を幸せにしてくれる
ー
どうかこの俺からお前の光をうばわないでくれ」
泣かせる。妻が生きていた頃 優しい言葉ひとつかけてやらなかったに違いないが、墓に向かってなら、本心を言える。それでいて、残った唯一のサンシャインである娘に向かって、帰れ、帰れとどなりつけるだけで、まともな話しをしようとしない。こんな不器用な扱いのむずかしい親爺 まったくお手上げだ。
娘役のエイミー アダムスが良い。頑固親爺に意地っ張り娘。とてもきれいな目をした女優だ。わたしの愛用のLONGCAMPのバッグを映画のなかで使っていて、なんか、嬉しかった。
彼女の恋人になる元ピッチャーのジャステイン テインバーレイクの役者ぶりには恐れ入る。「ソーシャルネットワーク」でも良かった。ラッパー音楽家だけでなく役者としても一級だ。一芸ニ芸秀でている。
オットは、オージーでクリケットしか見ないので、野球をほとんど知らなかった。でもこの映画で ストライクもカーブも変化球も しっかり勉強できて、野球の面白さに目覚めた。ふりしぼったバットがみごとにヒットするときの 気持ちの良い音、キャッチャーとのやりとりの面白み、ピッチャーの豪快な投げ、など、たくさん映画で経験することができて、とても喜んでいる。
イーストウッドが口ずさむ「ユーアーマイサンシャイン」を聞いて、どうしてもギターで弾きながら歌いたくなった。一念発起して半世紀ぶりにギターを手にしてみよう。
とても心に響く良い映画だ。
仕掛けに気づいてもなお楽しかった
本作のテーマも、仕掛けも、「Trouble with the Curve」という原題が全て包含している素晴らしいタイトルでした。
そのうちの一つしか取り上げていない邦題が非常にもったいない作品です。
こんなありきたりの、「なんな~く良さそうな話」と思わせたい心が見え見えなタイトルを付けた方には、もう一度本作をしっかり見直してみて欲しいです。
長い人生で誰もが必ず遭遇する「人生の転機」。それはいつ来るか、また何回来るのかも分からないけど、そこでの判断や行動がその後に大きな影響を残すこともしばしばあります。
そんなターニング・ポイントをそれぞれ迎えた父と娘を、淡々とそしてじんわりと温かいエピソードで綴った快(ちよい)作でした。
正直言えば、メジャーのスカウトとして評価に取り組むバッターの行く末と、おそらく製作者側はどんでん返し的に準備したであろう、別の若者のことは登場した瞬間に感づいてしまいました。(原題が良すぎましたね)
でもそれはそれ。映画としての面白さは全く減ずることなく、エイミー・アダムスの、子持ちとはとても思えない魅力も楽しみながらあっという間に過ぎた娯楽の時間でした。
クリント・イーストウッドは、制作者としても役者としても、目が離せませんね。
全22件中、1~20件目を表示