「師匠イーストウッドの手を完全に離れた時どうなるか?」人生の特等席 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
師匠イーストウッドの手を完全に離れた時どうなるか?
単純にスカウトマンとしての力量を問われる話で、経験豊富なスカウトマン、ガスをクリント・イーストウッドが演じる。この人が出てきたら、この役を他の俳優では考えられない。ここまで面白くはならないだろう。
娘役のエイミー・アダムスもいい。父親そっくりで意地っ張りで鼻っ柱が強いミッキーにぴったりだ。
どうやらこの父娘、長いことうまくいっていないらしいと分かるオープニングから、デキすぎのラストまで物語自体はまさにストレート一球勝負だ。これを星飛雄馬と花形の勝負を延々と引っ張るがごとく見せ場を作ってみせるイーストウッドとエイミーには喝采を送るしかない。
ガスが墓の前に腰を下ろし、亡き妻に語りかける“ユー・アー・マイ・サンシャイン”の歌詞。
ミッキーが同じ曲を恋人に歌って聞かせる。互いに反発し合いながらも、父娘の強い絆が伝わってくる。
この辺りは、長年イーストウッドの下でやってきたというロバート・ローレンツが、初監督ながら師匠の作品と同じようなカラーを打ち出している。
ただ、師匠のように人間ドラマでも何か事件性を匂わせるようなカットを挟んで遊ぶ余裕はまだ無さそうだ。もっとも、これは往年のアウトローのイメージが定着したイーストウッドだからこそ、観客に〈もしや?〉という疑念を抱かせられる芸当なのだが。そのため事件性を話の核に直接盛り込んでいる。
イーストウッドの出演なしでどこまで師匠に迫れるか、今後が楽しみではある。
ガスとミッキー父娘の真価が問われるラストは、そこに至る伏線があるのでお見逃しなく。
MLBファンには楽しそうなクイズの応酬もある。
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