「原題が様々な意味を暗示する心に沁みる佳作」人生の特等席 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
原題が様々な意味を暗示する心に沁みる佳作
メジャーリーグの名スカウトの父と弁護士の娘。妻が亡くなった後娘を親戚に預け仕事に没頭した父は立派に成長した娘を誇りに思いながらも顔を合わせると喧嘩ばかり。自身に視覚障害が出始めていることを知った父はそれをひた隠しにするが同僚に知られてしまい、同僚は娘に暫く一緒にいてやって欲しいと懇願する。昇格を目前に控えた娘は嫌々ながらスカウト道中に付き合うことにするが、やがて娘は父が幼少期からずっと胸に秘めていた秘密を知ることになる。
どこまでもオーソドックスでオールドファッション、まるで日曜洋画劇場を観ているかのような典型的なアメリカンドラマ。監督のロバート・ロレンツはこれが監督デビューだそうですが、数多の第二班監督やアシスタントディレクターを勤めて来た人物でイーストウッドとの付き合いも長いこともあってか、実に手堅い演出。
老いてからのイーストウッド主演作、すなわち『許されざる者』辺り以降の作品は全て贖罪がテーマになっているような気がしていて前作の『グラン・トリノ』は正に極みであったと思っていますが、今作ではそこまで露骨で過激ではないものの、やはり自身の人生をなぞるかのように誰にも話さなかった罪と罰を吐露する様はまるで若者へバトンを渡そうとしているかのようでした。
原題の"Trouble with the Curve"には実に色んな意味が暗示されていて、心に沁みる佳作でした。年頃の娘を持つお父さんは必見です。
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