「俳優4演出2脚本1足して3で割る、辛口評言いきり御免」許されざる者 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
俳優4演出2脚本1足して3で割る、辛口評言いきり御免
リメイク映画は、常にオリジナル作品と比較される為、その映画自身を白紙の状態で観る事の難しさを痛感。
この映画がもしも、邦画版「許されざる者」でなかったのならば、普通の賞金稼ぎの元侍十兵衛のアクション娯楽活劇・復讐劇として充分に見応えの有る作品だったに違いない。
俳優陣は、邦画界のスター俳優を出演させ、ベテランも若手俳優も豪華キャストだ。
文句無く俳優の芝居は、観客にも相当な熱気が伝わってくる素晴らしいものがあった。
全体には、良いのかも知れないが、あの「許されざる者」の日本版と言う期待が大き過ぎて返ってそれが仇となり、拍子抜けした感じがどうしても拭えない。
それは何故か?どんなに芝居が素晴らしくても、登場人物が何故このセリフを吐き、この行動をとるのか?と言うその根本の部分で人物像の人間性が、深く描かれていない。人間を行動に駆り立てる為の根源的な動機の設定が、不十分なのだ。チャンバラ活劇には、動機は、それ程重要では無く、只アクションの見せ場を作れば良いだけなのか?
しかし、それでは観客はシラケテしまう。
特に私は小池栄子が大好きなので、彼女が体当たりの芝居を見せてくれるのは嬉しかったのだが、このお梶のセリフも、当時の女郎として、おかしな発言が際立っていた。
柄本明も素晴らしい老いぼれ金吾を熱演していればこそ、彼の本心をもっとより深く掘り下げたならば、ドラマとして更に良い作品になった事を思うと、無念でならなかった。
そして十兵衛が亡き妻との約束を死守しようと耐えに耐えるが我慢ならず、最後に怒りをぶちまけるところまで、ズーと引っ張るのは、ドラマを劇的に演出する上で巧い運びなのだが、十兵衛もいやにセンチメンタルなだけに見えてしまうのは、人物の掘り下げ不足が原因で無念だ。
大石に至っては最悪で、彼が何故、あの地で、どうしてあの仕事に就いているのか?何を考えて生きているのか?彼の極悪非道な残忍振りが良いと、宣伝では言っているが、動機不十分で、説得力に欠ける為、大石の人間性を今一度描いて欲しかったのだ。それ故、余り悪者に写らない気がした。佐藤浩市の表情および、その他の芝居自体は問題が無い。
北海道の広大な荒野もそれだけで、このアクション映画を面白くさせる素晴らしいロケ地だった。雪に閉ざされたファーストシーンは素晴らしかった!
何度もしつこくリテイクを繰り返し撮影が行われた事が、ニュースに因ると記されている。どんなに良い器と旨い素材を取り揃えても、その素材が一番活かされる調理手法や、味付けを板前がしていなければ、美味い料理は提供されない。それと同様にどこかの国の旨い料理を真似ても、日本風土と日本人の味覚に合った料理として誕生させるに充分な研究が疎かであれば、作る意味が無いのと同様に、この作品は総て良い条件が揃っているだけに残念な作品だった。監督の次回作に大いに期待する。彼ならもっと良い作品が撮れる筈だ。
賞金をかけて二人の男を殺す必然性が描けていない。
もっとじっくり、心の奥底から復讐する状況を描かないと見ている人は、多少顔を傷つけられたぐらいで何故殺すのかが分からない。
柄本さんはよかった。
俳優の皆さん顔が綺麗過ぎる。
中国残留孤児の大変な苦労された顔を見てごらん。苦労が顔に出ているでしょう。
開拓民として北海道へ行って苦労された表情が出ていませんね。
辛い場面では必ず笑い。
甘いと辛い。コントラストを考えて脚本を書くのでしょう。
最後に一言、佐藤浩一が最後の一振りをする時の表情。
本来なら死にかけているのだから顔を青白くし、めらめらと火が燃える時に多少顔を赤くする工夫はなかったのかと思いました。