劇場公開日 2013年2月23日

  • 予告編を見る

「あの時、起こっていた事実の一つ」遺体 明日への十日間 CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あの時、起こっていた事実の一つ

2014年11月5日
PCから投稿

難しい

2011年3月11日、14時46分に発生した東日本大震災。およそ2万人の人が犠牲になった。
本作は、その東日本大震災で被災した岩手県釜石市の遺体安置所の数日間を、ジャーナリストが取材したままにドラマとして再現した作品である。

釜石市だけで死者・行方不明者は1000人以上になる。そうした遺体が運ばれてくる遺体安置所。カメラはそこからほとんど離れず数日間を描く。
東日本大震災で100人以上が犠牲になった市町村は、岩手県・宮城県・福島県の3県で22市町村ある。あの時、あの数カ月間、22市町村それ以上の各地で、本作に描かれていたような遺体安置所の姿があったはずだ。
遺体安置所だけではない。沿岸部の被災現場、遺体捜索の現場、原発、避難所、病院、福祉施設、市役所、ありとあらゆるところで、非常に厳しい状況があった。もっといえば、被災した一つひとつの家庭にもあった。

僕らがこの映画から、あるいは大きな震災から何を感じるべきか。少なくとも、あの時に起きた事を忘れないでいる事だと思っている。それは、東日本大震災に関わらず、日々の出来事をちゃんと意識していく事の大切さに繋がるはずだ。

なお、本作が震災から2年という段階で作られた事に対する批評は様々だ。釜石の地元の人に限らず、多くの被災地で本作を見た人から「今見たくなかった」という声を直接に聞いた。しかし、一方で、震災からたった2年で、被災地以外では震災のことが忘れられそうになっているなか、当時の現実を映像化した事への評価もあった。
個人的にはもう少し時間を置いても良かったかもしれないと思いつつ、東京で震災への関心が低くなっている事を実感するたび、やはりこういう作品を送り続けていく事の大切さも感じるのである。

コメントする
CRAFT BOX