「日本人映画」藁の楯 わらのたて ふっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
日本人映画
面白かった。本当に面白かった。
コラテラルじゃないけど、この映画も男にしか分からないかもしれない面白さがありました(差別的な表現で申し訳ありません)。
それくらい藤原、大沢をはじめとする役者陣の隅々まで徹底した演技力とキャラクターが強烈です。後半に各キャラクターの本音が見えるので、それを踏まえて2回目を観るとその演技力、演出力の凄さが一層際立ちます。
同じ日本人として衝撃でした。
藤原演じる、いわゆる"ゆとり"はまるで僕ら世代。大沢演じる"サラリーマン"は僕の親世代。日本人の悪い部分を前半で見せつけられ、即感情移入してしまった自分が情けないです。
銘苅が清丸を引きずりながら本庁へ連れて行くあのカット。
まるで父子のようなあのカット。
僕と僕の父親で重ねてしまうと情けなくてついつい泣けてしまいました。
僕は現在24歳ですが、男としては、まんま藤原演じる清丸そのものです。
清丸に共感は出来ませんが、心情の理解は出来ます。それだけに、母親の死のニュースのシーンはかなり心に来るものがありました。(それに対する大沢の鏡ごしの表情の演技が本当に素晴らしい!)
殺人やあそこまで非人道的ではありませんが、ああいう性格でいつまでも"責任"や"リーダーシップ"というものを知らずにやたらと顔が幼く自信を持てない若者は確実に増えています。
逆に途中で死んだ新米刑事のような人間にはコンプレックスさえ感じます。
そして賛否両論のラストの警視庁前のシーン。
僕的には最高でした。濃密です。
恐らく日本人にしか理解しにくいであろうテーマ。
銘苅が刺された時の蜷川の表情。
武士の時代から続いているであろう日本魂、筋、義。
それを理解しうる最後の世代を失ったと感じた蜷川のあの表情を見た時、
三池監督にとって僕はその世代に入っていない、という事がとても悔しく、しかし言い返せない悲しみを感じました。
やはり三池監督や、その世代の方々は僕らゆとり世代にこれからの日本を預けるのは心配なのでしょう。そんな思いを感じました。
そしてもう一つ。
蜷川が銘苅に対して一番伝えたかったであろうセリフ。
あのセリフで色々な事が信用出来なくなります。正直、殺人鬼を命に代えてでも守れるか、というこの映画の"表面上"のテーマなんてどうでもよくなります。それですら蜷川の警察や国民に対する試験や実験だったのではないかと疑ってしまいます。
是非色んな世代の方に見ていただきたいです。この映画で"現代の日本人"を感じてほしい。感じた上で有りとするか無しとするかで今後の日本が変わっていきます。
蜷川を守ると同時に清丸を守るために庇い刺された銘苅。
すっげぇ…とか言っちゃう清丸。
銘苅への義理を立てて罪を認めた蜷川。
最後まで反省出来ない、反省を理解出来ない清丸。
逆にこの作品を観て何も感じないのは日本映画の危機です。そらつまらない邦画が溢れてしまいます。作る側ではなく、観る側のせいで日本映画が衰退します。
内容は右翼的(笑)ですが、演出が左翼的(笑)なので星4にしました。
なんというか、ハリウッドへの憧れ感みたいのが見えるので。。
これは好みです。でも内容が内容なので出だしでワーナーはちょっと、、笑
ちょくちょく入る長回しカットは計算され尽くされていてとても綺麗でした。ただ綺麗すぎて浮いてたというか、他のカットとの温度差が激しかったというか。。
最後に、
やたらとこの映画に対するマジツッコミを入れるレビューを見かけますが、
これは"映画"です。
観客に何かを伝えるために必要な"映画的表現、演出"に対してツッコミいれるのは御門違いです。
映画はツッコミを入れて楽しむものではありません。そのツッコミ所の意図、意味を楽しみましょう。