「ボケて、見えた先に」ペコロスの母に会いに行く 五社協定さんの映画レビュー(感想・評価)
ボケて、見えた先に
森崎東監督と言えば「重喜劇」。
「男はつらいよ フーテンの寅」
「釣りバカ日誌スペシャル」
の2作品で見せた人情喜劇シリーズへの「喜劇」に対しての「重いテーマ」過重。
今作も「認知症」の母って重いテーマに喜劇を加味して、しかもほろりとさせる。
認知症の家族を持った経験があると、「辛い体験」として思い出し、眼を覆いたくなる場面も幾つかあった。
舞台は「長崎」。
原爆の話が出るのかな?
と思ったがやはり出た。
それにしてもハゲの奇跡は面白い。
ペコロスのハゲ具合と言い、無理した竹中直人の無茶ヅラ具合。
そして、カツラと言う殻を脱いで、自然体の中で見せるホロリとさせる笑い。
そう言えば何処かの本屋で
「認知症の老人は何を見ているか」
ってタイトルを観たが、
ペコロスの母は幼少期の兄弟の姿や結婚後の旦那との辛い思い出、そして原爆に遇って赤線に身を投じて原爆症で死んだ幼馴染みへの涙。
クライマックス、長崎ランタンフェスタで徘徊しながら、眼鏡橋の上で死んだ幼い妹や旦那や幼馴染みとの“再会”。
ペコロスの母は悲しみの中から綺麗な思い出を見ていたのだ。
正直、泣いた…ボロボロに泣いた。
その幻を楽しむ母を孫は写真に写す…無論、母以外何も写っていない。
そしてペコロスは言う
「ボケるこつは悪かこつばかりじゃなかぞ」
日本最年長主演女優・赤木春恵さんに脱帽。
ソ連の満州侵攻で地獄を見ながらも今日まで女優を続ける姿。
大作映画でスゴいと想うだけの感想が残って流されていく映画より、
小作でも笑って泣いて、そんな映画の方が後々、じわじわ来る…私はクライマックスを思い出す度、本気で泣いてしまう
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