舟を編むのレビュー・感想・評価
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期待しないで見よう
本を読んで面白かったのとアカデミー賞6冠ということで、DVDを借りて見てみた。
この映画を見て良かったと思うのは、一つ一つの言葉を丁寧に扱い辞書を作り出す過程を垣間見ることが出来たこと。その中で自分はいつも適当に言葉を使っているなあと考えさせられた。
また主人公の馬締を演じる松田龍平の演技が良い。松田龍平さんはクールな顔立ちで、一見馬絞のような優しい雰囲気を作るのは難し
いだろうと思っていたのだが、演技が手伝って馬締の優しさや誠実さがよく表れていた。
所々に笑いが散りばめられており、その度に主人公含む登場人物への愛着が湧いていった。
しかし香具矢が馬締を好きになる過程や、アルバイトの人々が馬締に信頼を置くまでの過程の説明が不足している。その為二人の恋が成就した後の喜びや辞書を作り終わった時のカタルシスが薄れているように思った。
アカデミー賞を6冠撮ったということで期待していたが、そこまでの感動はなかった。
松田龍平が素敵だ
この映画の監督、石井監督があの「川の底からこんにちは」の人だと知らなかった。
じわじわと来るいい映画でした…やっぱ、松田龍平がいい。ほんと、いいな彼は。
原作は読んでないので、勝手なことを言うが、まじめ君が恋によって、もっと壊れたとこが見れたら、もっと面白かったな。
あー、「用例採取」しちゃいそ(笑)
"マジメ"が送るとっても静かで熱い物語
【あらすじ】
ひょんなことから辞書編集部に異動となった真締(まじめ)は、膨大な言葉の波をも悠々自在に渡る辞書「大渡航」の編集に携わることとなる。その名の通りマジメな彼は多くの支えと言葉への情熱で、辞書編集に奮闘。ついに「大渡航」の発刊を実現させるのだった。
【感想】
"物作りって、人の絆があるから出来る"ー。そんな当たり前のことに気付かされ、自身を囲む物にちょっぴり感謝したくなるのが「舟を編む」だ。
言葉を愛しているけれど、ものすごく無口な真締。まるで辞書を引くかの様に紡ぎ出される嘘のない彼の言葉は、次第に「大渡航」に関わる者のハートに火を付けて行く。真締を支え続ける妻・香具矢、口達者で実はお人好しの同僚・西岡、将来の真締夫妻を思わせる松本とその妻…。一冊の辞書の制作過程を軸に描かれる個性豊かな登場人物達の姿に、時にはぷっと吹き出し、観終る頃にはほっこり心が温まる。
出演者達のあまりにナチュラルな演技にも注目しながら、一度観て損はない作品だ。
なんとなくいい映画
個人的には言語が好きなので、辞書編集の苦労を少しでも知ることができ面白かったです。
ただ、単調なので母はちょっと飽きているようでした。
また、辞書編集の仕事の部分がメインになっているので、恋愛パートの描き方はちょっと雑(という表現が正しいかはわかりませんが、見る方の「どうせお約束で上手くいくんでしょ」という空気に頼り、丁寧に描けていない感)だなと思いました。
でも、悪い映画じゃないです。
地味な映画ですけど、興味があったら観てみるといいと思います。
地味な良作
全体的な雰囲気がとても落ち着いていて、ノンビリ平和な気持ちで見るのに適した良作。派手なアクションもなく、人がバタバタ死んだりせず、うるさい音楽が鳴らず、季節の音や本の静けさ、「言葉」の応酬などによって、落ち着いているけれど飽きさせない、素敵な雰囲気を作っていました。俳優陣も派手さがなくて良い!
後半足早なところ、あおいちゃんの描き方にちょっと不満が残るところがやや残念だったけど、ただ辞書を編集するだけの映画で、よくここまで引きつけたなと思います。
松田龍平はミズタクでした。あの雰囲気いいですね。
心温まる キャラクターがいい
真締さんのキャラクターがとても良い。一見、内気で臆病なネガティブな印象だけど、実は男らしく告白したり、チームを引っ張るリーダーシップがあったり、仕事にプライドを持っている。結婚前はコミュニケーションが苦手で挙動不審な動きがクスッと笑を誘う。
西岡も軽いようで実は熱く優しい男で、辞書作りを守るために自ら犠牲になり別の部所から広告面で辞書出版に向け奔走する。酔って泣いてるタイミングで求婚してしまう、なんとも締まらないキャラがとても良かった。西岡と彼女の熟年カップルの掛け合いも良かった。
辞書を作るのに15年かかる。言葉を探して語釈を付けてミスがないように5回も校正する。とても大変な作業なんだと知った。
心温まる素晴らしい映画だった。
期待してたほどでは
辞書づくりという私の日常生活では全く想像できない仕事というものが当たり前だが存在していて傍から見たらそんな仕事面白いの?みたいなものも続けていくうちに自分の中で誇りが生まれていく
特に私は単純作業が非常に苦手なので淡々と熱中して仕事に取り組む松田龍平演じる馬締の姿はとてもかっこよかった(馬締はぱっとみコミュ障だし社会に出ても仕事とかでうまくいかなそうなんだけどそんな人が仕事できる時のヤンキー理論みたいなかっこよさ)
またオダギリジョー演じる同僚の西原も最初は軽薄そうな人だったのに馬締に感化されて仕事に誇りを持ち始めて尚且つ西原のキャラクターのまま辞書づくりで必要不可欠な人になっていくところ、西原と池脇千鶴の実在しそうな仲いいカップル感とかも好印象でした
ただかぐや(宮崎あおい)の恋愛がまぁいらない
だいたいコミュ障で全然アプローチしたりしない馬締の告白を受け容れるとか現実離れしすぎていて現実はそんな甘くないんやで...と思ってしまった
その後の結婚した後も献身的な妻過ぎてもうかぐやが馬締の妄想なんじゃないかと思えたくらい
原作は女の方でしたかどうなんでしょう?変わっていたなら監督の趣味ですね(笑)
あと辞書づくりに年月がかかるので時間が一度に飛ぶシーンがあったがイマイチ前後の描写の細かな変化を入れられていないように感じた
そこは映画の娯楽的要素に大きく関わるのに
また一つのミスが見つかりみんな総出で泊まり込みしなきゃいけなくなった時に人数が増えてからそんなに時間が経たずまたエピソードも弱いためみんなが一致団結するシーンに違和感を感じた
最優秀アカデミーは
作品→そして父になる
主演男優→松田龍平or福山雅治になってほしいなぁ
小説も好きだけど、また違ったよさがある
基本、小説が原作の映画って、小説の方が世界が深くて映画は勝てないなと思っていました。
でも、この映画に関しては、小説も大好きだけど、映画は映画の良さがある。
真締さんの描き方は、映画でなければできないものになっている。
僕が一番好きなのは西岡の異動のシーン。
志半ばで、仲間のために自分の身を切らなければいけない悔しさ。
僕はそのシーンで完全に感情移入してぼろなきでした。
もう一回見たいな。
あたたかい気持ちになりました。
・ひとつのことに情熱を持って長年打ち込める人は、魅力的だし凄いと改めて思った。辞書編集という一見地味な仕事を通して、湧き上がる喜びや達成感、それを通じて出会った仲間。素晴らしいです。
・営業にいたときは「できない」レッテルを貼られていた彼。でも一方で辞書編集の仕事を営業で件数を取ってる人間が成し遂げられるかといえばそうでもない。適材適所の良き例でもある。
・大きな展開はなく、驚くようなことも起きない。海外に行ったりめちゃくちゃ有名になったり億万長者になったわけでもない。そんな静かな、一見すると同じ事の繰り返しに見える毎日が、いかに本当はエキサイティングで素晴らしいものか。改めて教えられた気がします。
日本の良さが缶詰めのように詰まっている
普段シドニーで邦画がタイムリーにみられることはあまりない。でも今回はシドニー日本文化交流フイルムフェステイバルのこけら落としに、この映画が上映されて、幸運にも観ることができた。日本では70万人もの視聴者を映画館に動員し、興行成績をあげたそうだ。本当に良い映画だ。
ふだん何げなく使ってきた辞書というものを作る人々が居て、何十年もの時間をかけて、地道に「言葉集め」をして、意味の解釈だけでなく用例集めや使用例を他社の辞書と比較しながら コツコツと編集する、その仕事ぶりに驚かされた。また流行語を含めた新しい言葉を常に探し求めて、新たに辞書に解釈を加えるだけでなく誤用例もあげていく。そんな編集部の苦労する様子が実に興味深かった。20数万語の言葉を収録するために15年間文字通り、一目一目を編んでいくような地道な歩みに目を見張る。
公演された当時、石井裕也監督と馬締を演じた松田龍平とは、共に30歳だったという。若い監督だが、実力がある。上質の落語のような会話の呼吸、間合いの良さが秀逸。誰かが何かを言う。その瞬間にガラリとその場の空気が変わり、居合わせた人がそれぞれその人なりの反応をする。その間合いと、変化の仕方をしっかり演技で見せてくれる役者たちがとても生きている。見ている人が自分の体験を思い起こしてその場にすんなり納得できて 深く共感できる。
香具矢に一目ぼれをして腑抜けになった馬締が出勤してきたところを、松田が後からふざけて脅かしただけなのに、その場に崩れ落ちて腰をぬかして立ち上がれないシーン。人とうまく話ができない馬締にちょっとした冗談やおふざけが通じなくて、かえって慌てる人の良い西岡がおかしくて笑える。西岡は一見軽薄に見えるが実は情のある、良くできた男だ。私は映画の登場人物の中でこの西岡が一番好き。社の予算が足りなくなって、馬締か西岡かどちらかが辞書編纂部から広報部に移動しなければならなくなって、それを誰にも知らせずに自分から潔く部を去っていく。後からそれを知らされて、馬締が必死で西岡を追うが突き返されて言葉を失い茫然と佇むシーンも印象的だ。どっちもいい奴なんだ。
編集部の面々が馬締が恋の病に陥ると すかさず香具矢の勤める料理屋に予約をとる、その息のあったチームワークの良さには笑いを誘い人の心をなごませる。編集長松本の人柄の良さゆえだ。仕事の後で居酒屋に皆を連れて行き、本音で部下との交流を図る。部下たちは熱い親父には勝てない、と文句を言いながらその親父を慕っている。こんな職場で働きたいと思う人も多いだろう。家族のようだ。
役者がみんな良い。西岡を演じたオダギリジョーがとても良い。この役者、個性の強い役柄を演じることが多いが、この映画のような普通の男を演じると、すごく光っていて魅力的だ。加藤剛と八千草薫の夫婦も良い。本当の仲の良い夫婦が一緒に年を取ったみたいな穏やかで心地良い空気を作っている。
主役の松田龍平と宮崎あおいは、難しい役を上手に演じている。
馬締は軽度のアスペルガー症であるらしい。これは 自閉症の一種でオーストリアの小児精神病医ハンス アスペルガーによって命名された症候群。対人関係に障害をもち、特定分野に強いこだわりを持ち、軽度の運動障害をもつ。知的水準は高く、言語障害も持たない。子供の時に「b」と「d」、「つ」と「て」、「わ」と「ね」の区別ができず、鏡文字を書いたりして発見されることが多い。ふつうに学校生活た社会生活ができ、「ちょっと変な人」くらいに認識されて何の問題もなく、家庭を持つ人も多いが、社会適応ができず ひきこもりやうつ病を併発する人も多い。ひとつのことに偏執狂のように異常な興味を持つ特性を生かして、芸術分野で優れた結果を出す人も居るが、自分の興味ない分野には、きわめて冷淡になる。そういった難しい役を松田龍平は、若いのによく演じていた。お父さんは松田優作だそうだが強い役者遺伝子を受け継いだみたいだ。1988年バリー レヴィンソンの「レインマン」で、トム クルーズと共演したダステイン ホフマンが重度の自閉症を演じている。きっと松田龍平は役作りの過程でこのダステイン ホフマンを100回くらい見たのではないだろうか。
この作品、日本映画製作者連盟から、アカデミー賞外国語映画部門に出品されたそうだが、欧米で評価されるだろうか ちょっと心配。「仕事人間、過労死、残業クレイジーニッポン」の典型みたいに見られないといいけど、、。個が確立していて、個人生活重視、公私混同を嫌い、時間がきても仕事が終わらなくて残業すると自己管理ができない無能者とされ、残業どころか休暇は締切だろうが何だろうが、きっちり取る、、、他人の個人生活に介入しないことが礼儀とされて、職場ではどんなに信頼できる仲間でも互いの私生活には関心を持たない、、、そういった欧米型社会で育った人達に、この映画の良さがわかるだろうか。
編集長の部下に対する父親のような愛情、家庭よりも仕事への情熱、苦労を分かち合うことによって育つ職場での結束、仲間の犠牲になって自分から移動になる潔い部員、ボスへの敬愛、自己主張の強かった新人が職場の空気に染まっていく様子、夫を思いやり自分を決して主張しない謙虚な妻、家族の理解、愛情の示し方が下手だが心から妻を愛する夫。個を超えた共同体の中でこそ自分たちの達成感、満足感を充足させる日本人特性。日本人の優しい労わり合い。あうんの呼吸で仲間が育っていく環境のやさしさ。謙虚と潔さ。熱すぎず、ぬるすぎない、ぬくくて温泉みたいに心地よい映画だ。。映画を観ていると、日本人って、何て良いんだろうと思う。
さて、外国人はこれをどう観るか。作品は、アカデミー賞に輝くだろうか。結構、高く評価されて、「シャル ウィー ダンス」みたいに、この映画の欧米版「オックスフォード辞典を編む人々」なんていうコピー映画を、エデイー レッドメインみたいなハンサムな役者が主演して大成功するかもしれない。わくわくする。
いつも、ああやって言葉集めしてるの?
映画「舟を編む」(石井裕也監督)から。
「三浦しをん」さん原作の小説と今回の映画、
共通している部分とオリジナル部分の比較は、
書籍と映画、両方を楽しむ私のライフスタイルには
ピッタリの題材であった気がする。
読書後のメモと、鑑賞後のメモを比べると、映画の方が、
宮崎あおいさん演じる「林香具矢」さんが輝いていた。
松田龍平さん演じる主人公・馬締光也さんが、下宿で
可愛がっている猫に「迎えにきたよ」と声を掛けたら、
香具矢さんが「迎えにきてくれたんだ」と登場するシーン、
昔話「かぐや姫」で月からのお迎えがくる場面とダブった。
また2人が出会った頃、料理人として修行をしていた
「梅の実」から彼女が独立したお店の名前が「月の裏」。(笑)
彼女が「みっちゃん」と呼ぶ「光也」という名前も、
「月の光」に関係しているのかな、なんて想像してみたり。
(「満月」をもじって「満也」も面白かったけれど・・)
こんなことをメモして楽しんでいるなんて私くらいかな。
ところで、どんな場面でも「用例採集カード」を欠かさない
馬締に、香具矢さんが笑いながら問いかける。
「みっちゃんて、いつも、ああやって言葉集めしてるの?」
私も宮崎あおいさんに言われてみたいな。
「しもさんって、いつも、ああやって言葉集めしてるの?」
昆虫よりも用例採集。
私が学生の頃は、もちろん辞書といえば紙媒体(重い・厚い)。
息子が「電子辞書買って」というまで辞書といったらその印象。
特に英和辞書は学校推薦のものが見辛くて…苦労したなぁ。
気の遠くなるような舟を編む(辞書を作る)作業そのものが、
一冊の重みにも増して愛おしく感じてしまう、言葉に対する
愛情が、これでもか、これでもか…と詰まっているこの作品。
日本人であるからには、せめて美しい言葉遣い…とはむろん、
私も常に思いながら(ホントです)実に嘆かわしい粉砕言葉を
しょっちゅう使っている身である。恥ずかしいことこの上ない。
が、劇中ではそんな言葉をも拾い上げている。
素晴らしい辞書とは、言葉を選り好みしないことが分かった。
どんな言葉も大切に拾い上げ、語釈を巡って議論を繰り返す、
私も用例採集に加わりたくなってきた(昆虫採集より面白そう)
初めて「超~、うぜぇ~、キモい、これマジヤバくね?」なんて
いう言葉を聞いた時は(スイマセンねぇ^^;古い人間なもんで…)
もはや日本語も終わったな、なんて思ったりした。
いや、そうじゃなくて新たな語彙を持つ言葉が加わったと考える
べきだったのね。確かに諺だの慣用句だの、使われなくなれば
どんどん死語になっていくのだ。もはや聞かなくなった慣用句の
どれだけ多いことか。その時代を彩るのが当時流行った言葉
だとすれば、明らかにそれは文化になってきたはずなのにねぇ…
しかしどうせ耳に届くならば(皇室用語とはいわないが)耳触りが
心地良い言葉で伝えたほうが(肝に銘じます^^;)とは、思っている。
ところで面白いのは、今こういう言葉使わないよねぇ?だとか、
あーその言葉が出る年代といえば、うちらだね。なんて気付いて、
昔話に花が咲くという、これはこれで、また楽しいものである。
だから今、前述の言葉を多用している若者たちが20年後の未来で
マジ懐かしい~超ヤバくね?なんて語っている現場が目に浮かぶ。
いろんな意味で、言葉は(一応)大切に育まれているわけだ。
原作は本屋大賞を受賞した三浦しをん。ちなみにまほろ駅前~でも
松田龍平を使っていたが、私は彼の行天というキャラが大好きだ。
淡々飄々としているが大切なところを見誤らない賢さと鋭さがある。
今作の馬締は、言葉のセンスをかわれて辞書編集部へと異動するが、
いちいち正確な語彙を辞書で調べては意味から言葉へと入る姿勢が
七面倒くさい馬締のキャラクターに沿っていて、右という言葉を
あんな風に説明する人を初めて観られて感動する(他にもあるけど)
チャラ男の西岡(オダジョー)が、かなり自然に発する不用意な言葉と
比べてどちらが命取りになるんだろう、と考えては笑ってしまった^^;
お硬く難しい話かと思えばそうではなく、辞書編纂の長年にわたる
苦労と、馬締の恋愛話がメインで、軽やかなコメディにもなっている。
ラブレターを筆文で書いた馬締を責める香具矢(宮崎あおい)は可愛い。
書けても言えない(爆)もどかしさ、分かる気がする…でもそこだけは
ちゃんと口で(言葉で)言って欲しいもの。これは普通の女心だよねぇ。
のちに結婚する二人、二人ともあまり饒舌でないだけに、最後まで
です。ます。調のやりとりをしているところが不自然で笑える。しかし
盆も正月もないような生活の中、支え合う夫婦愛は言葉以上のもの。
おそらくすぐに、馬締は大渡海の改訂作業に取り掛かるんだから。
…あぁなんて果てしないんだ、辞書編纂に関わる総ての人を尊敬する。
しかし長きにわたる作業が人生のほとんどを占めているというのに、
幸せに感じられるなんて何よりのことである。12年後もまだ未完成、
あの光景が、どれほどの長い年月かを一瞬で感じさせたのはさすが。
脇を彩る名優たちも素晴らしく、随所で演技指導をしたという監督の
思い入れがたっぷり伝わる意欲作。今自宅にある辞書は手放さないぞ!
(紙質にも拘りがあったとはね。舟を愛して止まない姿勢が愛おしい)
買って読みたい「大渡海」
「右」と言う字の、馬締君の語釈が何ともおかしな雰囲気であったが、とある辞書には「北を向いて東の方」と書いてある。馬締君の独自解釈ではなく、辞書の語釈を思い出していたのか。
本作で扱われる辞書の「大渡海(だいとかい)」
「ら」抜き言葉や「憮然」等の誤用への言及もあり、誤用でも誤用として注釈をつけて語釈する編集方針。また、現代用語を取り入れて・・・とあるが、ちょっと、どうなのかなとも思う。収まりきるのだろうか。
作中、ファッション誌からやってきた女性編集者がファッション関係の語釈のチェックなどを任されて、採取された語句を見て「いつの時代?」などと言っているあたり、時代の篩(ふるい)にかかっていない語句を取り込むのは、いささかの不安を感じた。入手したい気持ちも湧くのだが・・・
語釈について、堂々巡りになっている語句も紹介されていたりするが、観客へのサービスだろうか。堂々巡りにならないようにするのは語釈の基本にも思えるので。また、辞書に使う紙の質感について言及しているのは、辞書好きとしては、ほほえましいエピソード。電子辞書になく、紙の辞書で特長的なのはパラパラと無意識的にめくりながら見られるところ。紙の厚さ、質感は辞書選びのかなり重要な部分と思えるので、「辞書作り」の映画としては外せないところだろう。これも編集者に言われるまでもなく、製紙業者なら分かって然るべきところかもしれないが。
原作未読
言葉に対する造詣は深そうだが、実際に言葉を使って他人とコミュニケーションを図るのが苦手な馬締君。言葉は達者だが辞書編集部としては言葉に対する知識が浅そうな西岡が対照的。馬締君は実際にいると馬鹿にされそうな人物だが、出版社にいてなぜ最初から配置されなかったのか不思議なくらいにハマる。映画的展開とも言えそうだ。
香具矢を娶るのは予定調和的に感ずるものの、周りが盛り立てていてほほえましい。特に香具矢のいる店が分かった途端に予約を入れる早業が面白かった。
監修の先生が志半ばで倒れるのは残念だったが、あまり湿っぽさもなく良かったと思う。初版発表なるも、さっそく改訂作業に取り掛かろうとするのが、辞書編纂の使命だろうか。ラストは余韻のある終わり方を期待したが、安直に「子供ができたの」的な終わり方ではないので、良かったようにも思う。
古い下宿屋と辞書編集室(こちらも旧社屋?)で書物に囲まれながらのドラマで、全編が余韻と言うべきか。
期待以上
松田龍平が好きなので試写会に申し込んだものの、
内容が地味そうなので眠くならないか心配でした^^;
でもそんな心配は無用の面白い映画でした。
辞書作りってあんなに期間がかかるものなんですね。
長い年月の間の人の生き死にも描かれていてしんみりしました。
元々紙の辞書が好きだったのですが、最近はもっぱらパソコンで調べ物をしていました。
この映画を見て、古い辞書を出してきてまた活用したくなりました。
全36件中、21~36件目を表示