劇場公開日 2024年3月1日

  • 予告編を見る

「言葉の海に溺れる」舟を編む いずるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5言葉の海に溺れる

2013年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

言葉の海に溺れがちな人たち。
一番いい言葉は何だろうと探すうちに会話は過ぎてしまって、一番伝わる良い言葉を見つけた時には、もう言い出せない。という経験がある人ならば、誰だって共感する映画。言葉の海を渡りきることってすごく難しいのです。

主人公馬締さんはそんな言葉の海に溺れている人。
とてつもない数の蔵書に囲まれて、日々文を読んで辞書を読んで、言葉の美しさに埋まっているひと。
人が話すスピードは早すぎて、頭の中ではどう返そうか、何を言おうか、とうろたえているのにそれが伝わらなくて、『あいつって変人』なんて言われてしまう。だって世間一般の人にとって、言葉って一つ一つ意味を確かめて使うようなそんなに大切なものではないですからね。

馬締さんの顔が映るシーンも、序盤は目に影が掛かっている事が多い。口がパクパクしていても何も言葉が出てこない。おぼれているからです。
だからこそ、先生の『言葉は世界を渡る舟』という言葉に感激したのでしょう。
言葉に埋もれて身動きが取れなくなるのではなく、自分を人にまで運んでくれる船として使えれば、語彙が多い馬締さんの心は正確に伝わります。

といっても、
選ぶ言葉が正しくても、人に伝わらないと意味がない。
人に伝えることを意識していない文章で、伝えられた人が『意味わかんない!』と怒るのも当然。
『人に伝えること』を意識し出した彼は大きく海に漕ぎ出した。

こんな日常綺麗すぎる!と言われればそれまでですが
文学に溺れている者の日常って、ほんとにこんな感じです。
人と触れあわないのでぶつかることも少ない。
文字と自分の頭の中だけが世界。それ以外はガラス向こうの事。

今のデジタルで取った映像とは違い、35ミリフィルム撮影ならではの画面。
ぼやけた背景にくっきりと浮かび上がる人物が目に飛び込みます。
今まで「デジタル・フィルム論争何てばかじゃないの?」と思って興味がなかったのですが、
これを見るとやっぱりフィルムいいな~、となります。
時代を昔にするなら、このフィルム撮影を組み合わせるべき。時代の古みが出て画面が違和感なくストーリに反映されて、映画の出来も段違いです。
脳汁出そうなくらい美しい。

今回注目俳優は、西岡役オダギリジョー……の相手、岸辺みどり役黒木華です!!
とってもかわいい~
マーくんにメロメロなのもかわいいですし、きちんとマーくんのことを心配して馬締に話したり……両思いカップルってなごみます。

馬締さん初登場シーンに文庫型日本文学全集が映り、
私も持っているのであの表紙を見た時、ちょっとテンション上がりました。
ただ、マヨネーズのキャップは1980年代なら細い口で線状に出るのではなくて、
星型のチューブから直でぶちゅと出てないとおかしいかな~、なんて

いずる