「半身を失うような哀しみを乗り越えて」舟を編む カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
半身を失うような哀しみを乗り越えて
舟を編む?
藁の舟?沈まないの?
退屈な映画で舟を漕ぐのは得意です。
新しい国語事典【大渡海】出版企画を進める玄武書房辞書出版部に配置転換された馬締光也(松田龍平)。国文科大学院卒の人付き合いの苦手な新米社員。光也の下宿先の女将(渡辺美佐子)の孫娘のかぐや(宮﨑あおい)が突然京都からやって来て、ひとつ屋根の下。ススキにお団子を供えた月夜の晩、飼い猫の寅さんが二階の狭いベランダで二人を引き合わせる。下宿は古い木造の建物で、立派な門柱がある家。とても風情があります。かぐやは湯島の料亭梅の実に勤めながら祖母をサポート。それは東京に出て来る口実だったのかもしれないんだけど・・・
パート編集者のおばさん(伊佐山ひろ子)はすぐに梅の実の予約を入れる。
下宿のおばあちゃんは合羽橋デートをお膳立て。
下宿がやがて自宅に
奥さんは和食の達人
羨ましい
宮﨑あおいはツレがウツになりましてでもかわいい奥さん役でした。どっちもいいけど、やっぱりこっちです。
配偶者に感謝して、これからもよろしくお願いいたしますと言いたくなる映画です。
【恋】の注釈に異論はございません。
【ダサい】の用例。
酔ってプロポーズなんてマジ ー よね。
言葉は生き物であり、用例採集の旅は終わらない。大渡海の発行までには10年以上の年月が流れた。
かぐや姫が月に帰りませんように。
大渡海の出版が中止になりませんように。
松本先生が発売日まで生きていますように。
祈るように観ました。
玉子豆腐や茶碗蒸し。白身のお刺身を断り、ゲル状のものを下さいとかぐやに言う加藤剛。食道癌だった。葬儀のあと自宅でかぐやの作ったそばを食べながら、間に合わなかったと絶句するみっちゃんの背中に黙って手を当てるかぐや。達成感の裏側には半身を失ったような哀しみがありました。
元大学教授で監修の松本先生役の加藤剛。品があってとても素敵です。マクドナルドで馬締と女子高生を観察する場面なんかもう国宝級のお宝です。チョベリグ。奥方は八千草薫! 海辺の立派なお屋敷住まい。
加藤剛みたいな役者は今や絶滅危惧種。
小林薫、オダギリジョー、池脇千鶴、黒木華、宇野祥平、伊佐山ひろ子と豪華な配役。
みんなご贔屓級。夢の共演作でした。
三浦しをんの2012年の本屋大賞受賞の同名作品の映画化。2013年公開。監督は石井裕也。
配給は松竹など。