劇場公開日 2012年10月6日

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最終目的地 : 映画評論・批評

2012年9月25日更新

2012年10月6日よりシネマート新宿ほかにてロードショー

辺境の地で身動きがとれなくなった人間たちの“最終目的地”

だいぶ前にピーター・キャメロンの原作を読んだときから、映画の公開を楽しみにしていた。この原作には、ヘンリー・ジェームズやE・M・フォスター、カズオ・イシグロなど、ジェームズ・アイボリーが好んで映画化してきた作家に通じる世界があるからだ。故郷との距離や異文化を背景に、登場人物たちの内面が炙り出されるといえばよいか。

それに加えてこの物語の場合には、死者が登場人物たちを結びつけていくところが興味深い。著書を一冊だけ残して自殺した作家が、彼の伝記執筆の公認を得たいイラン系アメリカ人の大学教員とウルグアイの辺境に暮らす作家の遺言執行者たちを出会わせる。

作家の未亡人、愛人とその娘、作家の兄とそのパートナーは、辺境の地で作家の不在という空白に囚われ、時間が止まってしまったような空間を生きている。しかし、大学教員が泥濘(ぬかるみ)に足をとられるエピソードが示唆するように、彼もまた最初から自覚のないままに身動きがとれなくなっている。

このドラマに劇的といえる展開はほとんど見当たらないが、それでも私たちを引き込んでしまうのは、原作の饒舌な言葉が簡潔な映像言語に置き換えられているからだろう。ナチスの迫害を逃れて南米に渡った一族の歴史を刻むホームムービー、作家の未発表原稿、兄が隠し持つ亡母の宝石などから、登場人物たちの心の揺れや変化を想像していくうちに、それぞれの新たな“最終目的地”が見えてくるのだ。

(大場正明)

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