「雲の表情」クラウド アトラス saitofjさんの映画レビュー(感想・評価)
雲の表情
この映画は実験的だ。作品の出来として評価すると、
6つの物語はそれほど新しくもなく、最後のまとまりも弱い。
物語同士にいくつかの繋がりがあるようだが、
その紐を解きたくなるほどの強い興味はわかない。
視聴を終えた私は、テーマが掴みきれず困惑をしていた。
だが、それ以上に体を満たす充足感が心地よい奇妙な感覚に襲われた。
帰宅後ネットで調べていると、タイトルの元になった
「雲の表情」という言葉でハッとさせられた。
この作品は、輪廻について語ってるわけでもなく
人生と人生が強く結びついてると主張したいわけではない。
「雲の表情」を私達に見せていたのだ。と。
私たちは、雲を見上げると、そこに何故か表情を見出してしまう。
人の顔、人々、動物、道具、食べ物、建物、、、
ただの水蒸気の塊に対して、表情を与えてしまう。
この映画は、雲同士の奇妙な類似性と風に流されてく様を、
私達に見せていたのだ。
誰が誰を演じた。誰が誰の生まれ変わり。何が何に紐づいている。
それは全て、私達に表情を見出させるための、細い輪郭でしかない。
世界の奇妙な類似性を、客観的に描くための輪郭。それがこの映画の役割。
断言はしない。表情を見出すのは私達に任されているからだ。それがこの映画の狙い。
奇妙な類似性に、困惑しながら、なぜかそこに安らぎを覚える。
まるで雲の表情を見ている時のような充足感だったと後に気付く。
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