「輪廻転生に大混乱」クラウド アトラス いずるさんの映画レビュー(感想・評価)
輪廻転生に大混乱
輪廻はめぐり、前世の因業は来世で償う・・・という考え方は日本人にとってなじみのあるもので、すんなり受け入れられるストーリーだと思います。
それを謳い文句にした予告でしたし、そういうものだ!と思って見はじめて・・・
もう大混乱です。
時代が交錯し、人物も交錯する映画ということでしたので
ある程度の混乱は予想していました。
初っ端から頭の整理を付けよう、順序良く記憶しよう、と頑張りましたが、これは一番昔の話、これは一番最近の話、これは二番目に古くて、これは一番最近の話よりちょっと古くて・・・???と段々時代が訳が分からなくなってきます。
しかし、映画は容赦なく進行していきます。
人物の相関関係も混乱してくるなか、「通しで見ればわかるようになる」「これを見終えればきっと訳が分かるようになる!」と期待していたのですが、残念ながら、終演後も頭の中が大パニックのまま。
人物相関は、二回三回見たとしても、きっと分からない。
ネットで相関図、人物表を見てようやく時代の整理と人物の整理がつきました。
一度で理解できない映画、そんな映画。
面白くないわけじゃないのですけど、なんだか分からなかったという感想が多いのでは。ただ単純に面白かったと言わせてもらえない所に、深みを感じる、とよく言えばそうですが、エンターテイメント性を下げているとも言える。
分からないと言ってもストーリーのことではないです。ストーリーは通して見ればよく分かりますが、輪廻関係が分かりにくい。
崩壊後の世界の景色や、SFの世界観が良いだけにすこしもったいないかなあ。
ただ何となく見ても、アクションや、コメディ要素や、素晴らしい景色で面白い映画だと思いますが・・・
まず『前世の行いが来世に影響する』という聞けば、すごく面白そうなコンセプト。効果的に描写されていません。
人物のつながりがどうなって、こいつは前の時間のこいつで、という事に気を取られて、物語があまり入ってこない。確実にこいつはこいつだ!という事を訴える様な特徴づけがない。
前世の因業が今世に影響していて、前世やったことのカルマを背負っている、そしてその描写がされている、のだとしても、前世の人物と今世の人物が頭の中でつながっていないのだからよくわかりません。
あと、トム・ハンクスとそのヒロインらしき人、以外の輪廻を巡っていく人たちにも焦点があてられている、という事に気が付いたのが終盤だったというのが余計に混乱した原因でした。
恥ずかしながら物語の中心になっている人=トム・ハンクスが演じるザックリーにつながっていくんだ!つまり同一人物なんだ!!(魂が)と安易に思っていまして、物語の中心になっているものの当のトム・ハンクスはすでに違う人物として出ていて、同じ時代にトム・ハンクスの転生体が二人・・・??と劇中混乱していました。
まあ、『流れ星のあざ』が余計にミスリードを誘ったし・・・
『あざはその時代の主要人物に付く印』らしいです。
だって、共通したあざを持つ、というのは同じ人物が転生したから持っている、それがセオリーじゃん!!と文句を言いたい。
同じ役者が演じている人物が転生のつながりを表していて、同じ顔の人が同じ魂だからわかり易いのでは?と見ていない方は言うでしょうが、まるで別人のようになれる特殊メイクが逆効果になり理解を妨げます。私もいくらなんでも同じ顔なんだからトム・ハンクスぐらいわかるだろうと思って見ましたが、ハリウッドメイクのすごさにやられ、ある時代のトム・ハンクスは全く分かりませんでした。
分かりやすい傷、あざ、前世でやったことを覚えている、好きな色や趣味が同じ、などの共通点を作り、分かりやすく場面場面ではめ込む所が出来るのなら多少わざとらしくてもガンガン入れて、この人物とこの人物は同じ魂でできています!!と宣伝しなければ、前世と今世との繋がりを視聴者に伝えることが出来ず、視聴者は混乱するばかりです。
輪廻物のデメリットです。
2世界をまたにかける輪廻物ならば、人物の説明を省き人物のつながりを明確にしないのもまだ分からなくもないのです。だけどそれが6世界にもなると・・・
結果は上記の私の混乱ぶりでお判りでしょう。
前世が~とか今世が~とかはハリウッド流の風味付けとして他の映画との差別化を図るために使われたのかなあ。
こういう印象を抱くのも輪廻世界の真っただ中にいる日本人だからそう思うのかも。
だって、『来世また一緒になろうね』という文句は日本の中では使われ古した言葉で、前世助けたあいつが、今世ではこっちを助けてくれる、とかもよくあるシチュエーションですもんね。
輪廻世界が~ということに期待するよりは
単純に世界救済ものとしてみた方が○かも。
いや、そうするとじゃあ何のために6世界同時進行のストーリーなのか、ということに・・・