「オールスター勢揃いだが・・・」劇場版 とある魔術の禁書目録(インデックス) エンデュミオンの奇蹟 tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
オールスター勢揃いだが・・・
TV版の「とある魔術の禁書目録」と「とある科学の超電磁法」をベースにした、オールスター勢揃いの作品。お馴染みのキャラクター達が入り乱れて活躍する様子は観ていて楽しかった(アクセラレーターは少し“いい人”過ぎると思うが)。
しかしこの劇場版で初めてこのシリーズを観る人への不親切さ(設定説明なし)は仕方ないにしても、題名にもなった宇宙エレベーターの描写にはどうしても納得できない。
この作品ではエレベーターが学園都市から垂直に、しかも地上から立ち上がった構造物(剛体)のように描かれているが、私の理解する限り宇宙エレベーターは、基本的に静止軌道から赤道に垂直にケーブルが下ろされるものだ。もちろん静止軌道から無理矢理日本に下ろすこともできなくはないだろうが、その場合は地上から見て斜めになるし、アンカーとのバランスも取りにくいだろう。
魔法陣を発動させるキーワードとして「バベルの塔」に準える必要があったのだろうが、あまりに無理がありすぎる。こんな矛盾の多いものではなく、超々高層ビル(タワー)では駄目なのだろうか(冒頭のスペースプレーンの事故からして無重力状態が必要なのかも知れないが)。
レディリーが幾多の命を何の躊躇いもなく犠牲にしても実行しようとしたのが「不老不死の呪いをかけられた我が身を滅ぼすため」というのも「え~、それだけのことなの?」と言う感じで、何故そのために巨費をかけて宇宙エレベーターを作らねばならないのか、物理的に細胞の一片まで消滅させることはできないのかとの疑問が消えない(いっそロケットで太陽にでも突っ込めば、他人を巻き添えにせずに済むのでは)。
一連の事件のカギとなるアリサの存在そのものも「父親の操縦するスペースプレーンの事故に直面した少女の、奇蹟を願う心が生み出した分身」という設定があまりにご都合主義的すぎる。一体それは超能力なのか心霊現象(生霊)なのか、何も説明はない。しかし奇蹟というならこれこそが一番の奇蹟ではないか。
TVシリーズは結構SFファンのツボを押さえてくれていたと思うのに、この劇場版は設定の安易さが目立って残念だった。