「出入り自由な映画館でひとりぶっ通し浸りたい♪」レ・ミゼラブル(2012) 海猫Nさんの映画レビュー(感想・評価)
出入り自由な映画館でひとりぶっ通し浸りたい♪
高校演劇科に通う娘が、音楽のセンセに「劇科必見」とお達しされたとか「もう2回観に行ったコもいる」とか言っていたので、多忙な合間を縫ってまず1見。
ミュージカルっていうことも知らず、子ども時分に読んだ、西洋道徳的色彩濃い重いストーリーかな、くらいに思い、また「こんなのでミュージカル(劇場版)が何十年も上演され続けてるって、へー」くらいの、まあ、子どもの付添いPTAママ的ノリで行ったのです。
のっけから「下見ろ!」のでかい船引く罪人たちのホンマにエラそうな(これは方言で、しんどそうの意。あれ?これも方言?)歌で、「え~っミュージカルって最初っから歌!?」と、ここでミュージカル嫌いの人はどん引きしてるみたいだけど、私はどんどん吸い寄せられ・・・。
工場でのやりとりに「30年くらい前(海猫Nの学生~就職時代)はこんな感じが残っていたなあ!!!」、娼婦たちの客引きする街角描写なんかには、げげーっと思いながらも、昔近所を歩いていて迷い込んだ飛田に、雰囲気は全く違えども似たようなエネルギーが流れとったと思い出したり、汚い宿屋の床やそこにいる面々に「ちょっと前まで、日本も汚かったな・・・」。
地下水道場面では、アンジェイ・ワイダの「地下水道」をふと想い出し、出口に柵が!?とストレス度180%超え⤴⤴⤴・・・開いててヨカッタヨ~。
宿屋のイカレたモラルなし両親の子(エポニーヌ)が純粋な愛の感情を謳い上げ、他の人に恋しちゃってる彼との一方通行な愛を昇華させる場面では、泥沼の蓮が目に浮かび、若いころの純粋な気持ちを想い出したり、うちの子も両親いい加減でもちゃんとジュンに育ってや~と親心を浮かべたりしながら・・・。
子役のコゼットの、森に一人で行かせないで~の曲と歌声が染み入り、バリケードでの男の子の行動に、あの年頃の子って、この環境だとこう行動する子もいるよね―反抗心と自立心と背伸びと、やんちゃと、わくわくと、すきっ腹なんかで―と納得。その場に飛び込んで助けてやりたいっ悲(T_T)哀
軍隊の隊長さん役の人がほんの少しだけ垣間見せてくれた、人間性と組織の人間としての職務全うとの間の葛藤に、この内戦状態の中で救いを見出したり、戦闘終わって「小さいころから知っている子もいたよ」と流れた血を雑巾で拭う苦渋を押し殺したおかみさんたちに、池田小学校事件でわが子の血だまりに寄り添って横たわり続けたとうわさに聞いたお母さんのことをふと思い出したり、学生運動の孤立には、「歴史は繰り返されているんかな」と。リーダー役の俳優さん、かっこよかったね。
後半、ジャン・バルジャンやジャベール、コゼットたち?が、同じ曲想でそれぞれの感情を歌いながらどんどん筋が近づいて重なっていくところは、「ウエスト・サイドストーリー」の後半、(多分トウナイトを)歌いながらのところを彷彿とさせるものもありましたね。
アマンダ・セイフライドのコゼットよかった。ファンです。彼女出てなかったら、「一人で観てきたら?」と言ってたかも。
キリスト教徒じゃないので、「そんな自分たちのつくった善か悪かの二律背反で悩んで人間やめないでいいのに」など、そもそものテーマや文脈には共感しないところも多かったけれど、自分たちの作った社会的規範に振り回される人間・社会について考えるには、この作品(レミゼ原作)って、きっと好いんだね~と、も一度全編読まないといけない気持ちになりました。本屋に行ったら、しっかり平積みで売ってタヨ!今読んでるものたちを読み切って、読むものが途絶えたら、読んでみよう・・・。
娘もいっぱい泣いたと言ってましたが、世代が違うと、きっと受け止めが違うんだろね。どんなことが涙腺を緩めたのかな・・・。
私はその後、学生時代からの親友と1回、さらにダンナと1回、計3回観に行きました。そのたびにまた感動が増幅・・・。3回目には、天国の大バリケードの人々に、私たちが住むこの豊かな時代を支えてくれている多くの魂を感じ、すでに私の中では過去になってきている自由の魂を、映画人って持ち続けている人たちいるのかなあと、呼び覚まされるおもいがしました。
昔よくあった、入場料300円とか払ったら1日中いてられる映画館で、端っこに座ってとなりにドカンと荷物を置き(痴漢オジサン対策)、ビールでものみながら、時々合間に売られるモナカアイスを食べながら、そして時々居眠りもしながら、一日過ごして鎮魂感に浸りたい・・・そんな気持ちになる映画でした。感謝。